【中部大学】染色体修復研究の国際的手順書に中部大の手法が選ばれる─ がん研究、生殖医療、進化メカニズム解明に新たな道を開くことに期待 ─
中部大学
染色体が壊れて別の順序でつなぎ直される現象は、がんの進行や生まれつきの病気、さらには生物の進化にも関わる重要な仕組みです。このたび国際的な学術出版社 Springer Natureから、生命科学分野で広く使われている実験手法ブックシリーズ「Methods in Molecular Biology」の最新巻として、この現象を研究するための手順書 『Chromoanagenesis: Methods and Protocols』 が刊行されました。そこに収録された37 本の手順(プロトコール)の中の1つに、中部大学 実験動物教育研究センターの岩田悟講師と同大学大学院 生命健康科学研究科 生命医科学専攻の岩本隆司教授が開発したDNA(デオキシリボ核酸)の修復に関与するRecql5 遺伝子を欠損したマウスを用いる手法が選ばれました。
1.概要
染色体が壊れて別の順序でつなぎ直される現象は、がんの進行や生まれつきの病気、さら
には生物の進化にも関わる重要な仕組みです。このたび国際的な学術出版社 Springer Nature
から、生命科学分野で広く使われている実験手法ブックシリーズ「Methods in Molecular
Biology」の最新巻として、この現象を研究するための手順書 『Chromoanagenesis: Methods
and Protocols』 が刊行されました。そこに収録された37 本の手順(プロトコール)の中の
1つに、中部大学 実験動物教育研究センターの岩田悟講師と同大学大学院 生命健康科学
研究科 生命医科学専攻の岩本隆司教授が開発したDNA(デオキシリボ核酸)の修復に関与
するRecql5 遺伝子を欠損したマウスを用いる手法が選ばれました。
2.内容
染色体はDNA とタンパク質が折りたたまれた構造体で、DNA の中に「生命の設計図」で
ある遺伝情報が書き込まれています。通常、遺伝情報は安定して受け継がれますが、時には
一度に壊れて順序が入れ替わることがあります。こうした「染色体の並び替え」は、腫瘍細
胞でしばしば観察され、がんの発生や薬剤耐性の獲得、生まれつきの遺伝病や不妊・流産の
一因になることが知られています。さらに短い時間で生物が大きく変化する進化のプロセ
スにも関与している可能性があり、生命科学のさまざまな分野で注目されてきました。
このたび刊行された書籍は、こうした染色体の大規模な並び替えを研究するための世界
初の包括的な実験のプロトコール集です。Methods in Molecular Biology シリーズは1983 年
の創刊以来、世界中の研究者が標準的な手順を共有するために利用してきた実験手法集で
あり、分子生物学や遺伝学、発生学など幅広い分野で最も信頼される参考書籍の1 つです。
本書(第2968 巻)には、37 本の最新実験手法が収録され、世界中の研究者が同じ基準でデ
ータを比較し、再現性の高い研究を行えるよう設計されています。
その中に、中部大学が開発したRecql5 遺伝子を欠損させたマウスを使う手法が選ばれま
した。Recql5 はDNA の修復に関わる遺伝子で、これを欠損させたマウスでは染色体の並び
替えが起きやすくなります。このモデルを使うことで、染色体がどのように壊れ、再び組み
直されるのかを生体レベルで追跡できるようになり、がん研究、生殖医療、進化のメカニズ
ム解明に新たな道を開きます。
このRecql5 欠損マウスは、理化学研究所バイオリソース研究センターが毎月優れた系統
を取り上げる「今月のマウス」(2025 年4 月号)でも紹介されました。世界的なマウスリソ
ース拠点に認められたことで、国内外の研究者が利用しやすくなり、今後の研究の加速が期
待されています。
本書を通じて、日本発の研究リソースが国際的な科学コミュニティに共有されることで、
染色体の大規模な並び替え現象の理解が加速し、新しい診断法や治療法、そして生命の進化
を理解する新たな視点が生まれることが期待されます。
本研究は日本学術振興会(JSPS)の科学研究費助成事業 (23K21287)、日本私立学校振
興・共済事業団の学術研究振興資金による助成を受けて行われました。
3.出版情報
書名:Chromoanagenesis: Methods and Protocols(Franck Pellestor 編)
シリーズ:Methods in Molecular Biology Vol.2968
出版社:Springer Nature
出版日:2025年8月31日
DOI: 10.1007/978-1-0716-4750-9
URL:
https://doi.org/10.1007/978-1-0716-4750-9
収録章:Iwata, S., Iwamoto, T. (2025). Recql5-Deficient Mice as a Model for Studying
Chromoanagenesis Phenomena. In: Pellestor, F. (ed) Chromoanagenesis: Methods and Protocols.
Methods in Molecular Biology, vol 2968. Springer Nature.
URL:
https://doi.org/10.1007/978-1-0716-4750-9_34
関連リソース:理研BRC「今月のマウス」2025 年4 月号
https://mus.brc.riken.jp/ja/mouse_of_month/apr_2025_mm
5.お問い合わせ先
(研究内容について)
岩田悟 (中部大学 実験動物教育研究センター 講師)
E メール:satoru_iwata@fsc.chubu.ac.jp
▼本件に関する問い合わせ先
中部大学 入試・広報センター(広報課)
TEL:0568-51-7638
メール:chubu-info@fsc.chubu.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/
記事提供:Digital PR Platform