【日本大学】卵の殻は捨てずに医薬品へ~世界で初めて卵殻からワクチンの働きを補助する物質を作製しました~
日本大学
日本大学松戸歯学部感染免疫学講座の泉福教授,瀧澤専任講師らの研究グループは,卵殻から合成される低硫酸卵殻アパタイト(骨や歯に含まれるリン酸カルシウムの一種)という成分が,ワクチンの効果を高める“ワクチン補助剤”として有効活用できることを世界で初めて明らかにしました。本研究成果を報告した論文は,2025年10月15日にオンラインジャーナルであるScientific Reports誌に掲載されました。
低硫酸卵殻アパタイトについて
粘膜ワクチンの補助剤として開発された低硫酸卵殻アパタイト(特許7682480)について
・世界中でも補助剤の開発数が少ない中で,新たに開発された補助剤であること。
・本来は廃棄される卵殻から精製されるため,環境にやさしいこと。
・毒性の高い硫酸の濃度が低く,安全性の高いワクチン補助剤であること。
研究内容
細菌は,細菌同士で周囲の環境について情報共有し,コミュニケーションをとることなどを目的に membrane vesicle(MV)と呼ばれる膜に包まれた小さな袋のようなものを放出します。本研究では,虫歯の病原菌である Streptococcus mutans が放出するMVを低硫酸卵殻アパタイトに吸着させたものをマウスに粘膜接種し,接種後のマウスの唾液から抗体の産生状況を観察しました。
観察の結果,MV 単独の接種と低硫酸卵殻アパタイトを補助剤として接種した場合を比較すると,補助剤を使用した方が,唾液中に抗体であるIgA が多く産生されることが分かりました。また,Streptococcus mutans が産生するグルコシルトランスフェラーゼがショ糖から歯垢を合成すること阻害していることも分かりました。
今回の研究で登場した低硫酸卵殻アパタイトは,虫歯に対するワクチンのみならず,様々な病原体のワクチンの補助剤として有用であり,COVID-19のような全身感染症に対しても有用であると考えらます。
論 文
・掲載誌 :Scientific Reports
・タイトル:Nasal immunization with Streptococcus mutans membrane vesicles and eggshell-derived hydroxyapatites elicits enhanced antigen-specific mucosal IgA responses.
・掲載先 :
https://doi.org/10.1038/s41598-025-19334-7
・著 者:Tomomi Hashizume-Takizawa, Hidenobu Senpuku, 他
研究助成
本研究は,株式会社バイオアパタイトとの受託研究費により行われました。
問い合わせ先
泉福 英信(せんぷく ひでのぶ)
日本大学松戸歯学部 感染免疫学
所在地:〒271-8587千葉県松戸市栄町西2-870-1
TEL: 047-360-9336 FAX: 047-364-6295
E-mail: senpuku.hidenobu@nihon-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/
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