2025年11月16日
PV(太陽光発電)インバータやUPS(無停電電源装置)、半導体リレー、AIサーバー(eFuse)、EV充電ステーションなど、アプリケーションの進化と普及に伴って、あらゆる分野で高効率化・高電圧化のニーズが急速に高まっている。例えばPVインバータでは、より効率よく発電・送電するために、現在主流となっている2レベルインバータから、高電圧に対応可能な3レベルNPCや5レベルANPCといったマルチレベルインバータ回路への移行が進む。そのスイッチング部には、Si(シリコン)ベースのIGBTやMOSFETが使われることもあるが、より高効率で電力密度の高いSiC(炭化ケイ素)MOSFETの適正が高い。そしてさらなる高効率化・電力密度向上・設計簡略化のために、モジュールの進化が求められている。
マルチレベルインバータ回路では、ハーフブリッジやコモンソースなど、異なるトポロジー(回路構成)のスイッチング部分が混在する。従来の汎用SiCモジュールでは単純に置き換えることができないため、カスタム品を開発する必要があり、設計の柔軟性や開発コストが課題となっていた。
この課題に対し、日本の半導体メーカーのローム株式会社が今年9月、ハーフブリッジとコモンソースの2種類のトポロジーを共通パッケージとした2in1 SiCモジュール「DOT-247」を発表し、早くも話題となっている。新製品は、パワーデバイスで広く普及している既存パッケージ「TO-247」のパッケージをベースとすることで、次世代の電力変換回路にも対応できる高い設計自由度を確保しつつ、独自の内部構造とパッケージを最適化。これにより、従来のディスクリート部品(単体の半導体)を使用したハーフブリッジ構成と比較して、2倍以上の電力密度を達成。つまり同等の電力変換回路をなんと約半分の体積で実現可能なため、回路の大幅な小型化に貢献する。この高い電力密度とマルチレベル回路への柔軟な対応力は、PVインバータをはじめ、前述のUPSや半導体リレー、充電ステーション等の産業機器、FCV(燃料電池車)など、幅広いアプリケーションにおける高効率化、小型化に大きく貢献することが期待できそうだ。
ロームは、この画期的なSiCモジュール「DOT-247」をリリースしたのち、同じくパワー半導体大手である独インフィニオンと、SiCパワーデバイスのパッケージに関する協業を発表している。協業の一環として、ロームはインフィニオンのSiC向けトップサイド冷却プラットフォームを採用し、インフィニオンはロームのSiCモジュール「DOT-247」を採用して互換性のあるパッケージを開発するという。両社が協業することで、一層幅広いソリューションと調達の選択肢をユーザーへ提供していく狙いだ。
ロームはモジュールだけではなく、ディスクリートパッケージのラインアップも怒涛の勢いで拡充している。同じく9月に量産を開始したSiC MOSFETのTOLL(TO-LeadLess)パッケージ品「SCT40xxDLL」は、耐圧・オン抵抗が同等の従来パッケージ品(TO-263-7L)と比べて放熱性を約39%向上しており、厚さわずか2.3mmと小型・低背でありながら大電力対応を可能にしている。こちらも高電力密度化が進むサーバー向け電源やESS(電力貯蔵システム)、低背化が求められる薄型電源などの産業機器に最適だという。
これまで主に使われてきたSi製デバイスに比べて、高速スイッチングと低損失という優れた特性を持つSiCパワーデバイスは、今や電力変換効率の向上に不可欠な存在になっている。フランスの市場調査会社Yole Groupが今年6月に発表したSiCパワーデバイス市場の最新予測によると、同市場は2024年から2030年まで年平均成長率(CAGR)20%で成長し、2030年には103億米ドル規模まで拡大すると見込んでいる。今後も、高まる需要を背景に、技術開発と製品ラインアップの拡充による競争がさらに激化していくことは間違いないだろう。
そんな中、ロームをはじめとする日本の電子部品各社が、市場のニーズに応じたカスタム性の高いモジュールの開発に注力しており、日本製品への関心が高まっている。今回の「2in1 SiCモジュール」のような汎用性と応用力を兼ね備えた製品の登場は、次世代電力変換装置の普及を加速させる重要な一歩になるとともに、これからの市場において、日本社製の電子部品の存在感を一層高めてくれるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)
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記事提供:EconomicNews
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