地方公共団体等による“軸まちづくり”を応援!「都市・まちづくりと連携し基幹的交通軸を成す魅力あるバス輸送システムの計画ガイドライン」を刊行
国土交通省 国土技術政策総合研究所

国土交通省 国土技術政策総合研究所(以下 国総研)では、都市におけるバス輸送システム(BRT※等)の計画手法に関する6年間(2019~2024年度)の調査・研究の成果をふまえ、地方公共団体の実務担当者等に向けたガイドライン(国総研資料)をとりまとめました。本日(2025年6月30日)より公開します。
都市・まちづくりと連携し基幹的交通軸を成す魅力あるバス輸送システムの計画ガイドライン
- 公共交通ネットワークとウォーカブルが融和した骨格軸の形成へ -
・国総研 都市施設研究室HP
URL:
https://www.nilim.go.jp/lab/jcg/pdf/brt.pdf
都市の骨格軸にあるバス輸送システムについて、少子高齢化社会においても多くの人々の移動需要を支える高質な基幹的公共交通軸へ機能を高めていくためには、地域全体の社会資源と捉え、都市生活者の目線に立って都市・まちづくりと連携させて取り組むことが重要です。
本ガイドラインでは、将来的なバスの可能性として、都市・まちづくりと連携することでバス輸送システムの導入効果を一層発揮するための計画の進め方や工夫、留意点等を、国内外62都市(国内39都市、海外10カ国23都市)の先進事例を交え紹介します。
現場の実務において都市交通計画策定の中心的役割を担う自治体担当者をはじめ、交通事業者や住民等の関係者が連携・協働して計画づくりを行う際の、基本的ガイドとしてご活用ください。
■バス輸送システムに着目
コンパクト・プラス・ネットワークにより密度の経済性を発揮した持続可能な都市構造の実現を図る上で、都市の基幹的交通軸が形成され高密度な移動を支えるよう機能していることは重要です。例えば、軸となる街路空間を、自動車中心の構成から、公共交通や歩行者中心のマルチモーダルなストリートへ転換していくと、時間あたりの空間的な許容人数が向上し、多くの人々の移動を支えると共に多様な活動の機会も提供することが可能となります。また、基幹的交通軸には、乗り換えの交通拠点や支線・端末モビリティ等と連携し円滑なネットワークを形成していることも求められます。
基幹的交通軸を形成する公共交通のひとつに、BRT※等のバス輸送システムがありますが、LRTや地下鉄等と比較し、初期投資が抑えられる、計画から運行開始まで短期間で施策が実現できる、路線再編や延伸・変更が柔軟に行える等の特長があります。路面を走行することから、移ろいゆく景色を楽しめ、まちのシンボルとして街路空間の魅力を向上させることができます。人中心のウォーカブルな歩行者空間づくりやパーソナルモビリティへの乗り換え、沿道土地利用、都市機能及び居住の集約・誘導とも親和性が高く、目的地となる活動先へのアクセシビリティを提供し、一体的に賑わいを創出するなど、まちづくりの取り組みと相乗効果を発揮します。このように、利用者のライフスタイルに寄り添った都市交通の実現が期待できます。
※BRT(Bus Rapid Transit、バス高速輸送システム)は、走行空間、車両、運行管理等での様々な工夫により、速達性、定時性、輸送力について、従来のバスよりも高度な性能を発揮します。本ガイドラインでは、海外にみられるようなBRTとしての高いサービス水準に限らず、都市・地域にとって相対的に高度なシステムの導入を目指す場合も参考にしていただけることから、バス輸送システムという表現を用いています。
画像1:
https://www.atpress.ne.jp/releases/439928/LL_img_439928_1.png
ガイドライン表紙と本編イメージ
■ガイドラインの構成
1章から6章で構成されます。
<1章>
都市・まちづくりと連携した魅力ある基幹的バス輸送システムの姿
導入として、都市における公共交通を取り巻く現状や役割、公共交通の中でのバス輸送システムの位置付けを解説します。次に、コンパクト・プラス・ネットワークの中で都市軸を考える重要性、基幹的交通軸形成の意義、総合政策や都市交通に関する明確なビジョンや目標を掲げる必要性について紹介します。また、都市・まちづくりと連携したバス輸送システムの可能性と、導入フロー(構想~検討・協議~実施計画~運用)を紹介します。そして、基幹的交通軸が目指すべき姿「reliable+enjoyable+walkable+accessible」を提示し、“先進的”なバス輸送システムによる魅力づくりの視点について紹介します。
<2章>
導入計画と各種上位計画策定の枠組み
バス輸送システムの導入計画にあたって、中長期での施策の実現性の向上や、部分的に事業を行う場合の都市全体に対する意義の説明性向上のため、都市交通に関する各上位計画(市町村(都市計画)マスタープラン、立地適正化計画、都市・地域総合交通戦略、地域公共交通計画)への位置付けと各計画の関係性、策定の進め方、留意点を紹介します。特に、計画検討のための現状把握と現状診断を利用者にとってのサービスクオリティの考え方から紹介するとともに、各計画期間の違いとPDCAサイクルの導入、官民の多岐にわたる関係者とその役割をふまえた協議体の必要性、行政の積極的な関与の重要性、まちづくりと合わせた戦略的展開について紹介します。
<3章>
都市全体の公共交通ネットワークと基幹的交通軸
都市内公共交通ネットワークパターンの中での市街化状況や土地利用をふまえた基幹的交通軸設定のバリエーション、基幹的交通軸の立地適正化計画への測地的かつ具体的な位置付け、軸周辺への都市・居住機能誘導、トランジットモール化等の道路空間再編、再開発等の複合施設及び広場等のパブリックスペースと連携した交通拠点の整備や、沿道の官民空間一体のウォーカブルなまちづくり、駐車場施策や荷捌きとの関係等について、取り組み事例とともに紹介します。
<4章>
基幹的バス輸送システムの計画と構成要素
基幹的なバス輸送システムの計画として、地域の都市特性や実情にあったサービスレベルを柔軟に設定することが有効です。また、国内では既成市街地が対象地になることが多いため、中長期の理想的な目標を据えつつも、段階的にサービスレベルを高めていく発想も重要です。そこで、バス輸送システムの構成要素となる(A)走行環境(B)車両(C)停留所(D)運行情報システム(E)運賃収受の各要素技術、そして各要素間を総合的に勘案した(F)トータルデザインに関するそれぞれのサービスレベルの工夫について、都市空間との関係にも触れつつ、様々なレベル感の導入事例を交えて紹介します。そして、導入難易度や効果、関係者への影響、時間軸等の観点から留意すべき点を解説します。
<5章>
基幹的バス輸送システムの計画時のポイント
1~4章で紹介した導入・検討プロセス全体について、実務の際に十分に考慮できるよう、主要な確認事項を一覧化し、チェックリストにまとめています。
<6章>
基幹的バス輸送システムの導入の進め方
課題となりがちな様々な関係主体との合意形成の進め方の要点を、課題への対応例として先進自治体の“生の声“から紹介するとともに、公設民営とする場合の考え方、国の支援制度や参考文献を紹介します。
■組織概要
商号 : 国土交通省 国土技術政策総合研究所
代表者: 所長 福田 敬大
所在地: 〒305-0804 茨城県つくば市旭1番地
URL :
https://www.nilim.go.jp/
【本件に関する一般の方からのお問い合わせ先】
国土技術政策総合研究所 都市研究部
都市施設研究室 主任研究官 小笠原 裕光(内線4515)
TEL : 029-864-2211(代表)
E-mail:
ogasawara-h92ta@mlit.go.jp
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