2026年09月06日
今回のニュースのポイント
YCPホールディングスは2026年9月4日、日本の資本市場の構造変化を分析したホワイトペーパーを公表しました。同資料によると、2024年は日本の株式市場で上場廃止企業数が新規上場(IPO)企業数を上回り、2025年にはMBO(経営陣による買収)が過去最多の26件に達しました。東証の公表資料では2024年のIPOが130社と高水準であったことも確認でき、新規上場が活発に行われる一方で、上場廃止も増えており、企業にとって「上場し続ける意味」を問い直す動きが広がっているとYCPは分析しています。
本文
日本企業の間で、株式市場への上場を取りやめ、非公開化を選択する動きが顕著になっています。
コンサルティング大手のYCPホールディングスが2026年9月4日に公表したホワイトペーパーによると、2024年の日本の株式市場では、上場廃止となった企業数がIPO(新規上場)企業数を上回る逆転現象が生じました。
一方で、日本取引所グループ(JPX)の開示データによれば、2024年に東京証券取引所に新規上場した企業は130社に上り、直近10年間では2番目に高い水準となりました。地方に本社を置く企業が約4割を占め、初値時価総額が1000億円を超える大型IPOも6件含まれていました。新規上場が高水準だった一方で、少なくとも2024年は上場廃止企業数がそれを上回ったとYCPは整理しています。
■過去最多「26件」に達したMBO、選択肢となる非公開化
上場廃止の具体的手法として存在感を増しているのがMBOです。YCPの集計によると、2025年のMBO件数は26件に達し、過去最多を更新しました。
MBOは経営陣らが自社株を取得して経営権を握る取引で、株式公開買い付け(TOB)などを経て上場廃止に至るケースが多く見られます。YCPは、MBOなどによる非公開化が企業変革のための戦略的な選択肢として存在感を増しているとみています。
■東証改革・アクティビスト・PEファンドの3つの環境変化
YCPは、こうした資本市場の構造変化を促している主な要因として、①東証による市場改革、②アクティビスト(物言う株主)の台頭、③PE(プライベート・エクイティ)ファンドの成熟、の3点を挙げています。
東証は上場企業に対し、資本コストや株価を意識した経営を求めており、PBR(株価純資産倍率)1倍割れなど市場評価の低さも課題として意識されてきました。単に利益を出して上場を維持するだけでなく、資本をどれだけ効率的に活用し企業価値を高めているかが厳しく問われる環境になっています。
また、アクティビストの要求も従来の増配や自社株買いといった短期的な還元にとどまらず、事業ポートフォリオの見直しやガバナンス改革など経営の中核へ及んでいます。YCPが引いた調査によると、アクティビストによる株主提案の約7割が株主還元・資本政策とガバナンスに関するものでした。市場からのプレッシャーが高まる中、上場を維持するコストやリソースと、得られるメリットを天秤にかける企業が増加しています。
さらに、受け皿となるPEファンドの存在感も高まっています。ファンドは資金提供にとどまらず、経営人材の派遣や事業再編の知見を提供しており、「株式市場の評価に晒されながら改革を進める」のではなく、「いったん非公開化して中長期的な視点で事業改革に取り組む」というルートを提示しています。
■「企業数の減少=市場の衰退」とは限らない
上場企業の減少は、直ちに株式市場の縮小や衰退を意味するわけではありません。YCPの資料では海外事例として米国市場の推移が示されています。米国における上場企業数は1996年の8090社から2024年には4010社へとほぼ半減したものの、市場全体の時価総額は同期間に約7.3倍に拡大しました。
この事例は、上場企業数の増減と市場全体の時価総額が必ずしも同じ方向に動くとは限らないことを示しています。YCPはこうした変化を、資本効率やガバナンスを重視する「量から質への構造転換」と位置づけています。
かつて企業にとって株式上場は、成長や信頼性を証明するゴールの一つでした。現在も新規上場を目指す企業は絶えませんが、上場後も持続的な価値向上を求められる中で、「上場し続けることが自社にとって真に最適なのか」を問い直す局面を迎えています。
日本市場で進む上場廃止の増加が、企業価値や市場全体にどのような変化をもたらすのか。その評価には、単なる上場企業数の増減だけでなく、上場企業の企業価値向上や、非公開化を選んだ企業のその後の成長軌道を継続して見極めていく必要があります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)
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記事提供:EconomicNews
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