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同じ会社名はなぜ存在するのか 送金ミスを生む制度の盲点

2026年05月06日

「有名企業の関連会社だと思っていたら、全くの別...

今回のニュースのポイント

プライム上場企業と全く同じ商号を持つ企業が全国に3,323社も存在します。商業登記法では住所が異なれば同一商号の登記が可能であり、これが「名前」を唯一の識別子と信じる現場での誤送金や、巧妙な口座変更詐欺の引き金となっています。13桁の「法人番号」を活用し、名前だけでなく「番号で確認して信頼する」実務への転換が急務です。

本文

 「会社名は世界に一つだけのもの」――そう思われがちですが、少なくとも日本の登記制度の下では、同じ商号を持つ会社が多数並び得るのが現実です。東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースに基づく調査では、プライム上場企業約1,600社のうち、343社と一字一句違わぬ「同一商号」を持つ企業が、全国で3,323社も確認されました。これは例外的な事態ではなく、構造的に生じうるリスクです。

 なぜ、これほど多くの「同名別会社」が存在するのでしょうか。商業登記法では、すでに登記されている商号を「同じ住所」に登記することは認めていませんが、逆に言えば、住所さえ一致していなければ、有名企業とまったく同じ名前でも会社を設立できてしまいます。制度としては、新会社設立の自由度を確保するための合理的な仕組みですが、実務の現場では深刻なズレが生じています。

 最大の問題は、取引の現場において「会社名は唯一の識別子である」という先入観が根強いことです。銀行振込の際、金融機関名や口座番号に加え、受取人名(会社名)を確認しますが、同じ商号が複数存在する場合、システム上はエラーになりません。実際に、取引先名と同じ商号の別会社口座に誤って送金してしまい、資金の返還を巡ってトラブルになるリスクがあると、多くの実務担当者からも懸念が指摘されています。

 さらに深刻なのが、この「制度の隙間」を突いた詐欺との接点です。取引先を装って「振込先口座を変更した」と偽の通知を送る口座変更詐欺では、本物と同名、あるいは紛らわしい商号の会社名を使うことで、担当者の違和感を巧妙に払拭します。「名前で信頼する時代」から、悪意を持って名前が利用される時代へと、環境は激変しているのです。

 デジタル化が進み、非対面での取引が主流となった今、かつてのように「相手の顔を見て判断する」ことは難しくなりました。法務局は住所で区別できても、現場の人間は名前だけで判断してしまう――この断層が、現代のビジネスリスクの火種となっています。

 会社名は、登記制度の上では多くの会社が共有し得る「ブランド」であって、送金相手を一意に特定する「識別子」ではありません。そこで重要になるのが、国税庁が公表する13桁の「法人番号」です。これは商号や住所が重なっても法人を一意識別できる番号であり、この確認を実務に組み込むことが、これからの取引の基本動作となります。“名前で信頼する時代”から“確認して信頼する時代”へ。今、ビジネスの「信用の形」が再定義されています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)

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