東北大学および株式会社GENODASとの共同研究成果に関するお知らせ
共立製薬株式会社

ニワトリ腸内での病原微生物の侵入防止に重要な新しい免疫のしくみを発見
共立製薬株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:高居 隆章、以下「当社」)は、東北大学大学院農学研究科(宮城県仙台市、以下「東北大学」)との「動物粘膜免疫学共同研究講座」において、東北大学および株式会社 GENODAS と共同で研究を進めています。本研究では、ファブリキウス嚢(※1)を経由せずに分化するニワトリの B 細胞(※2)を発見しました。さらに、このB細胞が、既知の経路で分化したB細胞と協調して働き、腸内で IgA(※3)が結合した細菌叢(さいきんそう)を適切に形成することで、病原微生物が腸管から体内へ侵入するのを防ぐ役割を担っていることを明らかにしました。
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本研究成果は、鳥類の免疫のしくみに関するこれまでの理解を大きく前進させる発見です。今後は、この知見を活用することで、IgA 結合細菌叢の形成を通じたニワトリの健康な成長を支える新たな免疫戦略の構築が期待されています。
また、腸管免疫を活用した家禽の疾病予防技術や、生産性向上につながる次世代の免疫制御技術の開発にも貢献する可能性があります。
本研究の背景や成果の詳細については、東北大学が2026年7月16日に公表したプレスリリース『鳥類の免疫学の常識を覆す発見―教科書にないB細胞の分化経路を解明―』をご紹介します。
【本研究のポイント】
・鳥類固有の免疫臓器であるファブリキウス嚢は免疫に関わるB細胞が特異的に分化する場として長らく知られていましたが、ファブリキウス嚢を経由しないB細胞が存在することを発見しました。
・ファブリキウス嚢で分化するB細胞と協調的に、ファブリキウス嚢を経由しないB細胞が機能する場として盲腸扁桃(※4)を特定しました。
・ファブリキウス嚢で分化するB細胞と、ファブリキウス嚢を経由しないB細胞が作り出す抗体(IgA)はともに、腸内細菌叢を適切に保つだけでなく、体内(主として肝臓)への細菌流入を阻止することで、肝臓での機能維持に貢献していることを実証しました。
【概要】
B細胞は、鳥類固有の免疫臓器であるファブリキウス嚢において初めて発見されました。従来の鳥類における免疫学では、すべてのB細胞はファブリキウス嚢で分化すると理解されていました。
東北大学大学院農学研究科の平川良太特任助教と野地智法教授らの研究グループは、同研究科内に動物粘膜免疫学共同研究講座を設置する共立製薬株式会社、および株式会社GENODASとの共同研究を通じて、ニワトリの腸管には、ファブリキウス嚢とは無関係にB細胞が分化する経路も発達していることを世界に先駆けて明らかにしました。さらに、このファブリキウス嚢を経由しないB細胞が、ファブリキウス嚢で分化するB細胞と協調的に、かつ成長後はさらに豊富に腸内に抗体(IgA)を産生することで、腸内細菌叢を適切に保つことを実証しました。また、その結果、腸管から全身組織(特に肝臓)への微生物流入が阻止され、肝臓の機能が健全に保たれていることを実証しました。
本研究成果は、日本時間2026年7月16日(米国東部時間7月15日) に米国科学アカデミー紀要PNAS (Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America) に掲載されました。
【詳細な説明】
研究の背景
消化管末端に位置するファブリキウス嚢(bursa of Fabricius)は、17世紀に初めて発見された鳥類に存在する臓器です。20世紀になり、抗体を産生する形質細胞のもととなる細胞が、鶏のファブリキウス嚢で初めて特定され、bursaの頭文字をとり、B細胞と命名されました。その後、哺乳類でも同様の細胞が発見され、その分化の場が骨髄(Bone marrow)であることから、B細胞という名称は動物種を問わず広く用いられています。しかし研究グループは、ファブリキウス嚢を経由するB細胞以外に、ファブリキウス嚢を経由しないB細胞が存在する可能性に着目していました。(図1)
今回の取り組み
東北大学大学院農学研究科の平川良太特任助教と野地智法教授らの研究グループは、東北大学大学院農学研究科内に動物粘膜免疫学共同研究講座を設置する共立製薬株式会社、および株式会社GENODASとの共同で、鳥類の体内でファブリキウス嚢を経由しないB細胞の存在とその役割を理解することを目的に研究を開始しました。
はじめに、孵化直後にファブリキウス嚢を外科的に切除したファブリキウス嚢欠損ニワトリを対象に、体内における抗体産生能を調べました。その結果、これまでの研究成果通り、ファブリキウス嚢欠損ニワトリの腸管の血液中の抗体量は検出限界以下になったものの、孵化後21日齢頃から、腸管では抗体IgAを産生する形質細胞が検出され、50日齢になると、その数が健全なニワトリと同等になることを突き止めました。さらには、形質細胞が分泌するIgAは、ファブリキウス嚢欠損ニワトリの腸管腔内にも十分検出され、その量は、50日齢になると、健全なニワトリとの間に差は認められないことが示されました。
次に、ファブリキウス嚢非存在下でB細胞を生み出し、IgAを産生する形質細胞を腸管に供給している臓器を探索しました。ニワトリが有する、様々な免疫臓器に存在するB細胞の特徴を調べた結果、これまで、ファブリキウス嚢にしか存在しないと考えられていた未熟なB細胞が、腸管に発達する代表的な免疫臓器である盲腸扁桃の濾胞と呼ばれる構造内に多数存在することを発見しました(図2)。さらに、それらの細胞は骨髄に由来し、ファブリキウス嚢を経由せず、直接、盲腸扁桃に移動することを明らかにしました。これらの発見は、ニワトリにおいてファブリキウス嚢とは独立したB細胞分化経路が存在することを示すものでした。
さらに、ファブリキウス嚢を経由するB細胞に加え、ファブリキウス嚢を経由しないB細胞の盲腸扁桃への移動を阻害したニワトリでは、腸管内でのIgA産生が消失し、腸内細菌叢が大きく乱れることが示されました。その結果、腸管内の細菌、とりわけStreptococcus alactolyticusを代表とする病原性微生物の体内への移行が促進され、主として肝臓の炎症や代謝異常が引き起こされました(図3)。これらの結果から、ファブリキウス嚢を経由しないB 細胞は、ファブリキウス嚢を経由するB細胞と協調的に働き腸管で適切なIgA結合細菌叢を形成し、病原微生物の体内侵入を防ぐことで、腸管から肝臓をつなぐ恒常性を維持していることが明らかとなりました(図4)。
今後の展開
本研究では、ファブリキウス嚢を経由しないニワトリのB細胞を新たに特定し、その機能として、腸管で適切なIgA結合細菌叢を形成することで、腸管から病原微生物の体内侵入を防御していることを示しました。本研究で得られた基盤的知見をもとに、今後、IgA結合細菌叢形成を介したニワトリの健全な成長・発達を促進する新たな免疫戦略の構築につながることが期待されます。さらに、腸管免疫を標的とした家禽の疾病予防技術の開発や、生産性向上に資する次世代型免疫制御技術の創出に貢献する可能性があります。
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図1. ニワトリの盲腸扁桃に存在するファブリキウス嚢を経由しないB細胞と、従来から知られていたファブリキウス嚢を経由するB細胞
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図2. ニワトリ盲腸扁桃の形態形成と濾胞内に豊富に存在する未熟なB細胞
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図3. IgA欠損ニワトリで認められる肝臓内での機能異常とS. alactolyticusを代表とする病原性微生物侵入
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図4. ファブリキウス嚢を経由するB細胞とファブリキウス嚢を経由しないB細胞が協調的に形成するIgA結合細菌叢とその機能
【謝辞】
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(JP22H00393、JP21K19176、JP23K18073、JP23K19328、JP25K18344)、科学技術振興機構(JST)次世代研究者挑戦的研究プログラム(JPMJSP2114)、生物系特定産業技術研究支援センター オープンイノベーション研究・実用化推進事業、一般財団法人旗影会2023, 2024, 2025、公益財団法人伊藤記念財団2025の支援を受けて行われました。本論文は「東北大学2026年度オープンアクセス推進のためのAPC支援事業」の支援を受けOpen Accessとなっています。
【用語説明】
※1:ファブリキウス嚢
鳥類に特有の免疫臓器で、消化管の末端付近に位置する。従来、鳥類ではB細胞がファブリキウス嚢で成熟すると考えられてきた。ファブリキウス嚢は若齢期に発達し、加齢に伴って萎縮することが知られている。
※2:B細胞
リンパ球の一種。一つの成熟B細胞は、抗原(異物)を特異的に認識する1種類の受容体(B細胞受容体)のみを発現している。B細胞から分化した形質細胞が分泌する抗体が有する抗原特異性は、分化前のB細胞が発現するB細胞受容体の抗原特異性と同じである。
※3:IgA
鳥類や哺乳類の粘膜組織(例:腸管、呼吸器)で分泌される主要な抗体アイソタイプ。多くは、微生物が発現する特定の抗原に認識することができ、結合した微生物を排除することに加え、定着を促すことも知られている。
※4:盲腸扁桃
腸管の一部である盲腸基部に発達する免疫臓器。鳥類の腸管に発達する重要な免疫組織の一つであり、B細胞やT細胞などのリンパ球が多数集積する。腸内微生物に対する免疫応答に関与する。
【論文情報】
タイトル:Bursa of Fabricius-independent B cells establish an IgA-mediated intestinal barrier that safeguards gut-liver homeostasis
著者: Ryota Hirakawa, Motoshi Hisamatsu, Sayoko Maekawa, Eiki Asai, Miyuko Ohta, Ayumi Matsuo, Kunihiro Okano, Toh Miyazaki, Motofusa Akiyama, Masaaki Toyomizu, Jahidul Islam, Mutsumi Furukawa, Tomonori Nochi*
東北大学:平川良太、久松基史、前川紗佳子、浅井映輝、太田実友子、豊水正昭、Jahidul Islam、古川睦実、野地智法*
共立製薬株式会社:宮崎杜夫、秋山元英
株式会社GENODAS:松尾歩、岡野邦宏
*責任著者:東北大学大学院農学研究科 教授 野地智法
掲載誌:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)
DOI:10.1073/pnas.2605569123
URL:
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2605569123
【共立製薬株式会社について】
1955年創業。「動物と人の進む道を創る」をミッションに掲げ、動物医療のリーディングカンパニーとして、 犬・猫用医薬品や畜水産動物用医薬品などの開発、製造、販売、輸出入をしています。
名称 :共立製薬株式会社
代表者 :代表取締役社長 高居 隆章
会社設立:1955年5月
資本金 :5,500万円
従業員数:732人(2026年5月末時点)
事業内容:動物用医薬品などの開発・製造・販売・輸出入
URL :
https://www.kyoritsuseiyaku.co.jp/
【東北大学大学院農学研究科について】
東北大学の5番目の学部として1947年に農学部が発足。その後、1953年に大学院農学研究科が発足。
東北大学の建学の理念「研究第一(Research First)」「門戸開放(Open Door)」「実学尊重(Practice-oriented Research)」に基づき、人類が生きていくための「食料(Food)」「健康(Health)」「環境(Environment)」を課題に取り組む生物の産業科学に関する教育と研究を行っています。
名称:国立大学法人東北大学大学院農学研究科
代表者:研究科長 仲川 清隆
発足:1947年4月
URL:
https://www.agri.tohoku.ac.jp/jp/
【株式会社GENODASについて】
独自の技術であらゆる生物の「DNAの違い」を収集・分析し、DNA情報を用いたサービスを立案・企画することで新たなイノベーションの創出に貢献しています。
名称 :株式会社 GENODAS(ジェノダス)
代表者 :代表取締役社長 松尾 幸子
会社設立:2021年12月
資本金 :250万円
事業内容:DNA配列情報の取得・分析技術の研究開発
URL :
https://genodas.co.jp/プレスリリース提供:PR TIMES




記事提供:PRTimes