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なぜ「普通」が詰むのか。給料日の後に残る、静かな焦燥感の正体

2026年02月28日

実は「働いても貧しい」現実。歴史的な円安が削っ...

今回のニュースのポイント

・名目賃金の上昇分を、輸入物価高による支出増が相殺している点が実感の正体です。

・厚生労働省「毎月勤労統計」(2025年通年)によると、名目賃金は2%台の伸びを維持する一方、実質賃金は4年連続のマイナスとなる見通しです。

・個人の努力不足ではなく、マクロ経済の構造が普通の難易度を上げていることが伺えます。

 週末の夜、スマートフォンの家計簿アプリや通帳の数字を眺め、ふと小さな溜息を漏らす。そんな光景が、今の日本で静かに広がっています。給料は上がったはずなのに、なぜか手元に残る感覚が薄い。この違和感は、個人の節約不足や努力不足といった言葉では片付けられない、日本経済の構造的な変質を浮き彫りにしています。私たちは今、かつての普通を維持するために、近年よりも高いハードルを飛び越え続けなければならない時代に立たされています。

 背景にあるのは、1ドルが150円台という歴史的な水準にある為替相場の定着と、それに伴うインポートインフレ、つまり輸入物価高です。かつての円安は、輸出企業の業績を押し上げ、それが巡り巡って国内に還元されるというシナリオが共有されていました。しかし現在、その果実は大企業の株価や内部留保に留まり、私たちの生活圏にはガソリン代や電気代、あるいは食品価格というコストの増大として、よりダイレクトに押し寄せています。

 厚生労働省「毎月勤労統計」(2025年通年)の結果を紐解けば、その歪みが鮮明に浮かび上がります。名目賃金は前年比2%台の伸びを維持する一方、物価変動の影響を除いた実質賃金は4年連続のマイナスとなりました。数字の上では10万円のものが11万円になったとき、給料が5,000円増えても、私たちの生活実感を支える余裕は差し引き5,000円分のマイナスになる計算です。

 さらに厄介なのは、数字に表れにくい生活の質の維持コストです。かつては数千円で済んでいた週末の家族の食事が、今やパスタやパンといった輸入小麦に頼る食品の値上がりにより、1.5倍近い出費を強いられることも珍しくありません。スマートフォンの通信費やサブスクリプションサービスの料金、あるいは子供の教育費に至るまで、私たちが普通に社会生活を営むために必要なインフラコストが、円安局面を経て構造的に一段階引き上げられています。

 このコストの地滑りのような現象こそが、給料日の後に残る言いようのない焦燥感の正体です。こうした現状を前に、日本経済は詰んでいると断じるのは容易です。しかし、冷静に構造を見つめれば、起きているのはゲームのルールの変更であることが分かります。かつてのデフレ下では、現金を「持っているだけ」で価値が守られました。だが現在は、インフレという荒波が、静かに、しかし確実に現金の価値を削り取っています。

 この変化は残酷ですが、一方で企業側が人件費を価格に転嫁し、賃上げを継続しなければ生き残れないという正しい競争の呼び水にもなっています。週末の夜、月曜日からの仕事に向けて私たちが考えるべきは、自身の能力不足を嘆くことではありません。変わってしまった一万円の距離感を認め、新しい経済の潮流の中で、自分なりの防衛策と攻め方を再定義することにあります。判断の材料は揃っています。あとは、この違和感をどう自身の行動に繋げるかです。(編集担当:エコノミックニュース編集部)

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記事提供:EconomicNews

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