大腸カプセル内視鏡の有効性・安全性・受容性に関する全国多施設共同前向き研究の解析結果
学校法人藤田学園
藤田医科大学(愛知県豊明市)医学部先端光学診療学の大宮直木教授と堀田直樹客員准教授らの研究グループ(ColoCam-J studyグループ)は、全国44施設1,006人の患者のデータを通して、大腸カプセル内視鏡※1の有効性・安全性・受容性を解析しました。大腸カプセル内視鏡は大腸内視鏡と比べて苦痛や羞恥心がほとんどない検査であり、腸管洗浄が適切であれば大腸腫瘍・ポリープの検出や潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患における重症度や炎症部位の確認に有用であり、またリピーター希望が多い検査であることを報告しました。
これらの成果により、今後、通常の大腸内視鏡の施行が困難な被験者に対し、より適切に大腸カプセル内視鏡を実施可能になり、大腸検査の受診率向上に貢献することが期待されます。
本研究成果は、アメリカ消化器内視鏡学会の学術ジャーナル「Gastrointestinal Endoscopy」(2025年5月号)で発表されました。
論文URL :
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S001651072403685X?via%3Dihub
<研究成果のポイント>
大腸カプセル内視鏡で大腸全体を観察できた割合86.1%、腸内の洗浄度が「適切」と評価された割合66.5%、大腸ポリープや腫瘍を発見する感度(大腸内視鏡と比較)はポリープの大きさが6mm以上の場合92%、10mm以上の場合89%、有害事象はカプセルの滞留が2例(0.2%)あった。以上の結果から、大腸カプセル内視鏡が比較的高い精度と安全性を持つことが示された。
次回の大腸検査として大腸カプセル内視鏡を希望した患者の割合は63%と半数を超えた。体への負担や検査時の不快感の軽減が、患者満足度の向上に寄与している可能性がある。
<背 景>
海外では様々な腸管洗浄法での大腸カプセル内視鏡の成績が報告されているが、体格や腸管洗浄剤の種類が異なる日本での大規模な研究はこれまで施行されていなかった。本研究は海外含め最大数の患者を対象にし、大腸カプセル内視鏡の有効かつ安全な実施方法、有害事象や被験者の受容性を明らかにした。
<研究手法・研究成果>
全国44施設で大腸カプセル内視鏡を施行した1,006人の患者の臨床データ、カプセル内視鏡所見、その後に施行した大腸内視鏡の所見を、前向きに収集し、オンラインで浜松医科大学臨床研究管理センターのサーバーに保存し、解析。
大腸全体を観察できたのは86.1%で、多変量解析で有意な全大腸観察成否の因子は(63歳未満、炎症性腸疾患)、前日の腸管洗浄剤あり、当日の腸管洗浄剤1.8L以上、ブースター用ヒマシ油30mL以上内服であることを証明。
内視鏡的洗浄度は適切が66.5%。多変量解析で有意な因子は慢性便秘症、前日の腸管洗浄剤あり、前日の下剤あり、当日の腸管洗浄剤1.8L以上であることを証明。
大腸内視鏡所見をゴールドスタンダードとした場合の被験者の大腸ポリープ・腫瘍の大腸カプセル内視鏡の感度は6mm以上で92%、10mm以上で89%であり、多変量解析で有意な因子は上行結腸の不適切な洗浄度、横行結腸の6mm以上のポリープ・腫瘍、左側結腸の6mm以上のポリープ・腫瘍であることを証明。
有害事象は滞留が2例(0.2%:クローン病にて内視鏡的バルーン拡張術後回収、S状結腸進行癌にて外科切除)あったことを報告。
次回の大腸検査として大腸カプセル内視鏡の希望者の割合は63%であった。
<今後の展開>
腸管洗浄が適切に行われれば、大腸カプセル内視鏡は大腸腫瘍・ポリープの検出や潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患における重症度や炎症部位の確認に有用であることを示し、また日本人における大腸カプセル内視鏡の標準仕様のデータを提供した。今後、適切に大腸カプセル内視鏡を用いることで、大腸検査の受診率向上に貢献することが期待される。
<用語解説>
※1 大腸カプセル内視鏡:
従来の大腸検査である大腸内視鏡や注腸造影、大腸CTはすべて、肛門から器具を挿入する検査であったが、大腸カプセル内視鏡は右記の写真のように大きさ32.3mm×11.6mm、重さ2.9gの両端にカメラがついたカプセル内視鏡で、飲み込むだけで検査ができるのが特徴である。
<文献情報>
●論文タイトル
Nationwide multicenter prospective study on the usefulness, safety, and acceptability of colon capsule endoscopy in Japan
●著者
堀田 直樹1、大宮 直木2, 平賀 寛人3,ら
●所属
1 増子記念病院 内科、藤田医科大学医学部 先端光学診療学講座
2 藤田医科大学医学部 先端光学診療学
3 弘前大学大学院医学研究科 消化器血液免疫内科学講座
●DOI
10.1016/j.gie.2024.11.004
記事提供:Digital PR Platform