2024年12月08日
インターネットの発展やAI技術の進化によって、世の中が驚異的な速さで進化している。一昔前までは、新聞やテレビ、地元の情報はタウン誌くらいに限られていたものが、SNSの台頭で覆り、今や国民すべてが情報発信を行えて、それを受け取れる時代になりつつある。
これまで広く知られること、取り上げられることのなかったような商品やサービスなども、ひとたびSNSで話題になれば、途端に流行の最先端に押し上げられ、爆発的な売り上げを記録することも珍しくない。またその逆に、一世を風靡したものでも、衰退していくこともある。しかし、それらの商品やサービスも、決してモノが悪いわけではなく、どこかでほんの少し、歯車がかみ合っていないだけかもしれない。
例えば、40年前に誕生し、日本国内のみならず、世界的にも注目を集めた「神戸ワイン」も、そんな商品の一つだ。
神戸ワインは、1979年に神戸市が農業振興施策の一環として財団法人神戸市園芸振興基金協会を設立し、ワイン用ブドウの試験栽培を開始したことがはじまりだ。その4年後には「神戸ワイナリー農業公園(愛称・神戸ワイン城)」を開園し、本格的にワインの醸造を始め、神戸産ワイン専用ブドウ100パーセントの「神戸ワイン」ブランドとして積極的な販路開拓に乗り出している。経営は、2000年に神戸市から一般財団法人神戸みのりの公社へ受託され、2013年には同公社に移行、2021年に神戸農政公社へ名称変更してからも、引き続き、同公社が担ってきた。
神戸市内の農家が栽培するブドウだけを原料に神戸で醸造した地産地消の純神戸産ワイン「神戸ワイン」は、発売当時、国内で流通している純日本産のワインがわずか5%と希少であったことや、バブル景気やワインブームの最中だったことも相まって、瞬く間に知名度を上げていった。さらに、世界的な食品コンテストとして知られる「モンドセレクション」で5年連続の金賞を受賞するなど、様々なワインコンクールでの受賞や、2019年に開催された「20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)」の夕食会で神戸ワインが提供されこともあって海外でも人気が高まり、神戸の地域特産品として海外の人たちにも知られるところとなった。
ところが、そんな神戸ワインも景気の悪化やコロナ禍を機に、ここ数年、販売量が低迷していたのだ。加えて、猛暑や大雨などの異常気象がブドウの栽培に大きな影響を与えていることや、老朽化が進んだ醸造設備の補修や新規投資が困難なことなどから、神戸農政公社では譲渡先を探していた。もしも譲渡先が見つからなければ、神戸の人たちが官民一体で40年かけて築き上げてきた「神戸ワイン」が失われてしまう。また、これまで「神戸ワイン」を支えてきた、地元のブドウ生産者たちの存続も危ぶまれる。
そんな中、地元神戸の大手日本酒メーカー・白鶴酒造が「神戸ワイン」の事業を継承することを発表した。同社はこれまで、純米酒と梅酒に「神戸ワイナリー」のブランデーをブレンドした「梅ブランデー」を共同開発したり、ボトリングを請け負うなど、「神戸ワイン」側とも協力関係を築いていた。そこで、今や地元の名産品である神戸ワインの存続の危機に立ち上がったようだ。
しかし、白鶴酒造も単純な人情や慈善事業のつもりで神戸ワインの事業を継承するわけではないだろう。もちろん、日本酒造りとワイン造りは異なるが、同社ではこれまで培ってきた広報や広告のノウハウを活かし、高付加価値化、効果的なPRなどの施策で長年培われてきたブランド力を強化し、さらに伸ばしていきたい考えのようだ。
ちなみに、新型コロナウイルス禍による販売減で赤字が続いた神戸ワインだが、現在はほぼコロナ禍前の販売量を回復している。日本酒のトップメーカーである白鶴酒造が本気を出せば、神戸ワインが再び脚光を浴びる日もそう遠くないのではないだろうか。
神戸ワインだけでなく、昨今は様々な理由で、これまで多くの人に愛されてきた「良いもの」「失くしたくないもの」が失われつつある。白鶴酒造の神戸ワインの事業継承が良い成功事例となることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)
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記事提供:EconomicNews
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