「幻のバラ」サンショウバラの香りを科学的に解明 ~花を傷つけず、自然な香りを再現~
日本メナード化粧品 総合研究所

日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15、代表取締役社長:野々川 純一)は、富士・箱根地方の限られた環境にのみ自生する希少な日本固有種「サンショウバラ」に着目し、その生花から放たれる自然な香りを特徴づける香気成分の構成を明らかにしました。
[画像1:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/48666/121/48666-121-00ef2e0c7fba9262857ed9b9455b7061-3900x1776.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
メナードでは、1986年より生きた香りを再現する「ナチュラルスペース法」の研究を進め、多種多様な花の香りを化粧品やフレグランス製品へ応用してきました。花を摘み取って香りを抽出する方法とは異なり、咲いた花の香りをそのままとらえることができるだけでなく、花を傷つけないため、希少な植物も対象とすることができます。今回この知見を活かし「サンショウバラ」の香りを新たに解明しました。
今回研究対象としたサンショウバラ(Rosa hirtula)は、富士・箱根地方の限られた環境にのみ自生する日本固有種であり、環境省レッドリストで「準絶滅危惧」に分類されています。その希少性と美しさから「日本にのみ咲く幻のバラ」とも呼ばれていますが、その香りについて詳細に解析した研究はこれまでほとんどありませんでした。
そこで本研究では、サンショウバラを自然に近い環境で管理・栽培している赤城自然園(群馬県渋川市)の協力のもと、調査を実施しました。咲いた花から、微香ながらも上品で奥行きのあるフローラル・パウダリー調の香りを確認し、この香りを科学的に解明するために、希少な花を傷つけない方法で自然な香りを採取しました。採取した香りを分析機器で分離しながら、人の嗅覚による官能評価により各成分が香り全体に与える影響力(寄与度)を解析することで、サンショウバラの香りを特徴づける香気成分の構成を明らかにしました。
その結果、香気成分全体の含有量としてはわずか10%にとどまる芳香族類が、香りの印象に大きく寄与していることがわかりました。これらの成分が複雑に調和することで、サンショウバラならではの香りが形成されていることが示唆されました。
今回の分析結果から得られた知見を活用して「サンショウバラ」の再現香料を調香しました。今後は、この希少で魅力的な香りを活かした化粧品やフレグランス製品の開発を目指します。なお、本研究成果は、2026年8月24日、25日に東京都で開催された第39回におい・かおり環境学会で発表しました。
<参考資料>
1.サンショウバラの香りの採取
サンショウバラ(図1)は、バラ科バラ属の落葉小高木であり、富士・箱根地方の限られた環境にのみ自生する日本の固有種です。環境省のレッドリストで「準絶滅危惧」に分類されている非常に希少な植物です。花は1~2日で散ってしまうため、その希少性と美しさから「日本にのみ咲く幻のバラ」と称されています。
[画像2:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/48666/121/48666-121-ba7455b4e35a6e26c6a415ea3f9363e5-1554x1325.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図1 サンショウバラ
今回、サンショウバラを自然に近い環境で管理・栽培している「赤城自然園」の協力を得て調査を行いました。咲いた花から、上品で奥行きのあるフローラル・パウダリー調の香りを確認しました。この香りを科学的に解明するため、希少なサンショウバラの保全に配慮し、花を摘み取ることなく生きたままの香りを採取しました(図2)。香りを吸着する特殊な捕集器具と、香りを逃さない特殊なフィルムを用いることで「生花から放たれる自然な香り」を採取することができました。
[画像3:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/48666/121/48666-121-16c9062b6d9067497411ab2010e968dc-3900x1316.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図2 香りを採取する様子
2.人の嗅覚を組み合わせた香気寄与成分の探索(GC-O分析)
採取した香りを詳細に分析するため、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)を行い、95成分を同定・推定しました。さらに、分析機器で成分を分離しながら、一つひとつを「人の嗅覚」でリアルタイム評価する「GC-O分析」(図3)を実施し、25成分の香りを確認できました。その際、「香りを段階的に希釈していき、どの希釈倍数まで匂いを感じられるか」を数値化することで、各成分の香り全体への影響力(寄与度 = FD factor)を評価しました。
[画像4:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/48666/121/48666-121-3d7b1cfcba77b3561f00f7df9b72b9e6-1378x1058.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図3 GC-O分析の様子
分析した結果、採取した香りを「脂肪族類」、「芳香族類」、「テルペノイド類」で分類すると、脂肪族類:89%、芳香族類:10%、テルペノイド類:1%の割合で構成されていました(図4)。このうち全体に占める割合が10%にとどまる「芳香族類」には、寄与度が極めて高い成分が含まれており、なかでもスパイシーな香りのオイゲノール(eugenol)、甘くパウダリーなバニリン(vanillin)やクマリン(coumarin)、バラの香りの主要成分であるフェニルエチルアルコール(2-phenylethyl alcohol)の寄与度が高く、サンショウバラ特有の香りを構成する鍵となっていることがわかりました。
[画像5:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/48666/121/48666-121-99048e6bdd2d822ffcc89577c7f31261-3887x2329.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図4 サンショウバラの香りの分析結果
3.サンショウバラ特有の香り
サンショウバラでは、「芳香族類」に含まれる成分が、香り全体を印象付けています。これに対し、世界的に香りが産業利用される代表的なバラであるダマスク種やセンチフォリア種、日本原産バラのハマナスでは、テルペノイド類の一種であるテルペン系アルコール(ゲラニオールやシトロネロール)を多く含むことで、華やかなフローラル調の香りを特徴づけています。また、ノイバラなどの日本原産バラの中には、テルペン系アルコールを含まず、オイゲノールを多く含むことでスパイシーな香りを呈する種もみられます。サンショウバラはノイバラと同様にオイゲノールを含みつつ、さらにバニリンやクマリンが香り全体に重要な役割を果たしています。これらの成分が複雑に絡み合うことで、他のバラと異なる特有の上品で奥行きのあるフローラル・パウダリー調の香りを形成していることが示唆されました。
今回の香気成分の解析データに基づき、「サンショウバラ」の生花が持つ自然な香りの再現香料を開発しました。今後は、この希少で魅力的な香りを応用した、新たな化粧品やフレグランス製品の開発を目指します。
赤城自然園
「赤城自然園」(群馬県渋川市)は、「人間と自然の共生」をテーマとし、日本の豊かな原風景を次世代へ引き継ぐ森です。
同園の最大の特徴は、植物を人工的に管理するのではなく、森の生態系を尊重し「本来の自然の姿」に近い環境を維持している点にあります。希少種サンショウバラも、温室や花壇ではなく、豊かな森の中でたくましく咲いています。
本研究では、同園の真摯な自然保護の取り組みのもと、自然に近い環境下で咲く花から香りを採取することができました。
[画像6:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/48666/121/48666-121-fa12a1e8f0b61d2e9d7b39ab1a5ff2ed-1351x900.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
プレスリリース提供:PR TIMES





記事提供:PRTimes