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【昭和医科大学】抗精神病薬が腸内細菌酵素の活性を制御― アリピプラゾールの新たな作用機序の可能性を示唆 ―

昭和医科大学

昭和医科大学(東京都品川区/学長:上條由美)の杉山幸翼さん(大学院医学研究科法医学分野3年)と秋山雅博教授(薬学部基礎医療薬学講座生体分子機能修飾学部門)らの研究グループは、精神疾患の治療薬として広く用いられているアリピプラゾールが、大腸菌のβ-グルクロニダーゼ活性を阻害することを明らかにしました。
β-グルクロニダーゼは、薬物や神経伝達物質などの体内循環に関わる腸内細菌酵素です。本研究成果は、アリピプラゾールが脳内受容体への作用に加え、腸内細菌酵素を介して薬効や副作用の発現に関与する可能性を示すものであり、新たな作用機序の解明につながることが期待されます。
本研究成果は、国際学術誌『Pharmacological Reports』に掲載されました。


■研究のポイント


医薬品がヒトの生理機能を制御する腸内細菌代謝酵素の活性を阻害することを確認。

アリピプラゾールの新たな薬効・副作用機序である可能性を示唆。



■研究背景・⽬的

 腸内細菌*1 の代謝酵素は、ヒトの生理機能の維持や調節に重要な役割を果たしています。腸内細菌は消化管内腔という生体外に共生しているため、経口服用された医薬品に直接曝露されるにもかかわらず、医薬品が腸内細菌の代謝酵素活性に与える影響については十分に解明されていません。
 大腸菌*2 がもつ β-グルクロニダーゼ*3 は、グルクロン酸抱合*4された薬物や内因性物質を脱抱合し、腸肝循環や薬物動態を調節する重要な酵素の1つです。近年、この酵素が阻害されると、セロトニンなどの神経伝達物質の体内循環が低下することが報告されていますが、医薬品による影響は十分に明らかになっていません。そこで、本研究では、一般的に処方される10種類の精神神経系作用薬が大腸菌のβ-グルクロニダーゼの活性に与える影響を調査しました。

■研究成果

 本研究により、精神疾患の治療薬として広く用いられているアリピプラゾール*5 とデュロキセチン塩酸塩*6 の2剤がβ-グルクロニダーゼの活性を阻害することを明らかにしました。
 特にアリピプラゾールは、β-グルクロニダーゼが局在する大腸菌の細胞内に高濃度で蓄積し、β-グルクロニダーゼ活性を有意に抑制しました。さらに、分子ドッキングシミュレーション*7 および分子動力学シミュレーション解析*8 により、アリピプラゾールとデュロキセチンはβ-グルクロニダーゼの活性部位の近傍に結合し、アリピプラゾールがより安定した相互作用を形成することが示されました。

■今後の展望

 本研究により、特定の精神神経系作用薬がヒトの脳内の受容体へ作用するだけでなく、腸内細菌酵素の活性を直接制御することで、薬効発現に関与する可能性が示唆されました。
 今後は、医薬品と腸内細菌酵素との相互作用が薬効・副作用の発現に及ぼす影響について解析を進めるとともに、腸内細菌酵素を標的とした新たな創薬戦略などへの発展が期待されます。

■⽤語説明

*1 腸内細菌
 動物の腸管内に生息する多種多様な細菌の集まり。ヒトの健康状態や疾患の発症などに関与することが明らかになっている。

*2 大腸菌
 動物の大腸に生息する代表的な細菌。

*3 βグルクロニダーゼ
 薬物とグルクロン酸の結合を分解して、元の物質に戻す作用を持つ酵素。

*4 グルクロン酸抱合
 主に肝臓で行われる解毒・代謝反応。薬物や体内の不要物にグルクロン酸を結合することで、水に溶けやすい形に変換し、尿などに排泄を促進する。

*5 アリピプラゾール
 ドパミンなど脳内の神経伝達物質のバランスを適度に調整し、精神症状を改善する薬剤。統合失調症やうつ病などの治療に用いる。

*6 デュロキセチン塩酸塩
 セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを抑え、脳内の神経伝達物質を増やして気分などを改善するほか、痛みを和らげる作用もあり、うつ病や慢性疼痛の治療に用いる。

*7 分子ドッキングシミュレーション
 標的となる酵素などタンパク質に、化合物がどのように結合するかをコンピューターで予測する手法。

*8 分子動力学シミュレーション解析
 結合した化合物とタンパク質が時間経過とともにどのように変化するかをコンピューターで再現・解析する手法。

■研究成果の公表情報

【論文タイトル】
 In vitro inhibition of Escherichia coli β-glucuronidase by aripiprazole
【著 者】
 Kohsuke Sugiyama, Kensuke Sato, Hanako Aoki, Maho Kotori, Ryota Nakano, Noriko Hida, Maiko Kusano, Masahiro Akiyama
【掲載誌】
 Pharmacological Reports
【掲載URL】
 https://doi.org/10.1007/s43440-026-00869-z

▼本件に関する問い合わせ先

 昭和医科大学 薬学部 基礎医療薬学講座 生体分子機能修飾学部門 教授
 秋山 雅博(あきやま まさひろ)
 TEL: 03-3784-8209
 E-mail: Akiyama.sw@med.showa-u.ac.jp

▼本件リリース元

 学校法人 昭和医科大学 総務部 総務課 大学広報係
 TEL: 03-3784-8059
 E-mail: press@ofc.showa-u.ac.jp

【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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