木製会議テーブルに触れると脳がリラックス―実際の会議室で前頭前野活動の鎮静化と心理状態の改善を検証―
国立大学法人千葉大学

千葉大学国際高等研究基幹/環境健康フィールド科学センターの池井晴美准教授らの研究チームは、会議室のマカバ材木製会議テーブルへの手掌接触が、高度な意思決定などに関わる前頭前野活動(注1)の鎮静化と主観的快適感、リラックス感をもたらすことを初めて明らかにしました。実際のオフィス会議室に設置された木製会議テーブルを用いた本研究は、木材による快適な職場環境づくりやウェルビーイング向上に資する基礎的知見を提供します。
本研究成果は、2026年9月17日に、学術誌Journal of Wood Scienceで公開されました。
(論文はこちら:10.1186/s10086-026-02305-5)
■研究の背景
木材が人に与えるリラックス効果については、近年、温度、湿度、照度などの環境条件を制御した実験室内実験(注2)におけるエビデンスの蓄積が進み、木材への接触による副交感神経活動の上昇や前頭前野活動の鎮静化など、生理的リラックス効果が報告されています。しかし、実際に使用されているオフィス会議室で行う「現場実験」の報告はこれまでありませんでした。
[画像1:
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図1 会議室のマカバ材テーブル机と手掌接触風景
■研究成果のポイント
本研究では、健康な男子大学生・大学院生25名を対象に、オフィス内でマカバ材の会議テーブルに触れた際(図1)の前頭前野活動を近赤外分光法(注3)で測定し、一般的に事務机として使用されるメラミン化粧板テーブル(対照机)と比較しました。
1.無作為化クロスオーバー試験(注4)とし、全員が目を閉じた状態にて、2つの異なるテーブルに接触しました。
2.前額部に弱い近赤外光を照射し、脳活動に伴って変化する血液中の酸素と結合したヘモグロビン濃度を1秒ごとに測定し、左右の前頭前野活動の変化を評価しました。
その結果、木製テーブルでは、左右前頭前野活動が有意に鎮静化し(図2, P値(注5)0.05未満)、主観的な快適感やリラックス感も高まり、生理的・心理的リラックス効果が解明されました。
[画像2:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/15177/1235/15177-1235-049f8a1ca872e8e976d985f45b9a1cfb-2529x1241.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図2 木製机への手掌接触が左右前頭前野活動にもたらす鎮静効果
■今後の展望(研究者コメント)
木材が人にもたらすリラックス効果については、これまで経験的に知られてきました。実際の会議室での検証を今回初めて行い、その効果を確認することができました。今後、異なる樹種、表面仕上げ、接触方法等についての検証や、女性や異なる年齢層での検証、個人差に関する検討も行い、実際のオフィス環境における快適性向上や人々のウェルビーイング創出につながる知見を提供したいと考えています。
■用語解説
注1)前頭前野活動:前頭前野は、大脳の最前部(前額部の内側)に位置し、思考、判断、注意、感情の調節などに関わる領域である。本研究では、近赤外分光法を用いて左右前頭前野における酸素と結合したヘモグロビンの濃度変化を測定し、その増減を前頭前野活動の指標とした。
注2)実験室内実験: 温度、湿度、照度などの環境条件を制御した人工気候室等で行う実験である。外部条件の影響を抑え、反応を精密に検討できる一方、実際のオフィス環境とは異なるため、本研究は、実際に使用されているオフィス会議室で行う「現場実験」として実施した。
注3)近赤外分光法:脳波計測が脳の「電気信号」を測るのに対し、本計測は「光」を用いた。前額部に弱い近赤外光を照射し、脳活動に伴って変化する血液中の酸素と結合したヘモグロビンの濃度を測定する。本研究では、その変化を1秒ごとに測定し、左右前頭前野活動の変化を評価した。
注4)無作為化クロスオーバー試験:同じ参加者が複数の条件を体験し、その反応を同一人物内で比較する研究方法で、参加者間の個人差の影響を小さくできる利点がある。本研究では全員が2つの異なるテーブルに触れ、実施順はランダムに決定した。
注5)P値(有意確率):統計分析において「その結果が単なる偶然によって生じた確率」を示します。本研究では0.05(5%)未満を「統計的に有意」とし、偶然ではなく明確な差があるとの判断基準とした。
■論文情報
タイトル:Physiological and Psychological Relaxation Effects from Palmar Contact with a Wooden Conference Table: A Randomized Crossover Study in an Office Conference Room
著者:Harumi Ikei, Hyunju Jo, and Yoshifumi Miyazaki
雑誌名:Journal of Wood Science
DOI:10.1186/s10086-026-02305-5
■研究プロジェクトについて
本研究は、東京木材問屋協同組合の受託研究「木質化された施設における視覚・触覚・嗅覚刺激がもたらす生理的効果」として実施しました。
プレスリリース提供:PR TIMES



記事提供:PRTimes