【中部大学】住血吸虫媒介貝のゲノム編集に世界で初めて成功ー住血吸虫症克服への新たな道を拓くー
中部大学
中部大学先端研究センターの黒田玲子卓越教授と大沼耕平博士研究員(研究当時、現島根大学学術研究院農生命科学系助教)、内田孝幸特任講師、米ニューメキシコ大学生物学部のSi-Ming Zhang 研究准教授は、ヒトや齧歯類に寄生するマンソン住血吸虫の中間宿主貝であるBiomphalaria glabrata のゲノム編集に挑戦し、世界で初めてCRISPR/Cas9 による遺伝子破壊(ノックアウト)技術を確立した。これにより、これまで直接の実証が不可能であった感染感受性と耐性に関わる遺伝子の機能を解明し、同巻貝における免疫機構を分子レベルで詳細に解析できるようになった。
1. 研究成果の概要
中部大学先端研究センターの黒田玲子卓越教授と大沼耕平博士研究員(研究当時、現島根大学学術研究院農生命科学系助教)、内田孝幸特任講師、米ニューメキシコ大学生物学部のSi-Ming Zhang 研究准教授は、ヒトや齧歯類に寄生するマンソン住血吸虫の中間宿主貝であるBiomphalaria glabrata のゲノム編集に挑戦し、世界で初めてCRISPR/Cas9 による遺伝子破壊(ノックアウト)技術を確立した。これにより、これまで直接の実証が不可能であった感染感受性と耐性に関わる遺伝子の機能を解明し、同巻貝における免疫機構を分子レベルで詳細に解析できるようになった。研究成果は、米国東部時間2025年10月8日14時(日本時間9日3時)付で米国科学振興協会(AAAS)が発行する科学誌Science Advances に掲載された。
血管内に寄生する住血吸虫が引き起こす住血吸虫症は、下痢や血便などを引き起こし、特定の臓器にガンを誘発することもある。アフリカ、中東、南米、東南アジアなど世界の広い地域で発生し、世界保健機関(WHO)の推定では世界中で2 億人以上が罹患し、死亡は毎年2 万人にのぼる。日本でもかつて甲府盆地や筑後川流域等で猛威を振るった歴史がある。現在、新たな感染例は報告されていないものの、流行地との往来の増加に伴う輸入感染症として対策が必要とされている。特効薬は親虫にしか効かず、再感染を防げないうえに、薬剤耐性が生じてきている。
住血吸虫は淡水に生息する種特異的な巻貝を中間宿主としてその中で変態し、貝の外に泳出した幼生がヒトに経皮感染する。そこで、巻貝を駆除するのではなく、巻貝内での住血吸虫の生活環を止める疾患制御法に期待が集まっている。しかし、巻貝における感染や免疫応答の仕組みは十分に解明されていない。特に、遺伝子を操作する技術(新しい遺伝子を
入れたり、働きを止めたりする方法)が開発されていないために、寄生虫感染に関わる遺伝子の役割を分子レベルで直接検証することはこれまで困難であった。
中部大における今回の研究成果は、媒介貝に介入してヒトへの感染を阻止することで、住血吸虫症克服への新しい道を拓き、医学・公衆衛生への応用が期待される。
2. 論文の情報
雑誌名: Science Advances
論文タイトル:Teaser: Creation of the germline-edited vector snails is a key advance in efforts to combat schistosomiasis
著者:Kouhei Oonuma1, Reiko Kuroda1*, Takayuki Uchida, Si-Ming Zhang*
1: equal contributor, *: corresponding author
DOI: 10.1126/sciadv.adx5889
URL:
https://doi.org/10.1126/sciadv.adx5889
3. お問い合わせ先
(研究内容に関すること)
黒田玲子 (中部大学 先端研究センター 卓越教授)
電子メール rkuroda@fsc.chubu.ac.jp
▼本件に関する問い合わせ先
中部大学 入試・広報センター(広報課)
TEL:0568-51-7638
メール:chubu-info@fsc.chubu.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/
記事提供:Digital PR Platform