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パーキンソン病における体重減少の謎を解明:体脂肪の減少と、エネルギー代謝のシフトが関与

学校法人藤田学園

藤田医科大学 脳神経内科学 水谷泰彰准教授、東篤宏助教(現神戸大学)、渡辺宏久教授、内分泌・代謝・糖尿病内科学の鈴木敦詞教授、清野祐介准教授、医用データ科学の吉本潤一郎教授、オープンファシリティセンターの前田康博准教授らの研究グループは、パーキンソン病における体重減少の原因を解明するため、エネルギー代謝異常に着目し、体組成と血中代謝物のデータを多面的に解析しました。この結果、パーキンソン病患者では体重減少の原因として体脂肪の減少が関与することを明らかにしました。また、糖代謝の低下と脂質代謝の亢進、すなわちエネルギー代謝のシフトを認めることが明らかになりました。この発見は、パーキンソン病におけるエネルギー代謝の理解を深め、今後の栄養介入や代謝に着目した治療戦略の構築に寄与することが期待されます。
本研究成果は、英国医学ジャーナル「Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry」オンライン版で2025年11月30日に公開されました。
論文URL : https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41320476/



研究成果のポイント

生体電気インピーダンス法※1を用いた体組成分析により、パーキンソン病の患者では、筋肉量は保たれ、体脂肪が選択的に減少し、これが体重減少と関わることを確認。
血中代謝物の解析により、糖代謝の低下と、脂質およびアミノ酸代謝の亢進が同時に進む特徴的な「エネルギーシフト」を世界に先駆けて発見。
ボディマス指数(BMI)が低い(=やせた状態の)患者ほどケトン体※2が上昇することも示された。



背景
パーキンソン病では体重減少が高頻度にみられることが知られています。しかし、その背景にある身体組成の変化やエネルギー代謝の異常については十分に解明されていませんでした。これまでの研究により、パーキンソン病ではミトコンドリア(細胞のエネルギー産生を担う小器官)の機能低下や糖代謝の異常が報告されており、全身のエネルギー利用が影響を受ける可能性が示されています。しかし、こうした代謝異常が体重減少とどのように関連するのかは明らかではありませんでした。
そこで本研究では、パーキンソン病患者の体組成と血液中の代謝物を包括的に解析し、体重減少の背景にあるエネルギー代謝の特徴を明らかにすることを目的としました。


研究手法・研究成果
本研究では、藤田医科大学病院に通院するパーキンソン病の患者91名と健常対照者47名を対象として、体組成と血液中のエネルギー代謝に関連する物質を総合的に検討しました。まず体組成について、生体電気インピーダンス法による体組成測定を用いて、身長、体重、ボディマス指数(体格の指標:BMI)、体脂肪量、筋肉量などを評価しました。その結果、パーキンソン病の患者では体重およびボディマス指数(BMI)が低下しており、筋肉量は健常者と同程度に保たれている一方で、体脂肪量のみが選択的に減少していることが明らかになりました。これは、パーキンソン病における体重減少は、脂肪組織の減少によって引き起こされる特徴的な変化であることを示しています。
次に、血液中の代謝物解析として、質量分析を用いて、解糖系およびクエン酸回路(TCAサイクル)※3に関連する代謝物、さらには脂質やアミノ酸代謝に由来する代謝物など、計17種類の代謝物を測定しました。その結果、パーキンソン病の患者では、糖代謝の低下を反映する乳酸、乳酸/ピルビン酸比※4の低下ならびに、TCAサイクルの低下を反映するコハク酸が低下していました。また、ケトン体(アセト酢酸や3-ヒドロキシ酪酸)ならびにアミノ酸代謝に関連する物質が上昇していました。これらの結果から、通常とは異なり、糖を利用したエネルギー産生が十分に働かない状況で、脂質やアミノ酸を代替エネルギー源として積極的に利用する代償的なエネルギーシフトが生じていることが示唆されました。さらに、ボディマス指数(BMI)が低い(=やせた状態の)患者ほど、ケトン体の増加が顕著であり、糖代謝の低下と脂質代謝の亢進という代謝異常がより強く認められました。この結果は、体重減少が進むにつれて、体脂肪の消費が加速し、糖から脂質への代償的なエネルギー利用シフトがさらに強まることを示しています。
以上の解析結果から、パーキンソン病の患者で起こる体重減少の背景に、糖代謝の停滞と脂質およびアミノ酸代謝の亢進が同時に生じる特徴的なエネルギー代謝異常が存在することが示され、パーキンソン病に関連した代謝変化が体重減少に寄与している可能性が考えられます。

[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2299/123687/600_341_20251128154748692945940a4ff.jpg

今後の展開
本研究で明らかになった代謝の偏りは、パーキンソン病における早期の代謝異常を捉える指標となる可能性があります。今後は、これらの代謝変化が血液だけではなく、脳においても起こっていることを検証する必要があります。また、エネルギー代謝を是正する食事療法が、体重減少の抑制や患者の健康維持に役立つ可能性があります。さらに、今回解明した代謝経路を標的とする治療や介入の開発につながることも期待されます。


用語解説
※1 生体電気インピーダンス法
微弱な電流を体内に流し、電気抵抗の差から体脂肪量、筋肉量などを推定する体組成測定法。

※2 ケトン体
脂質が分解されてできるエネルギー源。代表的なものはアセト酢酸と3-ヒドロキシ酪酸。

※3 クエン酸回路(TCAサイクル)
ミトコンドリア内で進行するエネルギー生成の要となる代謝回路。コハク酸をはじめとする複数の中間体を経ながら最終的にエネルギー(ATP)産生につながる。

※4 乳酸/ピルビン酸比
体内で糖がどの程度うまくエネルギーに変換されているかを示す指標。糖代謝が滞ったり、細胞の酸化還元バランスが崩れたりすると、この比が変化する。


文献情報
●論文タイトル
Metabolic Profiles Associated with Fat Loss in Parkinson’s Disease

●著者
東篤宏1,2、水谷泰彰1、大嶽れい子1、前田康博3、吉本潤一郎4、島さゆり1、清野祐介5、植田晃広1、伊藤瑞規1、鈴木敦詞5、渡辺宏久1

●所属
1. 藤田医科大学医学部 脳神経内科学
2. 神戸大学大学院医学研究科・内科学講座 脳神経内科学分野
3. 藤田医科大学 研究推進本部 オープンファシリティセンター
4. 藤田医科大学医学部 医用データ科学
5.藤田医科大学医学部 内分泌・代謝・糖尿病内科学

●DOI
10.1136/jnnp-2025-336929




本件に関するお問合わせ先
学校法人 藤田学園 広報部 TEL:0562-93-2868 e-mail:koho-pr@fujita-hu.ac.jp

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