ビフィズス菌の摂取が、成人女性の顔の皮膚に現れる褐色班などの皮膚の劣化を抑制する可能性を確認
学校法人 順天堂

概要
順天堂大学の西川百合子特任助手※1、浅岡大介教授※1,2、大草敏史特任教授※1、佐藤信紘特任教授※1らの研究グループは、ビフィズス菌M-16V *¹の摂取が、成人女性の顔の褐色班*²や、毛穴などの皮膚の劣化を抑制し、顔の皮膚状態を改善する可能性が示唆されました。この成果は、腸皮膚相関の観点から、ビフィズス菌などのプロバイオティクスが皮膚の健康状態の維持に役立つ可能性を示すものです。
本研究はNutrients誌のオンライン版に2025年9月17日付で公開されました。
※1:順天堂大学大学院 医学研究科 腸内フローラ研究講座
※2:順天堂大学医学部附属 順天堂東京江東高齢者医療センター 消化器内科
本研究成果のポイント
● 成人女性を対象に、ビフィズス菌摂取による介入を行うランダム化二重盲検並行群間比較試験*³を実施した。
● ビフィズス菌M-16Vの摂取は季節性の皮膚状態の悪化を抑制する可能性とともに、排便に課題を抱えがちな中高年女性の排便状況を改善する可能性が示唆された。
● 腸皮膚相関の観点から、プロバイオティクスが皮膚の健康状態の維持に役立つ可能性が示された。
背景
おなかと肌の関連については腸皮膚相関と呼ばれ、社会的な認知度や科学的な関心も高く、腸内細菌や腸内環境が皮膚の状態に重要である可能性が示唆されています。ビフィズス菌や乳酸菌などのプロバイオティクスの摂取による皮膚の抗炎症効果や抗光老化効果*⁴が示されており、ビフィズス菌M-16Vはヒト試験において、8週間の摂取での成人アトピー性皮膚炎の重症度スコアの改善や、3ヶ月の摂取でのミルクアレルギー児の皮膚スコアの改善が報告されています。
本研究では、ビフィズス菌M-16Vの経口摂取による健常成人女性の顔面皮膚への効果を検討しました。
内容
研究方法
本研究では、乾燥や気温低下により、一般的に皮膚状態が悪化する東京の9月から1月にかけて、顔面に皮膚科的治療の通院をしていない成人女性120名(30-79歳)を対象に、ランダム化二重盲検並行群間比較試験を実施しました。ビフィズス菌M-16V群59名とプラセボ群61名に分け、ビフィズス菌M-16V粉末(100億個/包)またはプラセボ粉末を1日2回、12週間摂取頂きました。顔の皮膚状態は、医師の診察およびVISIA(R) Evolution(顔の皮膚画像解析カウンセリングシステム)を用いた画像解析評価を、ベースライン、4、8、12週の各時点で行い、被検者には顔の皮膚状態と排便状況についてのアンケート評価を実施しました。
[画像1:
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研究結果
1.顔の皮膚状態
VISIA(R)を使った画像解析評価では、摂取8週目にプラセボ群でVISIA(R)総合スコアが有意に悪化しましたが、ビフィズス菌M-16V群では見られませんでした。プラセボ群と比較して、ビフィズス菌M-16V群のVISIA(R)褐色班スコアは4週(p=0.013)および8週(p=0.041)で改善し、VISIA(R)毛穴スコアも摂取前と比較して4週、8週、12週で有意に改善しました。
[画像2:
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図 1. VISIA(R)スコアの週0からの変化量
(a)総合スコア、(b) 褐色班スコア、(c)毛穴スコア。群間比較で有意(p<0.05)なp値を示した。* p<0.05(M-16V群の0週との比較)、# p<0.05(プラセボ群の0週との比較)
2.排便状況
VAS法*⁵による排便自覚症状の評価では、プラセボ群と比較して摂取12週目にM-16V群で改善し、特に、50歳以上の集団で顕著に改善が見られました。
[画像3:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/21495/801/21495-801-c0f0307791e39357f502df6edb60b183-999x377.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図2 VAS法スコアによる排便状況の評価
(a)全体の解析(b)50歳以上の集団。群間比較で有意(p<0.05)なp値を示した。* p<0.05(M-16V群の0週との比較)
今後の展開
本研究では、乾燥や気温低下により一般的に皮膚状態が悪化する時期に、ビフィズス菌M-16Vの12週間連続摂取による成人女性の顔の皮膚状態等を評価したところ、画像解析によって褐色班スコアなどの改善が見られ、主観的評価による排便状況も特に50歳以上の方で顕著に改善しました。これらの結果から、ビフィズス菌M-16Vの摂取は季節性の皮膚状態の悪化を抑制するとともに、排便に課題を抱えがちな中高年の女性の排便状況を改善する可能性が示されました。今後、ビフィズス菌などのプロバイオティクスが多くの方々の皮膚の健康維持に役立てられることが期待されます。
用語解説
*1 ビフィズス菌M-16V(Bifidobacterium breve M-16V): 健康な乳児から単離されたビフィズス菌ブレーベ種(Bifidobacterium breve)で、森永乳業株式会社のプロバイオティクスのひとつ。これまでに、低出生体重児において、腸内細菌叢の形成促進、感染症発症の抑制、壊死性腸炎発症リスク低減、経腸栄養の早期確立、入院期間の短縮などの作用が示されているほか、アトピー性皮膚炎患児において腸内細菌叢が正常化し、アトピー性皮膚炎症状が改善されるなど抗アレルギー作用も示唆されています。
*2 褐色斑: 皮膚に生じる茶色から黒っぽい色のしみの総称です。一般的に、紫外線によって増えたメラニン色素が皮膚に沈着することで現れ、老人性色素斑(いわゆる日焼けによるしみ)や肝斑、そばかすなども褐色斑の一種に含まれます。多くは顔に生じますが、手の甲や腕など日光をよく浴びる部位にも見られ、加齢やホルモンの影響、炎症のあとなどが原因になることもあります。
*3 ランダム化二重盲検並行群間比較試験: 本用語は臨床試験を実施する際の試験デザインを表しています。
ランダム化:無作為化ともいわれ、複数の試験を行う際に作為が入らないように確率論的に試験参加者を割り振ることです。
盲検:評価や解釈に作為が入ることを防ぐため、どの試験参加者がどの条件に参加しているかを非公開とすることで、大別して、1: 試験参加者、2: 医師・医療スタッフなどの介入者、3: 統計解析の実施者の3者が非公開の対象とされます。このうち、試験参加者と介入者のいずれかが盲検されている場合は単盲検 (single-blinded) 、双方が盲検されている場合は二重盲検 (double-blinded) と呼びます。それぞれの群が並行して実施されます。
群間比較:それぞれの群を比較して行う試験という意味です。従いまして、本試験デザインは、無作為的に試験参加者が割り振られ、試験参加者、介入者ともに盲検化された並行群間比較試験という事になります。
*4 抗光老化効果: 紫外線によって起こる「光老化」を防ぐ働きのことを指します。光老化とは、年齢による自然な老化とは別に、紫外線を浴びることで肌に現れるしみ・しわ・たるみ・ごわつきなどの変化です。紫外線は肌の細胞に活性酸素を生じさせ、コラーゲンやエラスチンといったハリを保つ成分を壊したり、メラニンを増やしてしみの原因をつくったりします。抗光老化効果とは、櫛田紫外線によるダメージを防いだり、回復を助けたりする働きを示すもので、抗酸化作用などを通じて肌の健康を保ち、しみやしわの予防につながると考えられています。
*5 VAS法: Visual Analogue Scale(視覚的評価スケール)法の略。被験者の主観的な感覚(例:疲労感、満足度、痛みなど)を数値化するための評価手法で、通常0~100mmの直線上に「まったく感じない」から「非常に強く感じる」までの範囲を示し、被験者が自身の感覚に最も近い位置に印をつけることで評価を行います。本試験では、この1か月の排便状況について、最も悪い状態を0, 最も良い状態を100として感覚の変化を定量的に評価しました。
原著論文
本研究はNutrients誌のオンライン版に2025年9月17日付で公開されました。
タイトル: Imaging and microorganism analyses of the effects of oral Bifidobacterium breve intake on facial skin in females: A randomized, double-blind, placebo-controlled study
タイトル(日本語訳): Bifidobacterium breveの経口摂取が女性の顔面皮膚に及ぼす影響の画像解析および微生物学的解析: 無作為化二重盲検プラセボ対照試験
著者:Yuriko Nishikawa1), Chendong Xu1,2), Shin Yoshimoto1,2), Noriko Katsumata1,2), Noriyuki Iwabuchi1,2), Naotake Yanagisawa3); Shigeo Koido1,4), Miyuki Tanaka2), Jin-Zhong Xiao1,2), Daisuke Asaoka1,5), Toshifumi Ohkusa1), and Nobuhiro Sato1)
著者(日本語表記): 西川百合子1)、徐 宸東1,2)、吉本真1,2)、勝又紀子1,2)、岩淵紀介1,2)、柳澤 尚武3)、小井戸薫雄1,4)、田中美順2)、清水金忠1,2)、浅岡大介1,5)、大草敏史1)、佐藤信紘1)
著者所属: 1)順天堂大学大学院医学系研究科腸内フローラ研究講座、2)森永乳業株式会社研究本部基礎研究所、3)順天堂大学革新的医療技術開発研究センター、4)東京慈恵会医科大学附属柏病院消化器・肝臓内科、5)順天堂大学医学部附属 順天堂東京江東高齢者医療センター 消化器内科
DOI:
https://doi.org/10.3390/nu17182976プレスリリース提供:PR TIMES


記事提供:PRTimes