【拓殖大学】地域医療情報連携ネットワーク政策における費用便益モデルの構築と試算 ~患者情報のオンライン共有は、なぜ失敗するのか? 客観的指標による初の定量分析~
拓殖大学
拓殖大学政経学部の丹野忠晋教授を含む研究グループは、全国で構築が進められてきた「地域医療情報連携ネットワーク」の停滞原因を探るため、この政策分野で初めてとなる「費用便益分析」を用いた定量的評価を実施しました。
01 |研究のポイント
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【背景と課題】
2000年代以降、400件以上のネットワークが構築されましたが、利用率の低迷や事業終了が相次いでいました。しかし、その原因についての学術的・客観的な評価はなされていませんでした。
【分析手法】
システム構築費等の「金銭的コスト」だけでなく、説明の労力や操作の負担といった「非金銭的費用」、および利便性向上などの「非金銭的便益」をすべて貨幣価値に換算して算出しました。
【分析結果】
対象となったネットワーク事業では、総便益(1億2,709万円)に対し、総費用(1億5,757万円)が大幅に上回り、**約3,000万円の赤字(費用便益比0.81)**となることが判明しました。
【結論】ネットワークが失敗する主因は、得られるメリットに対して運営・利用の負担が大幅に上回っている点にあり、今後の医療DX政策には費用の低廉化と導入メリットの拡大が不可欠であることが示されました。
02 |研究の詳しい内容
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本研究は、鉄道や道路などの公共事業評価に用いられる「費用便益分析」を、地域医療情報連携ネットワークの事業へと適用した日本で初めての取り組みです。
(1)網羅的な費用と便益の整理 従来の評価では見過ごされがちだった、以下の要素を金銭的価値として評価しました。
【非金銭的費用】
患者への同意取得に係る説明コスト、システム操作の負担、関係者会議の拘束時間(人件費換算)など。
【非金銭的便益】他院から得られる情報の有用性、書類閲覧のしやすさ、支払い意思額(WTP)など。
(2)定量化によるエビデンスの提示 実際のネットワーク事業者を対象とした分析では、補助金や会費収入などの金銭的便益を考慮しても、多額の構築費や維持費、そして現場の「見えない負担」がそれを上回っている実態が浮き彫りとなりました。
03 |今後の展望
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本研究成果は、現在政府が進める「医療DX政策」において、単なるシステムの構築だけでなく、現場の負担軽減と便益の最大化を両立させるための重要な指針となります。今後は分析対象を拡大し、手法のさらなる精緻化を目指します。
04 |論文情報
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【掲載誌】
会計検査研究 第71号
【論文タイトル】
地域医療情報連携ネットワーク政策における費用便益モデルの構築と試算
【著者】
丹野忠晋、平井里奈、伊藤敦、大塚良治、櫻井秀彦、古田精一、岸本桂子、奥村貴史
【DOI】
https://doi.org/10.51016/kaikeikensa.2502 本研究は、JST/RISTEX「科学技術イノベーション政策のための科学」研究開発プログラムの支援を受けて実施されました。
▼本件に関する問い合わせ先
拓殖大学 広報室
TEL:03-3947-7160
メール:web_pub@ofc.takushoku-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
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