2025年02月23日
我々の暮らしは今、電力なしでは成り立たない。アメリカ合衆国エネルギー省管轄の半独立機関であるEIA(U.S. Energy Information Administration)が今年1月に発表した調査報告によると、2023年の世界の電力消費量は1位が中国(8,911.85TWh)2位は米国(4,084.58TWh)、3位インド(1,500.38TWh)となっており、日本もロシアに次いで5位にランクインしている。また、平均成長率は年間約2.7%で成長を続けており、自動車の電動化や産業の自動化、IT化を背景に今後も電力消費量は世界的に拡大すると思われる。中でも、電力消費量の大半を占めるといわれる電源やモーターの効率改善は、脱炭素社会の実現においても喫緊の課題だ。
そんな電力効率改善のカギを握るのが、高電圧や大電流を制御・変換するために使用されるパワーダイオードやパワートランジスタ、IGBTやMOSFETなどの電子部品「パワーデバイス」だ。パワーデバイスは、インバータやコンバータ、周波数変換、レギュレータなどの電力変換器をはじめ、自動車、鉄道車両、産業機器、太陽光発電設備などの電力制御、家電製品の電源回路など、およそありとあらゆる機器に搭載されている。
このパワー半導体を作る際の基板材料は従来、Si(シリコン)が用いられてきたが、各種電源のさらなる高効率化や小型化のニーズに対応すべく、SiC(シリコンカーバイド:炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などの新材料の活用が加速している。平成時代は「次世代半導体材料」などといわれていたが、時代は変わり、社会に定着しつつある。
SiCとGaNについては、その特性を活かして棲み分けて採用されているのが現状だ。
高耐圧で信頼性の高いデバイスを比較的低コストで製造できるなどの利点があるSiCデバイスは、GaNデバイスに先行して普及し、EVや太陽光発電など、高耐圧領域で活用されている。一方、GaNデバイスは数十~650Vの中耐圧領域での普及が急速に進んでいる。低損失かつ小型化に適したGaNは、スマートフォン用充電器やパソコン用ACアダプタなどをはじめ、データセンターのサーバー用電源や車載分野での応用も進んでおり、今後の拡大が期待されている。
GaNデバイス普及に向けての環境も加速しており、半導体ファウンドリ最大手のTaiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(以下、TSMC社)がGaNデバイスの製造受託ビジネスを強化するなど、業界の動きが活発化する中、日本の半導体メーカーも積極的な動きを見せている。
例えば、ローム株式会社は2024年12月にTSMC社と車載GaNパワーデバイスの開発と量産に関する戦略的パートナーシップを締結したことを発表しているが、1月30日に発表した650V耐圧GaN HEMTのTOLL(TO-LeadLess)パッケージ品の新製品「GNP2070TD-Z」の量産においても、前工程はTSMC社で生産し、後工程はATX SEMICONDUCTOR (WEIHAI) CO., LTD.(以下、ATX社)に委託することを発表し、協業を通して業界内でのつながりを強固にする動きを見せている。
もちろん、性能に関しても業界トップクラスだ。同社のTOLLパッケージは小型、高放熱でありながら、電流容量やスイッチング特性にも優れていることから、産業機器や車載機器の中でも、大電力対応が求められるアプリケーションにおいて採用が進んでいる。新製品はこのTOLLパッケージに第2世代のGaN on Siチップを搭載。オン抵抗と入力容量の相関を示すデバイス性能指標(RDS(ON)×Qoss)において、業界トップクラスの数値を実現している。電源システムに要求される小型化と省エネ化に貢献する、高耐圧と高速スイッチングで需要を伸ばしそうだ。
同じ新材料でもSiCに比べると、現状では一歩出遅れている感のあるGaNだが、ローム社とTSMC社、ATX社のような業界間の連携が上手く進めば、爆発的な普及と市場の定着が見込めるだろう。今後のGaNパワーデバイス市場での日本企業の活躍に期待したい。(編集担当:藤原伊織)
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記事提供:EconomicNews
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