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寒天由来アガロオリゴ糖、腸内環境改善への新たな可能性

学校法人藤田学園

— 健常日本人成人を対象とした探索的パイロット試験 —

伊那食品工業株式会社(本社:長野県伊那市西春近5074、代表取締役社長:塚越英弘)と、藤田医科大学(所在地:愛知県豊明市沓掛町田楽ケ窪1番地98、学長:岩田仲生)医学部 消化器内科学講座(責任者:大野栄三郎教授)および医科プレ・プロバイオティクス講座(責任者:廣岡芳樹教授)の研究グループは、寒天由来のアガロオリゴ糖(寒天オリゴ糖、Agaro-oligosaccharides, AOS)※1が、健常日本人成人の腸内細菌叢に及ぼす影響を検討した探索的パイロット試験を行いました。
本研究では、健常日本人成人18名を対象に、AOSを1日200 mg、4週間摂取してもらい、摂取前後の便サンプルを用いて腸内細菌叢やAOS利用に関わる遺伝子を解析しました。その結果、便通状態や腸内細菌叢全体の構造に大きな変化は認められなかった一方で、炎症性腸疾患との関連が報告されるRuminococcus gnavus group※2の相対量低下傾向、寒天由来糖質の利用に関わる可能性があるBacteroides uniformis※3の相対量増加傾向、ならびにAOS由来成分の代謝に関与するACI遺伝子※4量の増加が確認されました。
本成果は、AOSが腸内細菌叢を広く一律に増やすのではなく、特定の菌種や機能に働きかける「選択的プレバイオティクス※5」として利用できる可能性を示すものです。今後、無作為化プラセボ対照試験やより大規模な研究により、AOSの腸内環境改善効果と作用機序の検証が期待されます。
本研究成果は2026年5月14日、国際科学ジャーナル「Biomedicines」(オンライン版)に掲載されました。
論文URL:https://doi.org/10.3390/biomedicines14051112


<研究成果のポイント>
・ヒトを対象としたAOS摂取試験
健常日本人成人18名を対象に、寒天由来AOS 200 mg/日を4週間摂取する探索的パイロット試験を実施しました。
・腸内細菌叢に菌種特異的な変化傾向
腸内細菌叢全体の大きな構造変化は認められませんでしたが、Ruminococcus gnavus groupの相対量低下傾向とBacteroides uniformisの相対量増加傾向が確認されました。
・AOS利用に関わる酵素遺伝子の増加
AOS由来成分である3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースの代謝に関与するACI遺伝子量が、摂取後に有意に増加しました。
・安全性と便通状態
4週間の摂取期間中、便通状態に有意な悪化はなく、消化器症状を含む有害事象は報告されませんでした。


<背 景>
寒天は紅藻類由来の多糖であり、日本の食文化や食品産業に広く利用されています。アガロオリゴ糖(AOS)は寒天を部分的に分解して得られる短鎖糖質で、ヒトの消化酵素では分解されにくく、大腸に到達して腸内細菌と相互作用する可能性があります。
これまでの試験管内研究では、AOSが炎症性腸疾患などとの関連が報告されるRuminococcus gnavusやFusobacterium nucleatumの増殖を抑えつつ、ビフィズス菌や乳酸菌などを保つ可能性が示されていました。一方で、ヒトがAOSを摂取した際に、腸内細菌叢やAOS利用関連遺伝子がどのように変化するかについては十分に明らかではありませんでした。


<研究方法>
本研究は、健常日本人成人におけるAOS摂取と腸内細菌叢・便通状態との関連を検討する、単群・非無作為化・オープンラベルの探索的パイロット試験です。
・対象者:健常日本人成人18名(男性12名、女性6名、25〜49歳)。
・介入方法:AOSを含む粉末試験食品を1日200 mg、4週間摂取。試験食品は伊那食品工業株式会社が研究用に調製しました。
・腸内細菌叢解析:摂取前後に便サンプルを採取し、16S rRNA遺伝子アンプリコンシーケンシングにより解析しました。
・機能遺伝子解析:AOS由来成分の代謝に関与するACI遺伝子量を定量PCR(qPCR)により測定しました。
・便通状態の評価:Bristol Stool Form Scale(BSFS)を用いて便性状などを記録し、摂取前後で比較しました。


<研究結果>
・便通状態への影響:4週間のAOS摂取後、排便頻度およびBSFSスコアには有意な変化は認められませんでした。消化器症状を含む有害事象も報告されませんでした。
・腸内細菌叢全体の変化:Shannon indexおよび種の均等度には変化が認められましたが、Bray–Curtis距離に基づくβ多様性では、摂取前後の菌叢構造に有意な分離は認められませんでした。
・菌種レベルの変化傾向:Ruminococcus gnavus groupの相対量が低下する傾向、Bacteroides uniformisの相対量が増加する傾向が確認されました。ただし、これらは探索的解析であり、多重検定補正後の有意差ではありません。
・AOS利用関連遺伝子:qPCR解析により、AOS由来成分の代謝に関わる3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースシクロイソメラーゼ(ACI)遺伝子量が摂取後に有意に増加しました。


<今後の展開>
本研究は、AOSがヒト腸内において菌種および機能遺伝子レベルで選択的に作用する可能性を示した探索的な成果です。一般的なプレバイオティクスの多くは幅広い腸内細菌を刺激することがありますが、AOSは寒天由来糖質を利用できる限られた菌群や代謝経路に働きかける可能性があり、腸内細菌叢を機能面から制御する新しい食品素材としての応用が期待されます。
今後は、プラセボ対照を含む無作為化比較試験、より大規模で多様な被験者を対象とした検証、用量反応性の評価、ショットガンメタゲノム解析・メタボローム解析・培養試験などを通じて、AOSの効果と作用機序をより詳細に明らかにしていく必要があります。
・AOSを活用した選択的プレバイオティクス素材の開発
・腸内細菌叢の個人差に応じたテーラーメイド型食品への展開
・慢性炎症や生活習慣病予防に向けた腸内環境改善研究への応用
・長期摂取試験および臨床的アウトカムを含む検証研究


<用語解説>
※1 アガロオリゴ糖(AOS):
寒天を部分的に分解して得られるオリゴ糖。D-ガラクトースと3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースを構成成分とする。

※2 Ruminococcus gnavus group:
ヒト腸内に存在する細菌群の一つ。炎症性腸疾患との関連が報告されている。

※3 Bacteroides uniformis:
ヒト腸内に存在するBacteroides属細菌の一種。複雑な多糖の分解能を持つ菌種として知られている。

※4 ACI遺伝子:
3,6-アンヒドロ-L-ガラクトネートシクロイソメラーゼをコードする遺伝子。寒天由来糖質の代謝経路に関与する。

※5 プレバイオティクス:
腸内細菌など宿主に有用な微生物に選択的に利用され、健康維持に役立つ食品成分。


<文献情報>
[画像1]https://digitalpr.jp/table_img/2299/135994/135994_web_1.png


本件に関するお問合わせ先
学校法人 藤田学園 広報部 TEL:0562-93-2868 e-mail:koho-pr@fujita-hu.ac.jp

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