技術・開発 – とれまがニュース

経済や政治がわかる新聞社や通信社の時事ニュースなど配信

とれまが – 個人ブログがポータルサイトに!みんなでつくるポータルサイト。経済や政治がわかる新聞社や通信社の時事ニュースなど配信
RSS
製品 サービス 企業動向 業績報告 調査・報告 技術・開発 告知・募集 人事 その他
とれまが >  ニュース  > リリースニュース  > 技術・開発

【横浜市立大学】急性期病院への重症下肢虚血患者の入院数・治療件数・院内死亡率には地域差があることを明らかに

横浜市立大学

【横浜市立大学】急性期病院への重症下肢虚血患utf-8

―地域差を考慮した管理の標準化が求められる―

 横浜市立大学附属病院 次世代臨床研究センターの仁田 学講師(同循環器内科医師)と、同大学院データサイエンス研究科の清水 沙友里講師らの研究グループは、診断群分類(DPC)データベース*1を利用し、2018年4月から2020年3月までの2年間に国内急性期病院に入院し、いずれかの侵襲的治療(血管内治療*2、下肢動脈バイパス手術*3、下肢切断術)を受けた重症下肢虚血患者*4を対象とした分析を通じて、人口あたりの急性期病院への入院数や侵襲的治療件数、あるいは院内死亡の発生状況には地域差が存在することを明らかにしました。
 本研究成果は、「Journal of Atherosclerosis and Thrombosis」にオンライン掲載されました(2025年6月27日)。

研究成果のポイント


2018年4月から2年間の全国データを分析し、都道府県ごとの重症下肢虚血患者の急性期病院への人口あたり入院件数や侵襲的治療件数、院内死亡割合における地域差を初めて明らかにした。
人口100万人あたりの重症下肢虚血患者における急性期病院への年間総入院件数は、最多が九州地方(112.1人)で、最少が関東地方(59.9人)であった。
急性期病院における院内死亡割合は全体で7.0%であり、最多は沖縄(10.9%)で最小は中国・四国地方(5.7%)であった。
重症下肢虚血患者の予後や生活の質改善のため、地域差を考慮した診療標準化を進めることの重要性が強調される。




[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1706/112821/300_255_20250627093406685de6feabb6d.jpg









図1. 2018年4月から2020年3月に国内急性期病院へ入院した下肢動脈疾患患者全体における重症下肢虚血患者


研究背景
 動脈硬化などを背景に、下肢動脈に狭窄・閉塞が生じる疾患は総称して下肢閉塞性動脈疾患と呼ばれます。中でも高度な下肢虚血により下肢の安静時疼痛や潰瘍、壊疽を生じる病態は重症下肢虚血と呼ばれ、下肢切断により生活の質を著しく低下させるだけでなく、死亡のリスクを高めます [1]。下肢切断の回避や、生命予後・生活の質改善を目的としたエビデンスに基づく血管内治療や下肢動脈バイパス手術といった血行再建治療が第一選択として行われています。そして、診療指針の中でこれら治療の標準化が求められています [2]。しかし、国内では重症下肢虚血の発生頻度や治療方針の地域差により、診療の標準化が十分に実施されていない可能性があり、その結果、患者の院内予後にも地域差を生じている可能性が以前から懸念されていました。特に、重症下肢虚血患者は治療が多岐にわたる診療科(循環器内科、放射線科、血管外科、整形外科、形成外科、皮膚科など)で実施されており、データの集積がなされてこなかったため、これらの地域差に関する包括的な評価はこれまで困難とされてきました。そこで本研究グループでは、重症下肢虚血患者の急性期病院への入院件数や侵襲的治療件数、院内死亡における地域差の実態に迫るために、国内急性期病院の大部分を網羅するデータベースを用いて分析を実施しました。

研究内容

 地域差を分析するにあたり国内を7つの地域に分割しました(北海道・東北、関東、中部、関西、中国・四国、九州、沖縄)。DPCデータベースを利用して2018年4月から2020年3月までの2年間に国内急性期病院へ入院し、いずれかの侵襲的治療(血管内治療、下肢動脈バイパス手術、あるいは下肢切断術のいずれか1つ以上)を受けた重症下肢虚血患者について、地域ごとに人口あたりの入院件数、侵襲的治療数、そして院内死亡の発生割合について比較・解析を行いました。対象期間内にのべ69,309件の下肢閉塞性動脈疾患患者による急性期病院への入院が同定され、その内のべ19,699件が重症下肢虚血患者による入院でした(図1)。
 人口100万人あたりの重症下肢虚血患者における急性期病院への年間の総入院件数は、九州地方(112.1人)が最多で、沖縄(104.6人)が次いで多く、最も少ないのは関東地方(59.9人)でした(図2)。


[画像2]https://digitalpr.jp/simg/1706/112821/400_365_20250627095131685deb131e7b7.jpg

図2. 人口100万人あたりの重症下肢虚血患者における急性期病院への年間のべ入院件数


 血管内治療について人口100万人あたり最多は沖縄(81.9人)、最小が関東地方(45.6人)、下肢動脈バイパス手術は最多が九州地方(16.7人)、最小が関西地方(4.8人)、下肢切断については最多が九州地方(34.6人)、最小が関東地方(16.4人)と、地域により人口あたりの入院件数のみでなく治療件数も異なることが示されました(図3)


[画像3]https://digitalpr.jp/simg/1706/112821/600_274_20250627095852685decccbae2d.jpg


図3. 人口100万人あたりの重症下肢虚血患者に対する侵襲的治療の年間のべ件数における地域差

 急性期病院における院内死亡割合は全体で7.0%、最多は沖縄(10.9%)で、次いで関東地方(7.9%)、最小は中国・四国地方(5.7%)と地域差があることが示唆されました(図4)。


[画像4]https://digitalpr.jp/simg/1706/112821/600_376_20250627100851685def23910fc.jpg


図4. 重症下肢虚血患者の院内死亡割合における地域差

今後の展開
 本研究では、これまで診療科を超えて包括的な評価が困難であった重症下肢虚血患者について、人口あたりの急性期病院への入院件数や侵襲的治療件数、院内死亡割合における地域差について国内全体データとして初めて提示しました。
 人口あたりの急性期病院への入院件数は九州地方、沖縄、中国・四国地方の順に多い結果でした。以前の沖縄は長寿県として知られていましたが、2000年代初頭から、食習慣の変化や運動量の減少といったライフスタイルの変化により、健康状態の悪化から生活習慣病やそれに伴う心血管合併症の増加を招き、”沖縄クライシス”として知られていました [3]。今回の研究結果は、この”沖縄クライシス”を追認する結果となりました。一方で、沖縄以上に九州地方は人口あたりの急性期病院への入院件数が多く、論文内では、”九州クライシス”として紹介しました。これらの地域は人口あたりの透析患者数が都道府県ランキングで上位を占めています [4]。
 一般に透析患者では動脈硬化の進展が速いことが知られており、重症下肢虚血発症の危険因子であることが知られていて [5]、これらの地域での重症下肢虚血による入院件数の多さと関連している可能性があります。しかし、透析患者数以外にも都道府県間で人口構成、人口動態、ライフスタイルパターン、全身の健康リスク、医療インフラなどには違いがあり、かつ本研究ではこれらの違いを考慮していないため、結果の解釈には十分な注意が必要です。
 本研究結果から重症下肢虚血患者に対する診療の標準化を推し進め、患者予後や生活の質の改善を図るには、今回明らかとなった地域差を十分に考慮することの重要性が確認されました。

 なお、本研究は横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻課程でデータサイエンス的手法を学んだ後、同学附属病院次世代臨床研究センター(Y-NEXT)での勤務を通じて臨床研究に対する造詣を深めた循環器内科医師(仁田)が、重症下肢虚血の医療現場最前線で課題意識を持つ循環器内科医師(岩田)やヘルスデータサイエンス専攻教員らと協力し、医療系ビッグデータへアプローチし、データ駆動型臨床研究により医療現場の疑問解決に貢献した画期的な研究成果です。

論文情報
タイトル: Regional Disparities in Incidence, Therapeutic Approaches, and In-hospital Mortality of Critical Limb Ischemia in Japan
著者: 仁田 学*、岩田 究、金子 惇、伏見 清秀、植田 真一郎、清水 沙友里(* 責任著者)
掲載雑誌: Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
DOI: http://doi.org/10.5551/jat.65621

用語説明
*1 診断群分類(DPC)データベース:DPCはDiagnosis Procedure Combinationの略。全国の急性期医療機関から収集された入院患者情報のデータベースで、年間700万を超える症例が登録され、診療報酬明細データとともに、診断や治療方法、入院期間、退院状況など、さまざまな情報が含まれる。
*2 血管内治療:下肢動脈の狭窄や閉塞部位に対して、バルーン(風船)やステント(金属製の網目)を使って血管を内側から拡張し、下肢動脈血流の改善を図る治療(カテーテル治療)。
*3 下肢動脈バイパス手術: 閉塞している血管を迂回して新しい血管(代用血管;自家静脈や人工血管)を移植することで、末梢下肢血流の改善を図る外科的治療。
*4 重症下肢虚血: 動脈硬化などを背景に下肢動脈に狭窄・閉塞を生じる下肢閉塞性動脈疾患のうち、高度な下肢虚血により下肢の安静時疼痛や潰瘍、壊疽を生じる病態

参考文献


Norgren L, Hiatt WR, Dormandy JA, Nehler MR, Harris KA, Fowkes FG, et al. Inter-Society Consensus for the Management of Peripheral Arterial Disease (TASC II). Eur J Vasc Endovasc Surg 2007; 33 Suppl 1: S1-75, doi:10.1016/j.ejvs.2006.09.024.
JCS/JSVS 2022 Guideline on the Management of Peripheral Arterial Disease. In; 2022.
Miyagi S, Iwama N, Kawabata T, Hasegawa K: Longevity and diet in Okinawa, Japan: the past, present and future. Asia Pac J Public Health, 2003; 15 Suppl: S3-9
Hanafusa N, Abe M, Joki N, Ogawa T, Kanda E, Kikuchi K, et al. Annual dialysis data report 2019, JSDT Renal Data Registry. Renal Replacement Therapy, 2023; 9: 47
Morooka H, Tanaka A, Inaguma D, et al. Peripheral artery disease at the time of dialysis initiation and mortality: a prospective observa- tional multicenter study. BMJ Open 2020; 10: e042315.



【横浜市立大学】急性期病院への重症下肢虚血患utf-8【横浜市立大学】急性期病院への重症下肢虚血患utf-8【横浜市立大学】急性期病院への重症下肢虚血患utf-8

記事提供:Digital PR Platform

記事引用:アメーバ?  ブックマーク: Google Bookmarks  Yahoo!ブックマークに登録  livedoor clip  Hatena ブックマーク  Buzzurl ブックマーク

ニュース画像

一覧

関連ニュース

とれまがマネー

とれまがマネー

IR動画

一覧

とれまがニュースは、時事通信社、カブ知恵、Digital PR Platform、BUSINESS WIRE、エコノミックニュース、News2u、@Press、ABNNewswire、済龍、DreamNews、NEWS ON、PR TIMES、LEAFHIDEから情報提供を受けています。当サイトに掲載されている情報は必ずしも完全なものではなく、正確性・安全性を保証するものではありません。当社は、当サイトにて配信される情報を用いて行う判断の一切について責任を負うものではありません。

とれまがニュースは以下の配信元にご支援頂いております。

時事通信社 IR Times カブ知恵 Digital PR Platform Business Wire エコノミックニュース News2u

@Press ABN Newswire 済龍 DreamNews NEWS ON PR TIMES LEAF HIDE

Copyright (C) 2006-2025 sitescope co.,ltd. All Rights Reserved.