2024年08月11日
岸田文雄総理が7日開かれた「自民党憲法改正実現本部」全体会合で「憲法9条」への自衛隊明記へ論点整理を今月末を目指し議論するように指示した。
自身の総裁選を優位にと改憲推進派・タカ派層の支持を得たいがゆえの発言と見えるが、総裁選の道具に使うな、と言いたい。
日本共産党議長の志位和夫氏は「9条改憲を突然言い出した首相。自衛隊を憲法に明記すれば、『あるものを書くだけ』ではすまない。9条の制約が完全になくなり、海外での武力行使が無制限になる。こんな重大な問題を、自らの延命に使うとは。どこまで見下げ果てた態度か」と厳しく断罪した。
岸田総理は全体会合で「来年は結党70年。大きな節目に向け、長年の懸案である党是の改憲について議論をお願いする」とも呼びかけた。国家最高法規の改正を党70周年に結び付け、党のために実現させるとはおろか、としか言いようがない。そのような暴挙はあってはならない。改憲議論は思惑や感情論を排し、党派を超え、静かな環境で議論していくもの。
岸田総理の発想は国民全体の視点を忘れた不謹慎発言としか言えない。党内の総裁選で9条をテーマにするのは自由だが、それぞれの候補者が熱くならず、「結党70周年を迎えるから」などの感情を抜きに、論理的に自身の考えを示されることを望みたい。
さらに岸田総理には総裁選での公約と総理になっての公約に齟齬や乖離が出ないように願う。総裁選では「国民」に目線があっていたようだが、総理になったとたん「財界・株主・経団連」に目線を合わせた政策に大変換した。
前回の総裁選では「所得倍増計画」をうたい、「格差是正」をうたい、「金融所得への課税見直し」など、庶民受けの項目を並べ立てた。総理に就くなり「所得倍増計画」は「金融資産倍増計画」にすり替わり、金融所得課税見直しは「先送り」し、代わりに出たのが2000兆円の個人の金融資産の半分を株式市場など投資に回るよう、経団連が喜ぶ政策を次々打ち出した。これが岸田政権の実態。
安倍政権下で進んだ年金などの株式市場への拡大投入が加速化し、東証株価は安倍政権発足当初2万円を切っていたが、みるみる上昇し、岸田政権では3万円台後半から4万円台までになった。
大手企業経営陣は労働生産性向上であがった収益を自らのポスト保身に株主への配当増と内部留保、さらに自社株買いに回し、株価をさらに上げて配当で還元するサイクルをつくった。
日本では自社株買いに規制がない。その結果、空前の利益をあげても社員への還元率は低く、給料アップは物価上場分に及ばない状況だ。収益性をあげるために非正規社員比率が増え、業務委託でカバーすることで自社雇用を増やさない策をとるケースも目立つ。
岸田政権で進んだのはロシアのウクライナ侵略を利用した「ウクライナで起こったことは東アジアでも起こりうる」との脅しセリフで日本を取り巻く安全保障環境の変化を訴え、5年間で43兆円の国費を投入する防衛装備品等の拡充、国内防衛産業の育成。
GX(グリーン・トランスフォーメーション)・DX(デジタル・トランスフォーメーション)部門への補助金・助成金の形の民間企業への税金投入。一方で中小零細個人事業主を狙ったインボイスでの税収確保、医療保険関係での負担増。訪問介護報酬の4月からの削減で小さな訪問介護事業所が次々、倒産・閉鎖に追い込まれ、訪問介護事業所が「ゼロ」の自治体が全国に97も生まれる事態になっている。
岸田政権は社会的弱者と思われる層へ相当な負担増を強いている。不祥事があれば当該議員が自民を離党、不祥事案件の真相は有耶無耶にされ続けている。「説明責任」を果たすなどという岸田総理の発言は絵空事。こうした政治はおそらく自公政権では変わらないだろう。
裏金問題を含め政治の浄化と庶民目線の国政実現には、やはり自公政権から「山を動かす」選挙をするほかにないだろう。立憲民主党が山を動かすリーダーに誰を据えるのか、そこに注目したい。(編集担当:森高龍二)
記事提供:EconomicNews
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