2026年09月12日
今回のニュースのポイント
生成AIが文章や物語の制作にも使われるようになるなか、創作コンクールではAIをどこまで認め、何を「創作」として評価するのかについて異なるルールが設けられています。山田養蜂場は2026年8月25日から、第27回「ミツバチの絵本コンクール」ストーリー部門の募集を開始しました。同コンクールでは生成AIを使用した作品を応募対象外としていますが、その背景にあるのはAIそのものへの評価ではなく、自ら感じ、考え、想像をふくらませて物語を生み出す体験を重視するというコンクールの目的です。一方、生成AIの利用を認めながら制作過程の記録を求める賞や、部分利用について申告を求める賞もあります。AI時代の創作公募では、単に「AIを使えるか」だけでなく、主催者が何を創作として評価するのかが、これまで以上に問われるようになっています。
本文
文章の作成からアイデア出し、物語の構成まで、生成AIを創作活動に利用できる環境が広がっています。こうした変化は、作品を募集し、その創造性を評価するコンクールや文学賞にも新たな問いを投げかけています。
AIを使った作品を認めるのか。それとも人が自ら考えて生み出した作品に限定するのか。さらに、AIを認める場合には完成作品だけを見るのか、人間がAIとどのように関わったのかという制作過程まで評価するのか。現在の創作公募では、それぞれの目的に応じた異なるルールが並び始めています。
AI利用を認める例の一つが、第14回日経「星新一賞」です。一般部門ではプロ・アマを問わず、「人間以外(人工知能等)の応募作品も受け付けます」としています。
ただし、AIが生成した文章をそのまま応募できるというルールではありません。生成AIを利用した場合は、入力したプロンプトやAIが生成した原文、使用したツールなどの記録を保持することを求めています。また、AIが生成した文章には人間による加筆・修正を必要とし、その前後の文章を記録するとともに、応募時には利用したAIや制作過程について説明する仕組みを設けています。最終選考に残った作品については、事務局が記録を詳細に確認するとしています。
つまり、生成AIの利用を認めながらも、作品が完成するまでに人間がどのように関与したのかを確認するルールが設けられていることになります。
また、集英社の「小説すばる新人賞」では、AIを部分的に使用した場合について、プロット作成や文章表現の補助など、どの工程でどのようにAIを活用したのかを応募フォームの備考欄で説明するよう求めています。
生成AIを利用する創作を一律に排除するのではなく、その利用方法を明らかにした上で作品を受け付ける公募も出てきているわけです。
一方、AIを使用しないこと自体に、コンクールの目的と結び付いた意味を持たせている例もあります。
山田養蜂場が8月25日から募集を始めた第27回「ミツバチの絵本コンクール」ストーリー部門では、応募者自身が創作した未発表のオリジナル作品に限定し、「生成AIを使用した作品は応募不可」としています。
募集するのは、「ミツバチ」や「はちみつ」をテーマに、「自然環境の大切さ」「社会とのつながり」「生命の尊さ」を表現した、小学生向けの絵本のストーリーです。一般の部は中学生以上、子どもの部は小学生以下が対象となります。同社が重視しているのは、生成AIを使わないというルールだけではありません。
山田養蜂場は、生成AIによって文章や物語を手軽につくれるようになった現在だからこそ、「自ら感じ、考え、想像をふくらませて物語を生み出す体験」を大切にしていると説明しています。ミツバチをきっかけとして、自然や生命、人とのつながりについて感じ、考え、想像をふくらませてもらうことが、コンクールを開催する目的の一つになっています。
さらに、このコンクールは別の教育支援活動にも繋がる仕組みになっています。ストーリー部門の最優秀賞作品を課題として、その後にイラスト部門の作品を募集し、両部門の最優秀作品は最終的に1冊の絵本となり、山田養蜂場が取り組む「みつばち文庫」の1冊として全国の小学校へ届けられます。
ここまで見ると、生成AIを「使える」「使えない」という違いだけで、それぞれのコンクールを単純に比較することはできません。
AIを利用した制作を認めながら、人間がどのように関与したのかという制作過程まで確認する。AIを部分的に利用した場合に、その使い方を申告してもらう。そして、自分自身で感じ、考え、想像して物語をつくる体験そのものを重視し、AIを使用しない作品に限定する。それぞれが「何を評価する場なのか」によって、異なるルールを採用していると見ることができます。
生成AIが創作の選択肢に加わったことで、公募を主催する側にも、単に応募条件を定めるだけでなく、作品のどの部分に人間の創造性を求め、制作過程のどこまでを評価対象とするのかを明確にする必要が生じています。
人間だけでゼロから物語を考えることを評価するのか。AIを道具として利用しながら作品をつくる過程も含めて評価するのか。あるいは、その両者とは異なる基準を設けるのか。
生成AI時代の創作公募で問われ始めているのは、「AIを使うべきか、使わないべきか」という一つの答えではなく、そのコンクールがそもそも何を創作として競い、何を参加者に体験してほしいのかという、主催する側の評価軸なのかもしれません。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)
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記事提供:EconomicNews
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