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化学物質のゲノム毒性を簡便・定量的に測る新規試験法を開発~化学物質リスク評価の新たなアプローチ~

国立大学法人千葉大学

化学物質のゲノム毒性を簡便・定量的に測る新規試験法


 千葉大学大学院理学研究院の佐々彰准教授らは、国立医薬品食品衛生研究所ゲノム安全科学部の研究チームと共同で、化学物質が細胞に与えるエピジェネティック(注1)な影響を評価する新たな試験法を開発しました。この試験法の最大の特徴は、経済協力開発機構(OECD)(注2)の試験ガイドラインに基づく遺伝毒性試験(注3)の原理を活用しており、これにより高価な機器や複雑な技術を必要とせず、簡便かつ定量的な評価が可能である点です。この方法を利用することで、化学物質が生体にエピジェネティックな影響を与える度合いを、プラス・マイナスの数値として表現し、DNAメチル化(注4)阻害剤の効果比較や、発がん物質によるヒストン修飾H3K27Ac(注5)の低下など、多様なゲノム毒性を検出することが可能となりました。
 本研究成果は、英国科学雑誌 Scientific Reports にて3月5日に掲載されました。

[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/15177/959/15177-959-e68ecf71c9cb5120ebf643901648e18e-1428x1289.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


■研究の背景
 ゲノムDNAの塩基配列を変化させる「突然変異」を引き起こす化学物質は遺伝毒性物質と呼ばれ、遺伝毒性の有無は経済協力開発機構(OECD)の試験ガイドラインに基づく遺伝毒性試験法で評価されています。一方で、DNAの塩基配列変化を引き起こさないまでも、DNAメチル化やヒストン修飾といったエピジェネティックな作用を介して遺伝子の機能に変化を生じさせ、細胞活動に影響を与える化学物質が数多く存在します。そのような化学物資の作用を評価する方法は、現時点ではOECDガイドラインには収載されていません。
 細胞のエピジェネティックな変化を定量する既存の技術は、次世代シーケンサーや蛍光標識抗体を用いたフローサイトメトリー(注6)をはじめとする高価な機器や試薬の使用が必須であり、さらに高度な実験・解析技術を必要とします。化学物質のリスク評価の観点からは、複雑で高価な技術に依存せず、簡便かつ定量的にエピジェネティックな作用を評価できる新たな試験法の開発が求められてきました。

■研究の成果
 本研究では、従来の試験では捉えにくかった化学物質のエピジェネティックな作用を、簡便かつ定量的に測定できる「epi-TK試験」を開発しました。この試験法は、OECDガイドラインに収載されている遺伝毒性試験のひとつである、ヒトリンパ芽球細胞株TK6を用いたTK遺伝子突然変異試験(TK6試験)を基にしています。
 TK6試験は、ハウスキーピング遺伝子(注7)TKをレポーター遺伝子(注8)として、遺伝子配列に生じる突然変異を検出する方法です。本研究では、ゲノム編集技術を用いてTK遺伝子のエピジェネティックな制御を可能にした細胞株「mTK6」を樹立しました。この細胞株では、外因性のエピジェネティックな作用がTKの表現型に反映され、コロニー形成(注9)に影響を与えます(図1)。
 たとえばDNAメチル化が阻害されるとTK遺伝子が活性化され、細胞のコロニー形成頻度が上昇します。一方、DNAメチル化の促進やヒストン修飾の変化によりTK遺伝子がより強固に不活性化されると、コロニー形成頻度は低下します。このようなコロニー形成を指標としたエピジェネティック作用は、特別な機器や複雑な技術を必要とせず、化学物質の濃度に応じた変化として正確に数値化できます。この手法を用いることで、5-アザ-2'-デオキシシチジンやGSK-3484862などのDNAメチル化阻害剤によるDNA脱メチル化の効果を数値化して比較できるようになり(図2 a、b)、さらに、発がん物質 12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセタート(TPA)(注10)がヒストン修飾 H3K27Ac を低下させる作用を持つことを初めて明らかにしました (図2 c)。

[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/15177/959/15177-959-1da4f9db005e091960f63a3827a947a5-1182x707.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図2:化学物質のエピジェネティックな作用の数値化


■今後の展望
 この試験法の開発により、従来の遺伝毒性試験に加えてエピジェネティックな変化を指標とすることで、化学物質のリスク評価がより精密に行える可能性が広がります。今後、このアッセイの応用により、発がんリスクの高い化学物質のスクリーニングや安全性評価の精度向上が期待されます。

■用語解説
注1)エピジェネティック:「エピジェネティクス」とは、DNAの塩基配列を変化させることなく、遺伝子の発現を制御する仕組みを指し、代表的な修飾にDNAメチル化やヒストン修飾がある。「エピジェネティック」はその形容詞形であり、これらの修飾や作用に関連するものを指す。
注2)経済協力開発機構(OECD):Organization for Economic Co-operation and Developmentの略称で、世界の経済発展と国際協力を促進するための組織。化学物質の安全性評価に関する試験ガイドラインを策定し、国際的な基準の整備を行う。
注3)遺伝毒性試験:化学物質や環境因子がゲノムDNAに損傷を与えるかどうかを評価する試験方法の総称。代表的な試験にはAmes試験、小核試験、染色体異常試験などがあり、医薬品や化学物質の安全性評価に用いられる。
注4)DNAメチル化:DNAのシトシン塩基にメチル基(-CH₃)が付加されるエピジェネティックな修飾の一つ。ヒトでは主にCpG配列で起こり、遺伝子発現の抑制やゲノム安定性の維持に関与する。
注5)H3K27Ac:ヒストンH3タンパク質の27番目のリジン(K27)がアセチル化されるヒストン修飾の一つ。エンハンサーやプロモーター領域で見られ、遺伝子の活性化と関連している。
注6)フローサイトメトリー:細胞や粒子を液体中で一列に流しながら、レーザーを当てて散乱光や蛍光を測定し、個々の細胞の特性を解析する技術のこと。細胞のサイズ、形状、タンパク質発現などを高速かつ定量的に評価できる。
注 7)ハウスキーピング遺伝子:細胞が生存・維持するために常に発現している遺伝子。基本的な細胞機能(例えば、エネルギー代謝やリボソーム合成など)に関与する。
注 8)レポーター遺伝子:目的遺伝子の発現、またはその発現部位を容易に判別するために、目的遺伝子に組み換える別の遺伝子のこと。
注 9)コロニー形成: 単一の細胞が増殖し、集団(コロニー)を形成する能力を指す。この特性は、細胞の増殖能や生存率を評価するための指標として、放射線や化学物質の影響評価において用いられる。
注10)12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセタート(TPA):発がんプロモーターとして知られる化合物。プロテインキナーゼC(PKC)の活性化を介して細胞増殖や炎症応答を誘導する。

■研究プロジェクト
本研究は、以下の支援を受けて実施されました。
・ 厚生労働科学研究費補助金 食品の安全確保推進研究事業 21KA1001
・ 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 22H03748
・ 消費者庁 食品衛生基準科学研究費 24KA1008

■論文情報
タイトル:Dual-directional epi-genotoxicity assay for assessing chemically induced epigenetic effects utilizing the housekeeping TK gene
著者:Haruto Yamada, Mizuki Odagiri, Keigo Yamakita, Aoi Chiba, Akiko Ukai, Manabu Yasui, Masamitsu Honma, Kei-ichi Sugiyama, Kiyoe Ura, Akira Sassa
雑誌:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-025-92121-6

プレスリリース提供:PR TIMES

化学物質のゲノム毒性を簡便・定量的に測る新規試験法

記事提供:PRTimes

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