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未来を大きく変える次世代移動通信システム6G。実用化の鍵は「テラヘルツ波」

2024年11月03日

テラヘルツ波はこれまで、技術的な課題やコストの...

携帯電話やスマートフォンの普及とともに、進化し続けてきた移動通信システム。2020年頃から導入され始めた、最新の第5世代移動通信システム(5G)も、22年3月末時点ですでに人口カバー率が90%を超え、24年以降に発売されたスマートフォンは5G対応製品が100%となっている。5Gの採用で動画データなども高速で送受信できるようになったが、通信関連業界ではさらにその次を担う第6世代(6G)、更には第7世代の実用化に向けての動きが活発化してきた。

 6Gが採用され始めるのは2030年頃からと見込まれているが、5Gと比べてどこが優れているのだろうか。まず、5Gよりもさらに高速化や大容量化、低遅延といったメリットが挙げられているが、実はそれ以上に期待されていることが多い。

 例えば、通信エリアも陸上を100%カバーできるほか、高度1万メートルの上空、海上も200海里と国内をほぼ網羅でき、宇宙を含めた3Dな展開が想定されている。また、消費電力の低減やレベルの高いセキュリティ、1平方キロメートルあたり1000万デバイスを超える圧倒的な同時多数接続が可能になるなど、その可能性は5Gをはるかに凌駕している。さらにVRやMRなどの仮想現実空間を使ったサイバー空間とリアルな社会との融合、遠隔医療の進展、自動車や産業機器なども、6G通信の採用による飛躍的な発展が期待されている。

 そして、そんな6G通信の鍵となりそうなのが「テラヘルツ波」だ。無線通信の高速化には周波数帯域の拡大が最も効果的といわれている。6G、さらにはその先の7G通信では、95G~3THzの周波数帯「テラヘルツ波」、90G~300GHzの「サブテラヘルツ波」と呼ばれる高い周波数帯域の活用が検討されている。テラヘルツ波やサブテラヘルツ波を利用することで、5Gのミリ波に比較して10倍以上広い帯域幅を利用できると考えられており、それに比例して通信速度も10倍以上速くなると見込まれているのだ。

 テラヘルツ波はこれまで、技術的な課題やコストの問題などが障壁となり、発振器や検出器の開発が停滞していた。テラヘルツ波は、光と電波のちょうど中間領域の電磁波だが、光として計測するにはエネルギーが低く、電波として計測するには周波数が高すぎるので既存の技術では扱いにくいのだ。また、現状で開発に用いられているテラヘルツ波の発振器や検出器はサイズも大きく、実用的とは言えないものが多い。

 ところが、そんなテラヘルツ波を一気に実用レベルにまで引き上げる技術が登場した。それが、日本の電子部品メーカー大手のローム株式会社が保有する「共鳴トンネルダイオード」だ。同社は、従来の一般的なテラヘルツ発振器・検出器と比較して約1000分の1という超小型で、超低消費電力なテラヘルツ発振器・検出器を開発し、実用化に向けて動き出している。

 また同社は、各大学の研究機関などとも積極的に連携して研究開発を進めている。例えば8月5日には、国立大学法人東京農工大学大学院の鈴木健仁准教授(工学研究院)、遠藤孝太氏(研究当時、修士課程在籍)、春石誉人氏(研究当時、学士課程在籍)、浦島康平氏(研究当時、修士課程在籍)、山森駿司氏(研究当時、修士課程在籍)らの研究グループが、ロームの「共鳴トンネルダイオード」と、自然界には存在しない電磁的性質(誘電率、透磁率)を実現できるスーパー材料「メタサーフェス」を融合することで、鋭い指向性を持つ円偏波を発生させることに成功したと発表。6G通信はもちろん、センサ機器やイメージングなどでの産業展開が大きく期待され、注目を集めている。

 6G通信の実現は、単に高速通信というだけでなく、さまざまな分野で新技術の基盤となり、社会を大きく変える力を秘めている。持続的な社会の実現にも欠かせないものだ。そのキーデバイスとなるテラヘルツ波デバイスの開発には、アメリカをはじめ、他の先進各国の動きも活発になってきた。未開拓といわれるテラヘルツ波の最初の開拓者となり、6G社会で日本がイニシアチブを取れるよう、日本のエンジニアたちの底力に期待したい。(編集担当:藤原伊織)

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