トランプ関税合意への評価、内容に不明点残り半数超で「判断できず」 自社への短期的な影響「ない」企業36.9%
株式会社帝国データバンク

トランプ関税(相互関税15%等)に関する企業アンケート
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株式会社帝国データバンクは、トランプ関税(相互関税15%等)による影響および日米間における関税交渉の合意に対する評価について、企業へアンケート調査を実施した。
SUMMARY
15%で日米合意したとされ8月7日に発動するトランプ関税に対し、短期的には企業の37.7%が「マイナス影響がある」と回答する一方、36.9%が「影響なし」を見込んでいる。中長期的では「影響なし」(18.2%)が短期的より低くなる一方で、「マイナス影響」(42.9%)や「分からない」(37.2%)は高くなった。
今回のトランプ関税に関する日米合意を「評価しない」が28.1%で、「評価する」(16.0%)を10ポイント超上回った。合意内容に不明な点が残り、「どちらともいえない」は半数を超えた。
調査期間:2025年8月1日~8月5日(インターネット調査)
有効回答企業:1,184社
アメリカのトランプ大統領が8月1日から発動するとしていた日本への25%の相互関税について、日米両政府は7月23日までに、15%とすることで合意したとされている。新たな税率を発動するための大統領令にトランプ氏は署名し、8月7日より米国が輸入する日本製品の税率はこれまでの10%から15%へ上がる見込み。
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そこで、トランプ関税が自社の事業活動へ与える短期的な影響(今後1年以内)について企業へ尋ねたところ、「マイナス影響がある」企業が37.7%、「影響はない」が36.9%となった。他方、「プラス影響がある」はわずか0.9%にとどまった。「分からない」は24.5%だった。
さらに、中長期的な影響(今後5年程度)についても尋ねたところ、「マイナス影響がある」は42.9%となった。「影響はない」が18.2%、「プラス影響がある」が1.6%で、「分からない」は37.2%だった。短期的な影響と比べると、中長期的には、「影響はない」が18.7ポイント下回る一方で、「マイナス影響がある」が5.2ポイント、「分からない」が12.7ポイント高くなっており、徐々にマイナスの影響や不透明感が強まると考える企業が増えている。
参考までに、2025年6月時点(相互関税10%で、上乗せ分は90日間の猶予中)に同様の設問で行った調査結果 と比べると、今回の関税率15%での合意を受けて、短期的には「影響はない」企業が増え、「マイナス影響がある」「分からない」は減少しており、先行きに対する不安感が若干緩和されていると言えよう。
今回の調査において、企業からは具体的なマイナス影響として「関税対策でアメリカ生産への移転傾向が出てくると、必然的に国内生産が減少する。設備投資計画について既に見合わせる会社も出てきた」(機械・器具卸売)との声が聞かれた。また、「直接の影響はないが、当社の顧客やその先で影響が大きかった場合は、ボディブローのように後から効いてくるかもしれない」と、影響はないとしながらも、間接的な影響が今後徐々に広がる可能性をあげる声も多く聞かれた。
今回のトランプ関税に関する日米合意について自社として評価するか尋ねたところ、「評価しない」は28.1%で、「評価する」(16.0%)を12.1ポイント上回った。「どちらともいえない」は54.3%と半数を超えた。
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「評価する」企業からは、「早期の妥結を評価」(専門サービス)、「よくやったと思う。結果だけみれば同じ率で合意した国は他にもあるが、途中で機嫌を損ねればもっと悪い結果も有り得たはず」(飲食料品・飼料製造)と、政府の粘り強い交渉による早期の合意を評価する声が聞かれた。
一方で、「評価しない」企業からは、「関税の15%という数字自体は仕方ないが、投資部分の詳細や、プラス条件の内容が不明確で、本当にこれで良いのか疑問が残る」(飲食店)、「もともと自動車は2.5%だったものをトランプ大統領が独断で25%という数値を出し追加してきた。それが15%になるからといって評価はできない」(家電・情報機器小売)と、不明確な合意内容や関税率自体への不満が示された。
「どちらともいえない」企業からは、「明文化されていない合意は評価自体ができない」(不動産)、「二転、三転があるかもしれず油断ができない」(電気機械製造)と、将来的に不明な部分が残っていたことを指摘する意見があがった。
本アンケートの結果、関税率15%で発動するとされるトランプ関税が事業活動に与える影響について、短期的には「マイナス影響がある」および「影響はない」企業がともに4割弱となった。中長期的な影響については、「マイナス影響がある」に加え、不透明感から「分からない」と考える企業が、短期的な影響と比べて増えている。一方で、関税の上乗せ分が猶予中であった2025年6月に同様の内容を尋ねた調査結果と比べると、今回の合意を受けて先行きに対する不安感が若干緩和されている。
また日米合意について、早期の合意実現などから「評価する」とした企業の割合を、不明確な合意内容などを理由に「評価しない」企業が上回ったほか、「どちらともいえない」が半数を超えた。
15%の関税は企業にとって大きな負担となる。直接的な影響を受けない企業においても、米企業と取引する日本企業からの間接的な影響を受けることで、悪影響が日本経済全体へ広がっていくことが見込まれる。さらに、自動車関連の引き下げ時期など合意内容についても不明確な点が多く、事業活動における先行きへの不透明感が依然として解消されないなかで、企業は新税率での対応を迫られる。こうしたことから、政府による日米での合意内容の明確化に加えて、今回の合意によって悪影響が懸念される中小企業を中心とした支援策など経済対策の実施が急がれる。
<参考> 企業からの声
- アメリカの商社を通じて各国の製品を輸入しているため、大幅なコスト上昇のリス ク要因となる(機械・器具卸売)- 国内生産が減り海外製品が輸入されると、中小の製造業者は打撃を受ける(鉄鋼・非鉄・鉱業)- 北米工場のアッセンブリー製品について、構成部品が日本など海外から供給され るものがあり、影響を受ける。顧客との交渉でどうなるのか不透明(輸送用機械・器具製造)- 自動車関連企業であるため影響は大きい 機械製造 自社は物流会社のため関税 15%が直接は影響しないが、顧客が 15%の関税を アメリカで課せられると、物量が確実に減る(運輸・倉庫)- 政府には関税の影響を押し止めるべく、減税や優遇税制、助成金・補助金の提供 など、内需拡大策を取ってほしい(情報サービス)
- 関税に関係ない業種なので特段影響はない 建材・家具、窯業・ 土石製品卸売 現状アメリカに輸出する物、輸入する物はともにないので直接的な影響はない。しかし、一次卸などに影響があれば、次第に値上げなどの話が来るかもしれない(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売)- 関税が 15%になったことで、円安が継続、もしくは円安傾向が加速すれば、物価 高騰につながり、国内景気の停滞が懸念される(飲食店)- 各国間の輸送が混乱し欠品が発生するなど、目にみえにくい現象がボディブロー のように各社の業績へ悪影響を与える(飲食料品・飼料製造)- アメリカの関税措置で、アメリカ国内の物価が上昇し景気後退の局面になると、そ れが全世界に波及する懸念がある(メンテナンス・警備・検査)
プレスリリース提供:PR TIMES


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