2024年12月15日
昨今、住宅のみならず、非住宅・中高層建築物にも、建物の構造部分に木材を使う「木造化」、壁・床などの内外装に木材を用いる「木質化」の動きが活発化している。
国も2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」制定以降、農林水産省及び国土交通省を中心に公共建築物における木材の利用を推進し、令和3年には法律の題名を「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に変更して、法の対象を公共建築物から建築物一般に拡大。農林水産省の特別機関として木材利用促進本部を設置するなど、建築の木造化・木質化に積極的に取り組んでいる。
法律の題名にもあるように、国が木材利用を推進する主な目的は、国内森林資源の循環利用やカーボンニュートラルの実現、SDGsやESG投資への対応だ。温室効果ガスの削減はもちろん、木造化、木質化によって木材需要を喚起することで、森林資源の循環を促し、健全な森林育成と持続可能な森林経営にもつながる。日本では一般的な住宅の約8割が木造住宅といわれているが、非住宅及び中高層建築の木造率はまだまだ低い。それだけに今後の木材利用の余地が大きいと期待されているのだ。
しかし、そもそも日本は木造建築とともに歩んできた国だ。日本の伝統的木造建築の歴史は縄文時代から始まっていると伝えられており、その後、世界最古の木造建築である法隆寺をはじめ、東大寺など、現存する歴史的な木造建築も数多く存在している。法隆寺の五重塔の高さはおよそ32メートル。東大寺大仏殿は、およそ50メートル四方の大きさで高さ約46.1メートルの巨大木造建築物だ。木造建築は耐久性などを心配されることが多いが、法隆寺で1400年以上、東大寺は途中焼失して再建されたとはいえ、430年以上も前に建造されたもの。日本の伝統的な木造建築技法がいかに優れているかがうかがえる。
もちろん、現代の木造建築技術も負けてはいない。
例えば、竹中工務店が2020年2月に東京都江東区に竣工した、地上12階建ての木造ビル「FLATS WOODS 木場」がある。鉄筋で補強した燃エンウッド梁をはじめ、屋外で使用できる燃エンウッド柱、耐震改修に適用できるCLTエストンブロックを意匠的に活用した壁など、同社が開発した最先端技術を駆使した次世代のコーポレートレジデンスで、現在、複数の企業の社宅として活用されている。
また、2024年3月には、株式会社AQ Groupが日本初、純木造8階建ての本社ビルを完成させている。同社は「コンクリートジャングルを森に変える」というスローガンのもと、日本の伝統的な木造建築技術を現代の技術と融合。特殊な材料や技術を使わず一般流通材を使用することで「木造のビルはコストが高くつく」という概念を覆す、普及型の中大規模木造建築を推進しており、この本社ビルはそのプロトタイプに位置付けている。免振装置を使わない耐震工法や、構造体を木のあらわしで使用している面積割合、6,000㎡超えの純木造で17ヵ月という工期の短縮を実現し、その結果、これまでの木造ビル建設費の1/2の費用(坪単価約145万円)という圧倒的なコストダウンも実現している。今年10月には、一般社団法人日本ウッドデザイン協会主催の「ウッドデザイン賞2024」「木材利用推進コンクール 国土交通大臣賞」も受賞しており、第三者機関から高く評価されたことで、今後の進展が大いに期待できそうだ。
世界的にも今、都市の木造化・木質化が進んでいる。古来より木造建築とともに文化と文明を築いてきた日本が、その最先端であり続けたいものだ。(編集担当:藤原伊織)
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記事提供:EconomicNews
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