“生きた化石”サソリ毒の力で農業を変える 抗真菌剤開発クラウドファンディングを開始
サソリ毒液事業会
通信制大学に通いながら生物学の研究を個人で進める梶並 魁氏(本氏)と、大阪府高槻市で爬虫類ショップ「叢雲屋(むらくもや)」を営む谷渕 史明氏が運営するサソリ毒液事業会は、サソリ毒を使った革新的な抗真菌剤の開発プロジェクトをCAMPFIREで開始しました。
URL:
https://camp-fire.jp/projects/853572/view
目標金額は900万円(クラウドファンディング手数料、税金納付費用、解析費用)で、4億年以上前から姿を変えずに生き抜いてきた生きた化石とも言われるサソリの毒から、植物の病気を治す新薬を作ろうという壮大な挑戦です。
「一般的に人々から危険視され、恐怖の対象として捉えられるサソリのイメージを根本から変えたい」と語る本氏。菌核病や斑点病といった真菌による植物の病気が年々深刻化しており、今年は農林水産省から東京都と千葉県のキャベツ栽培の現場で菌核病の被害が報告されています。
■ 4億年前から地球上で生活するサソリの秘密。
サソリは4億年以上前の古生代シルル紀から部分的な形態がほとんど変化しておらず、まさに生きた化石と呼ぶにふさわしい生物です。この長期間にわたる生存の秘密は毒腺の進化にあると考えられています。
サソリは南極を除く地球上の全大陸に生息し、砂漠から熱帯、高山地域まで幅広く分布。日本にもヤエヤマサソリとマダラサソリが生息しています。餌である昆虫を確実に捕獲するため、3億年以上前に毒素という武器を獲得したと、現在の研究では考えられています。
■ 毒の中に隠された「免疫システム」
サソリの毒には塩類、糖類、ペプチド、脂質、タンパク質が含まれ、主成分はペプチドです。このペプチドには大きく2つのタイプがあり、一つは哺乳類や昆虫の細胞に作用する神経毒ペプチド、もう一つは抗菌・抗真菌・抗ウイルス作用を持つペプチドです。
ペプチドは細胞の基本的な生命活動に関わる役割を持つ分子です。サソリではそれらのペプチドが獲物(昆虫等)を仕留める毒として使われます。ペプチドとは、アミノ酸が数個~数十個繋がり出来たものになります。タンパク質は、アミノ酸が数十個~100個以上繋がり出来たものです。
上記にも示したのですが、昆虫や哺乳類に対しての毒素は、このペプチドにあたります。
サソリ毒ペプチドの長さは30残基~最大で50残基以上のものまであります。
※残基とはタンパク質を構成しているアミノ酸数の把握に使う単位のことです。
例えば1つのアミノ酸=1残基となります。
サソリ毒ペプチドには大まかに、2つのタイプが存在します。1つはジスルフィド結合(システイン残基間にあるチオール基(SH基)が酸化されることにより形成される非常に強い共有結合であり、タンパク質の構造(特にタンパク質の三次構造)安定化のための結合である)という構造を持つペプチド。
ジスルフィド結合を持つペプチドは先程説明した哺乳類や昆虫の細胞に作用するペプチドが該当します。
例として、Centruroides noxius毒由来のβ-NaTx毒素であるCn2、Leiurus hebraeus毒由来のα-KTx毒素であるAgitoxin 1 等が挙げられます。
2つ目はジスルフィド結合という構造を持たないペプチド。ジスルフィド結合を持たないペプチドは、抗菌性を持つことが先行研究で分かっております。
※抗菌ペプチド以外にも、抗真菌・抗ウイルス作用を示すペプチドも発見されています。
しかし、これらの抗菌ペプチドの中には、神経毒として作用するものもあり、実際のところ不明な点も多いです。現に国内外のサソリ毒抗菌ペプチドの研究では、ジスルフィド結合を持つサソリ毒ペプチドと同時に使われることにより、神経毒性を増強させたという報告もあります。
サソリが自身の毒の中に抗菌ペプチドを獲得したのは、毒針で獲物の体内に毒液を注入する際の感染症リスクを回避するためと考えられていますと本氏は説明します。まさにサソリ自身の免疫システムとして進化した成分を、植物の病気治療に応用しようというアイデアです。
■ 個人研究者と爬虫類ショップの異色タッグ
プロジェクトの実行者は、現在通信制大学で学びながら個人で生物学研究に取り組む本氏と、福祉業から転身して子供の頃からの夢だった生き物と関わる仕事を実現した谷渕氏の異色コンビ。谷渕氏は動物取扱業責任者、小動物飼養販売管理士、愛玩動物飼養管理士の資格を持つ経営者であり、専門家です。
本氏は「国内で個人経営の爬虫類ショップと個人研究者がタッグを組んでこのような事業を行うのはあまり例がなく、我が国の新しい民間技術の発展のために成功させたい」と意気込みを語ります。
■ 3段階のクラウドファンディング計画
今回のプロジェクトは壮大な3段階計画の第1弾です。
第1弾(現在):アジア圏の大型サソリ40匹から毒液を抽出し、ペプチドのアミノ酸配列を解析。
第2弾(2025年11月予定):解析データを基にペプチドを合成し、抗真菌作用のスクリーニング実施。
第3弾(その後):スクリーニングが成功すればペプチド合成機と製造販売拠点の準備費用調達。
2026年内には関係省庁と相談しながら商品化を目指し、支援者には割引や無料提供のサービスを予定しています。
【クラウドファンディングのリターンについて】
100,000円コース:振込明細書および、サソリ毒の解析結果を基に作成した医薬品、農業用薬品の研究開発に有用なペプチド化合物のアミノ酸配列ライブラリ(サソリ毒由来ペプチド化合物のアミノ酸配列リスト)。
■ 既存農薬の課題を解決
現在の農薬は使用後の土壌への滞留が問題となっていますが、今回開発予定の薬剤は病原体にのみ作用するため、使用後の土壌再利用が可能になると期待されています。特異的な高い選択性を持つ新薬剤として、真菌だけでなく細菌による病害からも植物を救うことを目指しています。
■ プロジェクト概要
プラットフォーム: CAMPFIRE
プロジェクト名 : サソリ毒を使って、新しい抗真菌剤を作り、
国内の植物を有害カビから守りたい!
URL :
https://camp-fire.jp/projects/853572/view
目標金額 : 900万円
【主な使途】
- サソリ毒解析費用:550万円
- 税金納付費用、クラウドファンディング手数料
【スケジュール】
- 2025年11月 :設備購入・毒液抽出開始
- 2025年11月~2026年4月:アミノ酸配列解析・スクリーニング研究
- 2026年6月 :第2弾クラウドファンディング開始
■ 実行者プロフィール
梶並 魁 :通信制大学に通いながら個人で生物学研究に従事。
谷渕 史明:爬虫類ショップ「叢雲屋」店長、動物取扱業責任者などの資格保有。
※本リリースの内容は2025年8月31日現在の情報に基づいています。研究内容の詳細は変更となる可能性があります。
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記事提供:@Press