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データセンターは「陸から海へ」。商船三井が挑む、中古船を活用した海上インフラの新機軸

2026年04月05日

商船三井と日立、浮体式DC開発で合意。AI時代の土...

今回のニュースのポイント

中古船を「浮かぶデータセンター」へ転換:自動車運搬船などの中古船を改造して船体内をDCとして活用します。改造工事は1年程度と見込まれ、従来の陸上建屋型に比べ開発期間を最大で3年短縮できるとしています。

AI需要が直面する「土地・電力・冷却」の壁を打破:膨大な熱を発するAIサーバに対し、海水や河川水を取り込んだ熱交換システムによる高効率な水冷方式を採用。陸上での用地確保や水資源利用に伴う制約の回避を図ります。

海運からデジタルインフラ企業への進化:900隻超の船隊を運航する商船三井の海上運用能力と、日立グループのITインフラ構築技術を融合。2027年以降に日本や米国、マレーシアでの商用化に向けた検証を進めます。

生成AIの急速な普及に伴い、世界中でデータセンター需要が大きく拡大しています。しかし、従来の陸上データセンターは、大規模な用地確保の難航や膨大な電力消費による送電網への負荷、さらには冷却用水を巡る環境規制といった深刻な制約に直面しています。大都市圏では新規建設の一時停止が議論される地域も現れるなど、現在の延長線上にある陸上主体のインフラ整備だけでは需要を支えきれない段階に近づいていると考えられます。

 こうした課題に対し、商船三井、日立製作所、日立システムズの3社は2026年3月、中古船を改造した「浮体式データセンター(FDC)」の開発・運用・商用化に向けた基本合意を締結しました。この構想では、商船三井が船舶の改造や海上運用のノウハウを提供し、日立グループはデータセンターの設計・建設・運用やITインフラ要件の定義、顧客開拓などを担い、将来のAIワークロードにも対応可能な基盤づくりを目指します。3社は日本、マレーシア、米国などを候補地として、2027年以降の稼働開始を見据えた事業化検証を推進していく計画です。

 浮体式データセンターが注目される主な理由は、物理的な「場所の制約」からの解放にあります。AI向けサーバは極めて高い熱を発しますが、商船三井と日立は、海水や河川水を取り込んだ熱交換システムを用いることで、サーバ冷却に要する電力と運用コストを抑えられると説明しています。また、高騰する都市部の土地取得が不要なだけでなく、移動可能な浮体式であるため需要に応じて稼働場所を移せる柔軟性を備えています。さらに、公式発表によれば、改造工事は1年程度で完了し、従来の陸上建屋型に比べ開発期間を最大で3年短縮できる点は、強みの一つとされています。

 世界ではすでにテック大手が海中データセンターの研究を進めてきましたが、今回の特徴は、連結保有船や長期用船などを含め900隻超の船隊を運航する商船三井が主導する点にあります。中古の自動車運搬船という既存アセットを再活用するアプローチは、環境負荷を抑えつつ初期投資を抑制する、海運会社ならではの戦略とみられます。これは海運業が単なる「物の運送」を超え、デジタル社会を支えるインフラ企業へと役割の拡張が進みつつある動きといえます。

 このインフラの変容は、私たちのデジタル生活を支える形となります。立地次第では、都市近郊の港湾エリアにFDCを配置することで、ユーザー拠点に近い場所で計算処理を行い、低遅延かつ安定したサービス提供につなげる構想も描かれています。また、海水冷却や既存船の再利用によって陸上の電力や水資源への圧力を軽減することは、地域社会との共生を図る上でも有効な手段となります。私たちが手にするデバイスの裏側で、データの処理場所が陸から海へと広がりつつある実態がうかがえます。

 今後は、2027年以降の商用化に向けた港湾当局との協議や、災害リスクへの対応設計が焦点となります。将来的には、洋上風力や発電船などの再生可能エネルギー源と浮体式データセンターを直結させ、エネルギー供給とデータ処理を海上で完結させるモデルへの展開も期待されます。インフラの形は、もはや堅牢な建屋だけではなく、海に浮かぶ柔軟な拠点へと多様化していくと考えられ、AI時代の新しいインフラ地図が変化しつつあります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)

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