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CO2から生まれ、肥料と原料へ還るプラスチックシステム~炭素と窒素を循環利用する新しい高分子資源循環系を実証~

国立大学法人千葉大学

CO2から生まれ、肥料と原料へ還るプラスチックシステ


 千葉大学大学院融合理工学府博士前期課程 仁木陸翔氏 (研究当時)、同大大学院工学研究院 青木大輔准教授(同大園芸学研究院附属宇宙園芸研究センター兼任)、谷口竜王教授らの研究グループは、東京大学 神谷岳洋准教授、京都大学 喜多祐介特定准教授、田村正純教授らと共同で、二酸化炭素(CO2)を原料としてモノマー(注1)および架橋剤(注2)を直接合成し、架橋型脂肪族ポリカーボネート材料(注3)を創製しました。本材料はソフトマテリアルとして利用可能であるだけでなく、使用後にアンモニア水で処理することで、植物肥料である尿素とモノマーと架橋剤の前駆体へ分解できます。さらに、得られた分解生成物から再びCO2を用いて元のモノマーと架橋剤を再生することにも成功しました。本研究では、CO2由来炭素を高分子材料として利用・再生する「炭素循環」と、アンモニアによる高分子分解を通じて窒素成分を尿素肥料として利用する「窒素循環」を統合した、新しい高分子資源循環システムを実証しました(図1)。
 本研究成果は2026年6月18日に学術誌Journal of CO2 Utilizationにオンライン掲載されました。  
 (論文はこちら:10.1016/j.jcou.2026.103475)        

[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/15177/1199/15177-1199-dfd4babf033afc31326a3f2b2c2d829b-780x509.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図1:本研究概要


■研究の背景 (詳細はPDF参照)
 現代社会に不可欠なプラスチックですが、廃棄物増加や化石資源依存、CO2排出が社会課題であり、持続可能な資源循環型プラスチック(注4)およびその分解・再資源化技術の開発が強く求められています。自然界では、炭素は大気中のCO2から有機化合物へと変換され、窒素は土壌中でアンモニアやアンモニウム塩として植物に取り込まれ、栄養源として循環しています。そこで本研究では、このような炭素と窒素の循環利用を高分子材料へ導入することを目指し、CO2由来の架橋型脂肪族ポリカーボネート材料に着目しました。脂肪族ポリカーボネート自体はCO2を原料として合成可能であることが知られていましたが、その多くは線状高分子(注5)を対象としていました。一方、架橋構造を導入することで、ソフトマテリアルとして利用可能な高分子材料へ展開できることから、CO2を用いた架橋剤の直接合成に取り組みました。これにより、モノマーから架橋剤に至るまでCO2を原料として利用したソフトマテリアルの創製と、その使用後を見据えた資源循環系の構築を目指しました。

■研究成果のポイント (詳細はPDF参照)
1.CO2からのモノマーと架橋剤の直接合成に成功:酸化セリウム(CeO2)触媒を用いることで、副反応を抑制しながらモノマーと架橋剤を効率よく合成にすることに成功しました。
2.柔軟性と透明性を兼ね備えた自立フィルムの創製:モノマーと架橋剤を開環重合(注6)することで得られた架橋体は、透明かつ柔軟な自立フィルムとして形成され、ソフトマテリアルとしての利用が期待されます。
3.アンモニア処理による尿素肥料への分解とCO2を用いた原料への再変換:架橋高分子をアンモニア水で分解すると、尿素とモノマーと架橋剤前駆体が生成されました。さらに、植物実験(注7)から、分解生成物は混合物のままでも肥料効果を示し、前駆体からはCO2とCeO2触媒を用いて元のモノマー・架橋剤を再合成できました。これにより、炭素と窒素を循環利用する新しい高分子資源循環系を実証しました。

■今後の展望
 今後は、アンモニア分解条件や再資源化プロセスをさらに最適化することで、より実用的なケミカルリサイクル技術への展開が期待されます。また、架橋構造やモノマーを適切に設計することで、柔軟性や強度を調整可能なソフトマテリアルへの応用も期待されます。さらに、本研究では光を用いた材料形成にも成功しており、将来的には3Dプリンター用樹脂などの光硬化型材料(注8)への展開も期待されます。

■用語解説
注 1)モノマー:プラスチックなどの高分子(ポリマー)を構成する基本単位となる低分子化合物。
注2)架橋剤:高分子同士を化学的につなぐことで網目状の構造(架橋構造)を形成する化合物。材料の強度や柔軟性、形状安定性などに大きく影響する。
注 3)架橋型脂肪族ポリカーボネート材料:柔軟性を示しやすい骨格を有するポリカーボネートが、化学結合によって網目状(架橋構造)につながった高分子材料。ゴムのような柔らかさや変形性を示し、ソフトマテリアルとして利用される。
注 4)資源循環型プラスチック:使用後に廃棄するのではなく、分解・再利用・再資源化を通じて、原料や有用物質として繰り返し利用可能なプラスチック材料。
注 5)線状高分子:ひも状の高分子鎖が独立して存在する高分子材料。高分子鎖同士は化学的に結合していない。一方、架橋構造を導入すると高分子鎖同士が三次元的に連結されたネットワーク構造となり、柔軟性や弾性を示すゴムやゲルなどのソフトマテリアルとして利用できる。
注6)開環重合:環状構造を有する分子(環状モノマー)の結合を開裂させながら連結していくことで、高分子を形成する重合反応。ポリカーボネートやポリエステルなどの合成に広く用いられる。
注7)植物実験:植物を用いて物質の肥料効果や生育への影響などを評価する実験。本研究では、モデル植物としてシロイヌナズナを用いた。
注8)光硬化型材料:紫外線や可視光などの光を照射することで化学反応が進行し、液体から固体へと硬化する材料。塗料、接着剤、3Dプリンター用樹脂などに広く利用されている。

■論文情報
タイトル:A carbon-nitrogen pathway in the ammonolysis of CO2-based polycarbonate networks
著 者:Rikuto Niki, Yusuke Kita, Shuto Uchiumi, Mai Akatsuka, Raj Kishan Agrahari, Pengru Chen, Toyokazu Tsutsuba, Kazuaki Rikiyama, Norio Tomotsu, Tatsuo Taniguchi, Takehiro Kamiya, Masazumi Tamura, Daisuke Aoki
雑誌名:Journal of CO2 Utilization
DOI:10.1016/j.jcou.2026.103475

■研究プロジェクトについて
本研究は、以下の事業の支援を受けて行われました。
・科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST
研究領域:「[分解と安定化] 分解・劣化・安定化の精密材料科学」
研究総括:高原 淳 九州大学ネガティブエミッションテクノロジー研究センター 特任教授
研究課題名:「カーボネート結合に基づく高分子材料循環システムの構築」(JPMJCR22L1)
・公益財団法人 小笠原敏晶記念財団一般研究助成
研究課題名:「使用後に肥料に変換できる機能性高分子の開発」

詳細はこちら
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プレスリリース提供:PR TIMES

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