軽症から中等症の花粉症症状の緩和が確認された「乳酸菌Lacticaseibacillus paracasei KW3110」がヒト樹状細胞において免疫調整に関わるIL-12産生を誘導する仕組みを解明
キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社(社長 COO 南方健志、以下キリン)のヘルスサイエンス研究所(所長 村島弘一郎)は、乳酸菌Lacticaseibacillus paracasei KW3110(以下、「乳酸菌L. パラカゼイ KW3110」)※1が、ヒト樹状細胞においてどのように作用するかを明らかにしました。
本研究により、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110がヒトの免疫細胞の一種である樹状細胞※2に取り込まれ、細胞内で乳酸菌由来RNA※3が認識されることで、花粉症のようなアレルギー反応の原因となる2型炎症※4を抑制するサイトカイン※5「インターロイキン12(以下、IL-12)※6」の産生が誘導される分子メカニズムが示されました。これにより、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110がヒト樹状細胞において免疫応答にどのように関与するのかについて、新たな科学的知見が得られました。
当研究成果は「International Archives of Allergy and Immunology※7」に学術論文として掲載されることが決定しています。
※1 International Archives of Allergy and Immunology. 2004;135:205-215
※2 体内に侵入した異物を取り込み、免疫応答の活性化に関与する免疫細胞の一種。
※3 細胞内で遺伝情報の伝達に関与する分子。
※4 アレルギー性の炎症の一種。
※5 アレルギー反応に関与する情報伝達物質の一種。
※6 2型炎症によるアレルギー反応を抑制するサイトカインの一種。
※7
International Archives of Allergy and Immunology | Karger Publishers
株式会社ウェザーニューズが実施した「花粉症調査 2026」によると、2人に1人以上が花粉症であると回答しており※8近年、花粉症(季節性アレルギー症状)によるくしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が日常生活に大きな支障を及ぼしています。特に生活の質(QOL)への影響は深刻※9であり、花粉症は社会的課題として認識され始めています。花粉症のようなアレルギー反応はTh2細胞などの免疫細胞が深く関係しているといわれており、それらの細胞が2型炎症を引き起こすことで発症します。花粉やダニ、ハウスダストなどの物質に対してそれらの細胞が過剰な炎症反応を起こすことでアレルギー症状が引き起こされるため、2型炎症を悪化させないことが重要です。キリンはこれまでに、2型炎症を抑制するサイトカイン(例:IL-12)の放出量を乳酸菌L. パラカゼイ KW3110と市販ヨーグルト由来の乳酸菌とで比較する実験を行った結果、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110の2型炎症を抑制するサイトカインを産生する能力が他の乳酸菌に比べて高く(図1)、臨床試験においても軽症から中等症の花粉症症状を緩和することが確認されています※10。
[画像1:
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※1の論文より作図
図1.各種乳酸菌によって刺激された免疫細胞の2型炎症を抑制するサイトカイン(IL-12)産生量の割合
これらの背景を踏まえ、作用メカニズムの解明を目的とした研究を実施しました。本研究により、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110がヒト樹状細胞に取り込まれ、乳酸菌由来RNAが認識されることでIL-12産生が誘導される仕組みの一端が明らかになりました。本研究成果によって、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110が死菌であっても花粉症などのアレルギー性鼻炎症状を緩和できる理由について、分子レベルでの理解を深めることができ、今後の素材価値向上への貢献が期待されます。
※8 株式会社ウェザーニューズ 「花粉症調査2026」
【花粉症調査】2人に1人以上が花粉症 10代は7割が発症し根本治療に関心 | Weathernews Inc.
※9 厚生労働省 的確な花粉症の治療のために
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/kafun_chiryo.pdf
※10 2025年10月31日 当社ニュースリリース
「乳酸菌Lacticaseibacillus paracasei KW3110」による軽症から中等症の花粉症症状の緩和を確認 | 2025年 | KIRIN - キリンホールディングス株式会社
■研究成果(概要)
乳酸菌L. パラカゼイ KW3110は、ヒト免疫細胞の中でも樹状細胞に作用し、2型炎症によるアレルギー反応を抑制するサイトカインであるIL‑12の産生を誘導することが明らかになりました。乳酸菌L. パラカゼイ KW3110は樹状細胞に取り込まれた後に機能を発揮し、細胞表面ではなく細胞内で認識されることが確認されました。さらに、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110由来の1本鎖 RNAがIL‑12産生誘導において重要な役割を担っており、このRNAが樹状細胞内のToll様受容体8(TLR8)を介して認識されることで、IL‑12の産生が促進されることを明らかにしました。また、ヒトでの抗アレルギー作用の研究報告が豊富な乳酸菌「Lacticaseibacillus rhamnosus GG(LGG乳酸菌(R))」由来のRNAと比較しても、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110由来RNAはヒト樹状細胞においてIL‑12産生をより強く誘導することが確認されました。
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黒:樹状細胞 赤:樹状細胞に取り込まれた乳酸菌L. パラカゼイ KW3110
図2. 樹状細胞における乳酸菌L. パラカゼイ KW3110の取り込み
[画像3:
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図3. 樹状細胞における乳酸菌L. パラカゼイ KW3110濃度依存的なIL-12産生誘導
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図4. 乳酸菌L. パラカゼイ KW3110由来RNA 濃度依存的なIL-12産生誘導
[画像5:
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図5. TLR8のIL-12産生誘導への関与
[画像6:
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図6. 乳酸菌L. パラカゼイ KW3110由来RNAとLGG乳酸菌(R)由来RNAのIL-12産生誘導能の比較
■得られた示唆
本研究成果は、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110の抗アレルギー作用に関わるメカニズムの一端を、ヒト樹状細胞において明らかにしたものです。さらに、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110由来RNAが細胞内受容体(TLR8)に認識されることでIL-12産生が誘導されるという作用メカニズムの一端が明らかになりました。これにより、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110が死菌であっても効果を発揮する理由を科学的に説明できるようになりました。
また、ヒト樹状細胞を用いて抗アレルギー作用の仕組みが示されたことで、花粉症などのアレルギー性鼻炎症状に対する乳酸菌によるアプローチの科学的根拠がさらに強化されたと考えられます。
■今後の展望
乳酸菌L. パラカゼイ KW3110の研究を通じて、花粉症などのアレルギー症状によるQOL低下を軽減することで健康課題の解決に貢献してまいります。
キリングループは自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、心豊かな社会に貢献します。
■乳酸菌L. パラカゼイ KW3110とは
「乳酸菌L. パラカゼイ KW3110」はキリンと小岩井乳業の共同研究で100種類以上の中から発見され、免疫バランスを整えることが期待できる乳酸菌です。もともとはチーズから分離された乳酸菌Lacticaseibacillus paracaseiの1種です。
■背景・目的
花粉症(季節性アレルギー症状)は国民の約4割以上が罹患し、くしゃみ・鼻水・鼻づまりに加えて睡眠障害や集中力低下、屋外活動の制限など生活の質(QOL)低下が深刻な社会課題となっています。原因はスギ・ヒノキ花粉やハウスダスト、ダニなどのアレルゲンに対する免疫の過剰反応で、特にTh2細胞などの免疫細胞を介する「2型炎症」が深くかかわっていると考えられています。キリンはこれまでに、2型炎症を抑制するサイトカイン、IL-12を強く誘導する乳酸菌L. パラカゼイ KW3110を用いた臨床試験で、花粉症などのアレルギー性鼻炎症状が緩和されることを明らかにしてきました。本研究では、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110がヒト免疫系にどのように働きかけるかの分子メカニズム解明を目的に、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)から樹状細胞を単離して、試験を実施しました。
■研究成果1.:ヒト樹状細胞において、IL-12産生を誘導することを確認
乳酸菌L. パラカゼイ KW3110は樹状細胞に作用し、IL-12産生を濃度依存的に誘導することを確認しました(図1)
[画像7:
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図1. 樹状細胞における乳酸菌L. パラカゼイ KW3110濃度依存的なIL-12産生誘導
■研究成果2.:ヒト樹状細胞への取り込みがIL-12産生誘導に重要であることを確認
共焦点顕微鏡により、樹状細胞内に乳酸菌L. パラカゼイ KW3110が取り込まれていることを確認しました。また、この取り込みを阻害すると、IL-12産生が誘導されなくなったことから、樹状細胞に乳酸菌L. パラカゼイ KW3110が認識され、取り込まれることがIL-12産生誘導に重要であることを確認しました。
[画像8:
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図2. 樹状細胞への取り込みと取り込み阻害のIL-12産生誘導への影響
■研究成果3.:乳酸菌L. パラカゼイ KW3110由来のRNAがIL-12産生を誘導することを確認
樹状細胞において、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110由来のRNAはIL-12産生を誘導することを確認しました(図3左図)。一方で、1本鎖RNAを認識するTLR8を選択的に阻害すると、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110によるIL-12産生誘導がみられなくなったことから、RNAが樹状細胞内のTLR8を介して認識されることで、IL‑12の産生が促進されることを確認しました(図3右図)。
[画像9:
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図3. 乳酸菌L. パラカゼイ KW3110由来RNAとTLR8のIL-12産生誘導への関与
■研究成果4.:LGG乳酸菌(R)と比較し、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110由来RNAがIL-12産生をより強く誘導することを確認
樹状細胞において、乳酸菌L. パラカゼイ KW3110由来RNAは、ヒトでの抗アレルギー作用の研究報告が豊富なLGG乳酸菌(R)由来のRNAと比較し、IL-12産生を強く誘導することを確認しました(図4)。
[画像10:
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図4. 乳酸菌L. パラカゼイ KW3110由来RNAとLGG乳酸菌(R)由来RNAのIL-12産生誘導能の比較
プレスリリース提供:PR TIMES





記事提供:PRTimes