【矢野経済研究所プレスリリース】クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場に関する調査を実施(2025年)~2024年のクラウド基盤サービス市場規模は前年比118.1%の2兆2,800億円~
株式会社矢野経済研究所
株式会社矢野経済研究所(代表取締役:水越孝)は、国内のクラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場を調査し、現況、クラウドベンダ動向、新サービス普及状況、将来展望等を明らかにした。
1.市場概況
2024年のクラウド基盤(IaaS/PaaS)サービスの市場規模(事業者売上高ベース)は、前年比118.1%の2兆2,800億円と推計する。市場の成長を牽引するのは、業務上のシステムやデータをクラウド環境へ移行するマイグレーション案件である。特に、大企業においてクラウド基盤の導入が進み、システムを大きく作り替えることなく移行する「リフト」が情報系システムを中心に行われている。さらに近年は、基幹系システムのクラウド移行に検討・着手する企業が増加傾向にあり、クラウド基盤上で稼働するシステムやデータ量が増加している。クラウド基盤サービスの多くは従量課金制であるため、システムやデータ量の増加は、クラウド利用料金の増加に直結することから、市場拡大の一因になる。なお、2024年は仮想化ソフトウェアを提供する大手事業者がライセンス形態を変更し、同事業者の仮想化ソフトウェア上で稼働していたシステムのクラウド移行に関する需要が急速に高まった。
また、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展も、クラウド基盤サービス市場を押し上げる要因となる。企業のDXは業務効率化にとどまらず、競争力向上や企業価値の最大化を目的としたものへと変化している。加えて、データ利活用やデータドリブン経営(蓄積・収集したデータをもとに意思決定を行う経営手法)に取り組む企業の増加も市場の成長に繋がっている。
さらに、ユーザ企業のクラウド導入・運用を支援するITベンダによるクラウドインテグレーションサービスの普及も進み、クラウド基盤の活用環境が整備されつつある。これにより、クラウド基盤の導入・運用のハードルが下がり、より多くの企業でクラウド基盤を利用するようになった。
2.注目トピック
現下、大手クラウドベンダが開催する年次イベントにおいて、発表の中心テーマは生成AI関連である。かつてこれらのイベントはインフラ基盤の拡張や性能向上が主要なトピックであったが、今や生成AIが各社の重点領域であることを明確に示している。クラウドベンダは、AIを開発するための基盤やエンドユーザが直接触れるアプリケーション等、生成AI関連サービスを一貫して提供する。
さらに、大手クラウドベンダが次に見据えるのは、AIエージェントの普及である。AIエージェントには厳密な定義は存在しないが、高度な推論能力を持ち、得られた指示をもとに自律的に作業や処理を遂行するソフトウェアプログラム群と言える。すでに大手クラウドベンダが提供するAI開発プラットフォームでは、AIエージェントを独自に構築できる機能を搭載しており、複数のAIエージェントを統合管理することで、高度なタスク(業務処理)の実行を可能にしている。もっとも、AIエージェントは人間の介在を完全に排除するものではなく、タスクの下準備をAIエージェントが行い、人間が最終的な判断を下すという共生型の活用から進展するとみられる。
3.将来展望
今後もクラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場は順調に拡大し、2028年には4兆4,900億円に達すると予測する。市場の成長を牽引する要因として、基幹システムのクラウド移行が本格化することが挙げられる。クラウド基盤はセキュリティや可用性(システムが安定して利用できること)の向上、そしてITベンダのクラウドインテグレーションサービスの強化を背景に、基幹システムのクラウド移行が加速する。
また、生成AIの利用定着も市場を押し上げる一因となる。特に、ユーザ企業において業務効率化や新たな価値創出を目的とした生成AIの活用ニーズが高まっている。クラウドベンダ各社はAI関連サービスの拡充を進め、ITベンダもユーザ企業の生成AI環境の導入・運用支援サービスを強化している。しかし、ユーザ企業においては生成AIの導入が単なるPoC(Proof of Concept:概念実証)に留まり、本格的な運用には至らないケースもある。こうした状況を打開するには、ITベンダは技術提供だけではなく、ユーザ企業の業務フローの最適化やAI活用に適した組織体制の整備を支援することが不可欠である。ITベンダがこれらの支援を強化することで、ユーザ企業はより円滑に生成AIを導入・運用できるようになる。生成AIを含むAIの普及は、クラウド基盤上で求められる計算リソースとデータ容量の増大を招き、クラウド基盤(IaaS/PaaS)サービス市場の拡大に繋がると期待される。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3767調査要綱
1.調査期間: 2024年11月~2025年3月
2.調査対象: 国内クラウド関連ベンダ(パブリッククラウド及びその周辺サービス提供事業者)、国内民間企業等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング調査、郵送及びWebによる法人アンケート調査併用
4.発刊日: 2025年03月07日
お問い合わせ
⇒プレスリリースの内容や引用についてのお問い合わせは下記までお願いいたします。
株式会社矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム
https://www.yano.co.jp/contact/contact.php/press株式会社矢野経済研究所
https://www.yano.co.jp/配信元企業:株式会社矢野経済研究所
プレスリリース詳細へドリームニューストップへ
記事提供:DreamNews