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指定難病「ハンナ型間質性膀胱炎」の病変部で新しい特徴的な細胞集団を発見

東京慈恵会医科大学

指定難病「ハンナ型間質性膀胱炎」の病変部で新utf-8

~病変部での細胞間の強いシグナル伝達を確認~

東京慈恵会医科大学泌尿器科学講座の占部文彦講師、吉原健太郎大学院生、木村高弘教授、古田昭教授らの研究グループは、指定難病であるハンナ型間質性膀胱炎の膀胱組織を細胞レベルで解析し、病変部に特徴的な新しい線維芽細胞(NRG_Fib)を発見しました。さらに、この細胞が膀胱の表面を覆う細胞と通常とは異なる強い相互作用を示すことを明らかにし、病気の発症や慢性的な炎症に関わる可能性を示しました。
この研究の成果は、2026年7月9日付でCell Pressが刊行する国際学術誌iScienceに掲載されました。

1.本研究のポイント

ハンナ型間質性膀胱炎の病変部に特徴的な新しい線維芽細胞NRG_Fibを発見しました
線維芽細胞NRG_Fibはハンナ病変に特徴的なNRG1/WNT5Aを高発現していました
線維芽細胞NRG Fibが膀胱上皮細胞に強いシグナル伝達をしていることを見出しました
ハンナ病変と正常膀胱組織の約8万の細胞を解析し、発症や病態進展への関与を調査、解明しました


2.研究の背景
間質性膀胱炎/膀胱痛症候群は、慢性的な膀胱痛、頻尿、尿意切迫感などを特徴とする難治性疾患です。その中でも泌尿器疾患で唯一の指定難病であるハンナ型間質性膀胱炎は重症型とされ、ハンナ病変と呼ばれる膀胱粘膜の剥離や間質の高度な慢性炎症を認めます。しかしながら、ハンナ型間質性膀胱炎の発症や病態進展に関与する細胞や分子機構については十分に解明されておらず、有効な治療標的も限られています。
本学では、これまでに古田昭教授を中心に、ハンナ型間質性膀胱炎に苦しむ多くの患者さんを診療するとともに、診断マーカーや病態解明を目指した研究を展開してきました。近年、一細胞レベルで遺伝子発現を解析することができるシングルセルRNAシークエンス技術の発展により、疾患組織を構成する細胞の多様性や細胞間相互作用を詳細に解析することが可能となりました。そこで本研究では、間質性膀胱炎患者のハンナ病変、非ハンナ病変および非膀胱炎患者の正常膀胱組織を比較解析することで、ハンナ型間質性膀胱炎に特徴的な細胞群および細胞間ネットワークの解明を目指しました。

3.研究の内容・成果
研究グループは、ハンナ病変6検体、非ハンナ病変3検体、正常膀胱組織4検体を対象にシングルセルRNAシークエンス解析を実施し、膀胱微小環境を構成する細胞群を網羅的に解析しました(図1)。解析の結果、免疫細胞、上皮細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞など20種類以上の細胞集団を同定しました。


[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2670/139122/400_182_202607131451586a547cfeb34a0.jpg

図1ハンナ病変、非ハンナ病変および正常膀胱組織を対象にシングルセルRNAシークエンス解析を実施

さらに線維芽細胞を詳細に解析したところ、ハンナ病変に特徴的な線維芽細胞集団(NRG_Fib)を発見しました(図2)。この細胞集団はNRG1およびWNT5Aを高発現しており、正常膀胱ではほとんど認められませんでした。


[画像2]https://digitalpr.jp/simg/2670/139122/250_192_202607131451586a547cfea1435.jpg
[画像3]https://digitalpr.jp/simg/2670/139122/300_113_202607131451586a547cfe9d50c.jpg

図2 ハンナ病変に特徴的なNRG_Fibの発見


また、細胞間相互作用解析により、NRG_Fibが膀胱上皮の基底細胞(Basal_cell)に対して強いシグナル伝達を行っていることが明らかとなりました。特にNRGシグナル経路およびWNTシグナル経路の活性化が認められ、慢性炎症や上皮障害に関与している可能性が示唆されました(図3)。


[画像4]https://digitalpr.jp/simg/2670/139122/250_222_202607131451586a547cfe9d009.jpg
[画像5]https://digitalpr.jp/simg/2670/139122/250_228_202607131451586a547cfe99618.jpg

図3 NRG_FibからBasal cellへNRG signalingを介した強いシグナル伝達の存在

さらに免疫染色による検証では、NRG1およびWNT5Aを発現する線維芽細胞が実際にハンナ病変内に存在することが確認されました(図4)。加えて、免疫細胞や上皮細胞の解析から、ハンナ型間質性膀胱炎では膀胱全体にわたり慢性炎症が生じていることも明らかとなり、HICが局所病変ではなく膀胱全体の炎症性疾患(pancystitis)であることも改めて確認することができました。


[画像6]https://digitalpr.jp/simg/2670/139122/400_143_202607131451586a547cfea288f.jpg

図4 免疫染色による、ハンナ病変に存在するNRG_Fibの確認

4.今後の展開
本研究により、ハンナ型間質性膀胱炎に特徴的な新規線維芽細胞集団と、その細胞間ネットワークが初めて明らかとなりました。
今後は、NRG_Fibがどのように慢性炎症や組織障害を誘導しているのかを解明するとともに、NRG1やWNT5Aを標的とした新規治療法の開発につなげることを目指します。また、多施設共同研究による症例集積や外部コホートでの検証を進め、今回の知見の再現性および臨床的有用性を評価する予定です。


5.論文情報
タイトル:Single Cell Transcriptomics Reveals Bladder Microenvironment Dynamics in Hunner Type Interstitial Cystitis
著者名:占部 文彦*#, 吉原 健太郎#, 中山 淳, 平野 悠太, 渡邉 直昭, 鈴木 公基, 梅森宮加, 伊藤景紀, 五十嵐 太郎, 佐藤 峻, 木村 高弘, 古田 昭, 山本 雄介*(*責任著者)(#共同筆頭著者)
掲載誌:iScience
DOI:https://doi.org/10.1016/j.isci.2026.116725

6. 研究資金
本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業(JSPS科研費、課題番号:24K12448)、公益財団法人武田科学振興財団、グラクソ・スミスクライン株式会社、公益財団法人かなえ医薬振興財団、日本新薬株式会社、および公益財団法人上原記念生命科学財団からの研究助成を受けて実施されました。

<用語説明>
※1 ハンナ型間質性膀胱炎
間質性膀胱炎/膀胱痛症候群のうち、ハンナ病変と呼ばれる特徴的な炎症性病変を伴う病型。泌尿器科疾患で唯一の指定難病(指定難病226)。

※2 シングルセルRNAシークエンス
個々の細胞ごとに遺伝子発現を解析することで、組織を構成する細胞の種類や状態を詳細に評価できる解析技術。

※3 線維芽細胞
組織の構造維持や修復を担う細胞。近年では慢性炎症や癌など様々な疾患への関与が注目されている。

※4 NRG1およびWNT5A
細胞間の情報伝達を担うシグナル分子であり、細胞増殖、分化、炎症応答などに関与する。


本件に関するお問合わせ先
学校法人慈恵大学 広報課 
メール:koho@jikei.ac.jp
電話:03-5400-1280

関連リンク
慈恵大学 プレスリリース一覧
https://www.jikei.ac.jp/press/

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