加工した昆布の摂取により健康長寿に関わる胆汁酸の産生を促進できることを確認
フジッコ株式会社

―日本食物繊維学会第30回学術集会で発表―
フジッコ株式会社(本社:神戸市中央区/代表取締役社長執行役員:福井正一)は、若年者を含む健常者(20~63歳)を対象とした臨床試験を実施し、加工した昆布を摂取することで、腸内細菌により産生される健康長寿に関わる胆汁酸が増加することを明らかにしました。この研究成果は、日本食物繊維学会第30回学術集会(会期:2025年10月18日(土)~19日(日))において発表しました。佃煮や塩昆布など昆布の加工食品に含まれる低分子化した食物繊維の摂取により健康な腸内環境の維持に寄与できる可能性があります。
■研究背景・概要
- 日本では急速な高齢化に伴い100歳以上の百寿者と呼ばれる長寿者の割合が増加している。- 百寿者は加齢に伴う疾患や感染症にかかりにくいことが報告されているが、長寿の秘訣を探る国内の最新研究において、腸内細菌により産生されるイソアロリトコール酸と呼ばれる胆汁酸(※1)の割合が多いことが明らかになっている。- イソアロリトコール酸は病原菌に対して強い抗菌作用をもつだけでなく、免疫の暴走を止める制御性T細胞(※2)の分化にも関わることから、健康長寿に関わる腸内有用物質として注目されている。- 昆布は食物繊維を豊富に含む食品素材であり、古来より縁起物として食されている。- 加熱処理により昆布の食物繊維の性質が変化することが知られており、佃煮や塩昆布などの加工食品では食物繊維が低分子化し、水溶性食物繊維の割合が増加する。
今回、加熱処理により佃煮や塩昆布に含まれる食物繊維と同程度に低分子化した昆布粉末を用いてイソアロリトコール酸産生者に摂取してもらい、イソアロリトコール酸の産生や腸内細菌叢への影響を調べた。
(※1)胆汁酸:肝臓から合成される分泌物として脂質やコレステロールの吸収を助ける役割を持つ。大部分は小腸から再吸収され、門脈を介して肝臓に送り届けられる(腸肝循環)が、一部が大腸に流れ込み、大腸に生息する腸内細菌により代謝されて高い殺菌活性を有する二次胆汁酸に変換されることが報告されている。
(※2)制御性T細胞:免疫システムの安全装置(ブレーキ役)のような役割を果たし、免疫細胞が自身の体を攻撃するのを防ぐ役割を担う。2025年、制御性T細胞を発見した坂口志文・大阪大学栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を受賞。
■研究結果
若年者を含む健常者からイソアロリトコール酸産生者を選抜し、加熱昆布粉末を2 週間摂取してもら
いました。その結果、便中のイソアロリトコール酸の変化量が増加し、イソアロリトコール酸産生菌と
して知られるOdoribacter 属細菌の変化量が有意傾向で増加していました(図1)。
[画像1:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/99964/24/99964-24-922b7788d5963dcb44c54c1673a25780-1209x624.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
さらに、昆布の食物繊維の一つであるアルギン酸を分解することが報告されているBacteroides 属細菌の変化量も有意に増加しました(図2)。
[画像2:
https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/99964/24/99964-24-d495737e06032d30113eda050d82a109-1535x663.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
これらの結果から、加工した昆布の摂取により、アルギン酸分解菌と共にイソアロリトコール酸産生菌が増加することでイソアロリトコール酸の産生を促進することが示唆されました。今回、加工した昆布の継続的な摂取により若年者のイソアロリトコール酸の産生を促進することから、百寿者だけでなく、年齢の低い若年者においても健康な腸内環境の維持に寄与できる可能性があることが分かりました。フジッコでは、今後も昆布の加工食品の腸内環境への影響を含めた、皆様の健康に寄与できるよう研究を進めてまいります。
【引用文献】
(1) 百歳の高齢者へのお祝い状及び記念品の贈呈について 厚生労働省 (2025)
(2) Sato et al., Nature, 599, 458-464 (2021)
(3) Hirata et al., Nat Commun, 11, 3820 (2020)
(4) Sebastiani et al., Aging, 5, 653-661 (2013)
(5) Wu, L. et al., mSystems, 4, e00325-19 (2019)
(6) Tojo et al., Food Science and Technology Research, 29 (4), 331-337 (2023)
■発表の情報
学会:日本食物繊維学会第30回学術集会(
https://luminacoids.jp/index2.html)
会期:2025年10月18日、19日
場所:広島大学・広仁会館(霞キャンパス)
演題番号:2-9
演題名:加熱加工昆布粉末の摂取が日本人のイソアロリトコール酸産生に及ぼす影響
発表者: *渡辺 真通、後藤 弥生、丸山健太郎(フジッコ・イノベーションセンター)
<お問い合わせ先> フジッコ株式会社
担当者:イノベーションセンター 基盤研究グループ 渡辺 真通
責任者:イノベーションセンター センター長 丸山 健太郎
TEL:078-303-5385
ホームページアドレス:
https://www.fujicco.co.jpプレスリリース提供:PR TIMES

記事提供:PRTimes