2025年07月13日
政府は東京電力福島第一原発事故により広範に放射能汚染された地域の表土を削り、その「汚染土」を『除染土』と呼び、公共工事などでの再利用を自治体に呼び掛けている。
その量「東京ドーム11杯分」。「除染土」にも「セシウム137」が含まれているが、その半減期は30年と影響が長期化する。政府は安全で再利用できる土という「安全性を担保する」科学的根拠を、わかりやすく国民に説明すべきだろう。少なくとも2041年までは政府が集約管理すべきではないか。
大阪府立大学名誉教授(応用物理学)の溝川悠介氏は「奈良民報」に連載した『Q&A 原発ゼロへ!』の中で、政府が策定した汚染土壌の再生利用に関する基準について「この再生利用方針は本来、厳重に集中管理すべき放射性物質を含む汚染土を公共工事などで利用することを可能にするもので、放射性物質を環境中に拡散する危険なもの」と警鐘を鳴らしている。
特に注視すべきは溝川氏の説明では「一般の放射性廃棄物の処理基準(放射線の影響が無視できるとされる基準)」は『100Bq/kg』がクリアランスレベルとして設定されているのに、今回の省令改正では、基準値を大幅に緩和し『8000Bq/kg』以下を『再資源化』し公共事業などで利用できるとしている」こと。
「クリアランスレベルを80倍も緩めて放射能汚染土を環境にばら撒くものです。復興再生に名を借りたクリアランスレベルの二重基準などあってはならないことです」と強く問題を提起している。
環境省は「長期的観点から放射性物質を含む食品からの被ばく線量の上限を『年間1mSv(ミリシーベルト)』とし、これを元に設定した新たな基準値(規制値)では食品中の1キログラムあたりに含まれる放射能濃度(放射能を出す能力)は一般食品では100Bq/kg、規制値を超えるものは出荷制限等がかかり、市場に流通できません)」と説明。
環境省は「廃棄物処理法に基づき、同法の基準に従って、既存の処分場で、市町村や民間の廃棄物処理業者が処理を行うが、(一部、特定一般廃棄物、特定産業廃棄物として処理しなければならないものがあります)8000Bq/kg以下の廃棄物は通常の処理方法でも処理等に伴い作業員及び周辺住民が追加的に受ける線量が安全基準である『年間で1mSv(ミリシーベルト)』を下回るため安全に処分することができる。環境大臣から放射線審議会にも諮問を行い『妥当である』旨の答申を得ている」と説明する。
しかし、この8000Bq/kg以下の汚染土(除染土)が全国各地の自治体の公共事業で道路や公園などに利用され、汚染土を覆う通常の土がそこに施されたとしても、集中豪雨や頻発する地震などで道路陥没、擁壁崩落などが起きれば、汚染土はむき出しとなり、セシウム137を含む土壌から30年の半減期まで放射能は放出される。
国際原子力機関(IAEA)「国際チェルノブイリフォーラム報告書(2006年)では「1986年に起こったチェルノブイリ原子力発電所事故の影響調査では事故後14年経過しても、事故により降ったセシウム137の約80%が表面から10cm内の所にとどまっていることも分かっている」としている。
汚染土再利用への国民の不安や懸念は再利用に反対している学者や専門家らを入れた第3者機関で再検討し、2041年までに結論を得るようにすべきではないか。法律で2045年3月までに汚染土を福島県外に搬出し、最終処分することが決まっているが、どうすることが安全を担保したものになるのか、ぎりぎりまで議論を尽くすべきだろう。
奈良県内56団体が6月19日、知事あてに汚染土を巡って受け入れをしないよう求めた。「そもそも人体に悪影響を与える放射性物質は集中管理し、環境中に拡散させないことが原則」と訴え「今回の再利用では埋めてある汚染土を掘り返し、トラックに積載し、運搬、工事現場で投入する。その作業の全ての段階で、チリほこりと一緒に放射性物質が拡散し、環境を汚し、作業者が被ばくします(省令では作業者の安全、保護がうたわれていません) 又、汚染土の利用場所や用途の制限が行われていません」と強い懸念を示している。
加えて「軟弱地盤の場所や地滑り地など、飛散流出のリスクが高い場所でも検討を行うとされており、利用制限がされていないため、将来的な土砂崩れ、災害等での放射性物質の拡散の危険性があります。放射性廃棄物に対する安全基準のダブルスタンダードや復興再生利用には法的根拠がないことなど、問題が山積みのまま、放射性汚染土の再利用、拡散を推し進めることは到底許されるものではなく、未来の世代にツケを残す」とも指摘している。
住民団体によると、県側は住民の理解なく判断しないと応じたという。政府は国民が納得できる説明と将来に禍根を残す事のない対応策を模索し続けなければならない。公共事業で汚染土の量を減らす逃げはすべきでない。(編集担当:森高龍二)
記事提供:EconomicNews
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