世界初、レアメタルに依存しないシリコーン硬化用の鉄触媒の開発・製品化に成功しました
NEDO

従来の白金技術では製造困難な新素材の開発にも期待
NEDOの委託事業「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」(以下、本事業)の一環として、シリコーン硬化用の鉄触媒の技術開発に取り組んできた北里大学と大阪公立大学は、このたび、世界初となるレアメタルに依存しない製造プロセスによるシリコーン硬化に適した鉄触媒の開発・製品化に成功しました。
開発した鉄触媒は、従来の白金触媒に匹敵する高い活性(反応を効率よく進める性能)とシリコーンへの溶解性を備えており、これにより硬化シリコーンの製造を可能にしました。さらに、白金触媒では困難だった、窒素・硫黄・リンなどのヘテロ原子を含む材料でもシリコーン硬化を実現できることを実証しました。
今後は、シリコーン関連企業との共同研究を通じて、鉄触媒を用いたシリコーン硬化材料の実用化を目指して研究を進め、レアメタルへの依存度を低減し、持続的かつ安定的な産業基盤の構築に貢献します。
なお、開発した鉄触媒は、2026年1月28日から1月30日まで東京ビッグサイトで開催される「nano tech 2026」のNEDOブースで展示します。また、製品化された鉄触媒は、東京化成工業株式会社が2026年1月21日から販売を開始します。
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図1 鉄触媒により製造した硬化シリコーン
1.背景
白金触媒によるシリコーンの硬化は、剥離(はくり)コーティング剤やシリコーンゴム製品の製造に用いられ、工業用途から医療材料、調理器具などの生活関連用品まで、幅広い分野で利用されています。この際、白金触媒は硬化した材料中に分散して製品との分離が困難となるため、そのほとんどが回収されていません(世界の年間白金生産量の約3%に相当)。白金は可採埋蔵量が少なく、可採地域が限定されている地政学的リスクの高いレアメタルであり、価格が変動・高騰しやすい傾向にあります。 こうした状況は、硬化シリコーン材料の製造コストの不安定化および増加を引き起こす一因となっています。このような背景から、硬化シリコーンの持続的かつ安定的な製造には、レアメタルに依存しない硬化シリコーン製造技術の開発が課題となっていました。また、図2のように白金触媒は窒素、硫黄、リンなどのヘテロ原子※1による被毒を受けやすいため、ヘテロ原子を含む添加剤や官能基が利用できないシリコーンの硬化阻害という課題もあります。これまでにもシリコーン材料の硬化に利用可能な鉄触媒の開発は試みられてきましたが、触媒の活性や空気耐性に乏しく、製品化した例はありませんでした。
このような背景の下、NEDOは2014年度から2021年度まで本事業※2で有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術の開発を進め、その一環として、北里大学、大阪公立大学※3と共同で、シリコーン硬化用鉄触媒の技術開発に取り組んできました。
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図2 白金触媒によるシリコーン硬化の課題
2.今回の成果
(1)シリコーン硬化用鉄触媒の開発
鉄触媒の分子構造をシリコーン硬化用途に最適化することで、白金触媒に匹敵する高い触媒活性と空気耐性の両立に成功しました。開発した鉄触媒は極めて高い活性を有するため、シリコーンに対して質量比で100万分の1(1ppm)まで低減できるため、残留した鉄による着色がない無色硬化シリコーンの製造に成功しました。また、この実験を実際の製造環境と同じ空気中で行った場合も問題なく硬化シリコーンが得られることを実証しました。これにより、世界で初めてレアメタルに依存しない製造プロセスによるシリコーン硬化に適した鉄触媒の製品化につながりました。
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図3 鉄触媒の添加量を変えて硬化させたシリコーン
(2)ヘテロ原子含有シリコーン材料開発の実証
今回開発した鉄触媒のヘテロ原子を含有するシリコーン材料の硬化を検証するため、さまざまな窒素、リン、硫黄を含む化合物をシリコーン材料に添加して、シリコーンの硬化試験を行いました。いずれの添加剤を含むシリコーンも問題なく硬化が進行し、鉄触媒が白金触媒では製造困難なシリコーン材料の製造に利用可能であることを実証しました。
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図4 ヘテロ原子を含有するシリコーン材料の硬化試験
3.今後の予定
北里大学は、本事業で製品化した鉄触媒を用いたシリコーン製造技術の実用化に向けた開発を継続しています。具体的には、本事業の終了後である2022年度から、NEDOの「官民による若手研究者発掘支援事業(若サポ)※4」のマッチングサポートフェーズに参加し、現在は同事業の共同研究フェーズにおいて、さらに開発を推進しています。北里大学は、シリコーン関連企業と連携し、実証実験を進めることで、関連産業のレアメタル依存度を低減し、持続的かつ安定的な産業基盤の構築に貢献します。さらに、従来の白金技術では製造困難だった新素材の開発も期待されます。
なお、開発した鉄触媒は、2026年1月28日から1月30日まで東京ビッグサイトで開催される「nano tech 2026※5」のNEDOブースで展示します。また、製品化された鉄触媒は、東京化成工業が2026年1月21日から販売を開始します。
【注釈】
※1 ヘテロ原子
窒素や硫黄、リンなどの炭素と水素以外の原子のことです。これらは材料に新しい機能を付与するために重要ですが、従来の白金触媒ではうまく硬化させることができませんでした。本技術により、これらの成分を含んだ高機能なシリコーンを作ることが可能になります。
※2 本事業
事業名:有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発
事業期間:2014年度~2021年度
事業概要:有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発
https://www.nedo.go.jp/activities/EV_00295.html
※3 大阪公立大学
本事業には、大阪府立大学と統合する前の大阪市立大学として参画していました。
※4 官民による若手研究者発掘支援事業(若サポ)
事業名:官民による若手研究者発掘支援事業(若サポ)
事業期間:2022年度~2026年度
事業概要:官民による若手研究者発掘支援事業(若サポ)
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100166.html
※5 nano tech 2026
nano tech 2026 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議
https://www.nanotechexpo.jp/プレスリリース提供:PR TIMES



記事提供:PRTimes