Starlink活用による南極からの3D点群データと映像のリアルタイム伝送に成功
三機工業株式会社

~極地・遠隔地の作業DX実現に向けて~
三機工業株式会社
株式会社KDDI総合研究所
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所
三機工業株式会社(社長:石田 博一)、株式会社KDDI総合研究所(代表取締役所長:小西 聡)、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所(所長:野木 義史)は2025年11月18日、Starlink衛星通信回線を活用し、世界で初めて※1南極の昭和基地(以下 昭和基地)とKDDI総合研究所本社間で3D点群データ(注2)と映像をリアルタイムに伝送する実証実験(以下 本実証)に成功しました。
本実証では、スマートフォンでの設備の計測・撮影開始から、圧縮、伝送、日本側での受信とモニター表示まで、1秒以内の遅延で途切れなく3D点群データと映像を同期させて伝送できることを確認しました。また、受信した3D点群データは、3D-CAD(注3)で製図できる品質があり、南極での作業を支援できることを確認しました。
さらに、設備の計測・撮影開始からデータの圧縮と伝送までを、3D点群圧縮伝送用ソフトウエアをインストールしたLiDAR搭載のスマートフォン1台で実行できることを確認しました。
[画像1:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/162383/31/162383-31-9d9aeb77ec2ef232937a5993127a8583-2231x1461.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
今回の成果により、計測作業をスマートフォンのみで手軽に短時間でできると共に、リアルタイムな情報共有により日本側からの状況確認や支援を受けることができるため、隊員の業務効率化と作業負担軽減が可能となります。KDDI総合研究所、極地研、三機工業の3者は今後も極地・遠隔地などの通信環境が不十分な地域での人手がかかる作業のDXを目指し、実用化に向けた取り組みを進めていきます。
なお、KDDI総合研究所は2025年12月18日から12月19日まで慶應義塾大学矢上キャンパスで開催される「2025年 映像情報メディア学会冬季大会」で本実証に関する発表を行います。
[画像2:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/162383/31/162383-31-f04a390c10b3b5fa3260b4441edea668-638x252.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
実証実験紹介動画(YouTube) https://youtu.be/CNUyUPHrsn8
〈別紙〉
■ 背景
昭和基地では気象、大気、雪氷、地質、生物、海洋、宇宙物理などのさまざまな観測・研究を行っています。この観測・研究を支えるため、KDDI総合研究所のグループ会社のKDDI株式会社と三機工業はそれぞれ通信と機械設備の分野で協力をしています。
KDDI総合研究所と極地研は映像伝送技術に関する共同研究を行っており、2022年11月11日にインテルサット衛星通信を活用した、南極域としては世界で初めて8K映像のリアルタイム伝送の実証実験を成功させました(注4)。その後、2024年2月26日にStarlinkを活用した南極からの8K映像リアルタイム伝送を成功させました(注5)。これらにより、インテルサット衛星通信用アンテナがある昭和基地周辺だけでなく、昭和基地から離れた場所での観測隊員と日本の担当者とのリアルタイムコミュニケーションに基づく作業効率化を可能としました。
三機工業は、機械設備の施工技術と保守管理ノウハウを活用し、昭和基地での本実証に参画しました。昭和基地の隊員には、空調設備、配管、制御機器の施工やポンプ等の交換工事などでメジャーや計測器を用いて手作業で立体的な設置状況を計測し紙図面に反映するという作業があり、手間がかかる作業の効率化が課題でした。この課題解決に向け、3者はそれぞれの知見と新たな映像伝送技術の活用による作業の効率化に向けた検討を進めてきました。
■ 本実証の成果
今回3者は、スマートフォンを使いリアルタイムに3D点群データと映像を伝送することにより課題を解決しました。
南極と日本の距離は約14,000kmあり、大容量データを長距離で途切れず安定して伝送する必要があります。KDDI総合研究所は従来の3D点群圧縮伝送ソフトウエア(注6)に、SRT(注7)伝送プロトコルを採用したパラメータの最適化と、G-PCC(注8)デコーダへの独自のエラー耐性の実装を行い、スループットを2Mbpsから8Mbpsに向上させました。これにより、設備の立体的な設置状況を把握できる品質の3D点群データと映像をリアルタイムで伝送することに成功しました。
また、機器のコンパクト化と操作の簡便化を図り、3D点群計測の専門家でなくてもスマートフォンの操作で計測できる環境を構築しました。
三機工業は受信した3D点群データを日本国内のエンジニアが3D-CAD図面化するバックオフィスの効果と完成した図面データを越冬隊員へフィードバックし2拠点で共有が可能となります。これにより遠隔地での施工管理業務の効率化に貢献することを実証しました。
■ 本実証の概要
1.実施日:
2025年11月18日
2.実験目的
隊員の作業効率化に向け、Starlink衛星回線とスマートフォンの活用による3D点群データと映像のリアルタイム伝送の技術を実証する。
3.検証内容
・3D点群データと映像をStarlink衛星通信回線で効率よく伝送するための技術の検証
・3D点群データと映像の受信品質の検証
・スマートフォンの操作性の検証
4.システム構成
昭和基地で3D点群圧縮伝送ソフトウエアをインストールしたLiDAR搭載のスマートフォンを用いて設備を計測・撮影、計測・撮影したデータを圧縮しStarlink回線を通じて伝送。KDDI総合研究所本社に設置したシステムで受信・伸長しモニター表示。
[画像3:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/162383/31/162383-31-47eebe4fcda82a6d385d297c0cf56577-988x270.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
<データ伝送システムの構成図>
5.本実証分担者
柳原 広昌(KDDI総合研究所)
花岡 洋平(KDDI総合研究所)
藤井 ディエゴ(KDDI総合研究所)
野中 敬介(KDDI総合研究所)
今野 智明(KDDI総合研究所)
河村 圭(KDDI総合研究所)
岡田 雅樹(極地研 情報基盤センター)
杉浦 佑紀(三機工業 R&Dセンター)
柴田 一栄(三機工業 R&Dセンター)
福森 幹太(三機工業 R&Dセンター)
6.昭和基地作業担当者
北村 剛祥(第66次南極地域観測隊越冬隊、KDDI株式会社から極地研に出向し、南極地域観測隊として派遣)
東海林 貴(第66次南極地域観測隊越冬隊、三機工業から極地研に出向し、南極地域観測隊として派遣)
が実証実験用3D点群取得と伝送を担当しました。
本実証は、KDDI総合研究所と極地研が2019年から行っている「南極地域観測隊の記録と情報発信のための新しい映像伝送技術の開発研究と画期的な広報映像の社会発信のための実証実験」の一環です。また、本研究成果は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))の委託研究(JPJ012368C06801)により得られたものです。
(注1)南極域からの3D点群のリアルタイム伝送として世界初(2025年12月15日時点、KDDI総合研究所および極地研調べ)
(注2)3D点群データ:3次元空間上の座標と色の情報を持つ多数の点の集合体で、物体や環境の形状をデジタル的に表現するデータ。今回のケースでは、設備の立体的な設置状況を把握するのに用いている。
(注3)3D CAD:3D Computer Aided Design。コンピューターを使って三次元(3D)の立体モデルを設計・製図する技術
(注4)2022年12月15日 KDDI総合研究所ニュースリリース
「世界初、南極からの8K映像のリアルタイム伝送に成功」
https://www.kddi-research.jp/newsrelease/2022/121501.html
(注5)2024年2月26日 KDDI総合研究所ニュースリリース
「Starlinkを活用した南極からの8K映像リアルタイム伝送に成功」
https://www.kddi-research.jp/newsrelease/2024/022601.html
(注6)2024年9月2日 KDDI総合研究所ニュースリリース
「Starlink活用によるトンネル建設現場からの3D点群データのリアルタイム伝送に成功」
https://www.kddi-research.jp/newsrelease/2024/090201.html
(注7)SRT:Secure Reliable Transport。リアルタイム伝送に適したUDP(User Datagram Protocol)プロトコルをベースとし、FEC(前方誤り訂正)と限定的なARQ(自動再送要求)を兼ね備えた伝送プロトコル
(注8)G-PCC:Geometry-based point cloud compression。座標ベースの点群圧縮方式で、3D点群をそのまま圧縮する。測量や建設現場の遠隔監視などの3D空間の座標情報を利用する用途に適している。
【お問い合わせ先】
■研究内容について
株式会社KDDI総合研究所 XR部門
柳原 正広(やなぎはら まさひろ)
URL:
https://www.kddi-research.jp/inquiry.html
国立極地研究所 情報基盤センター
岡田 雅樹(おかだ まさき) okada.masaki@nipr.ac.jp
三機工業株式会社 コーポレート本部広報・IR部
TEL:03-6367-7041
■報道について
株式会社 KDDI総合研究所 研究企画室
URL:
https://www.kddi-research.jp/inquiry.html
国立極地研究所 広報室
TEL:042-512-0655 FAX:042-528-3105 メール:koho@nipr.ac.jp
三機工業株式会社 コーポレート本部広報・IR部
TEL:03-6367-7041
プレスリリース提供:PR TIMES


記事提供:PRTimes